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【ロードスター】軽量FRパッケージ×マツダの執念が生んだ、世界を幸せにするオープンスポーツを再考する

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【ロードスター】軽量FRパッケージ×マツダの執念が生んだ、世界を幸せにするオープンスポーツを再考する

1989年に登場したマツダのスポーツカー、ロードスター。登場から35年以上を経た今もなお多くの人に支持されている。ライトウエイトスポーツカーのお手本であり続けている現行型に改めて試乗し、愛され続ける理由を探ってみた。(Motor Magazine 2025年4月号より。文:渡辺敏史/写真:永元秀和)

世界中で愛される爽快スポーツカー
思い起こせばあれは、ほんの4~5年前の話だ。世界中の都市の道端から道行く人が消え、街が死んだかのように静まり返った。コロナ禍によるロックダウンは1~2年は散発的に続いたはずだ。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

世界中で疫病が猛威をふるい死者の数が積み重なっていく。そんなのは教科書の中の話だろうと思っていたことが現実になった。これだけ医療が発達し、衛生観念が浸透していても起きることは起こる。人生なにが起こるかわからない。少なからぬ人々はそんな想いを抱いたのではないだろうか。

そんな中、不思議なニュースがアメリカから届く。マツダ ロードスターが売れまくっているというのだ。タイミング的には登場から軽く5年以上が経過、もはや欲しい人には行きわたったのではないか。そんなタイミングで販売に再ブーストが掛かったという。

ほどなくその現象は日本にも飛び火した。現行のND型ロードスターが自販連の登録車販売台数ランキングの50位内にしばしば顔を出し始めたのは2022年以降のことだ。そしてこの1~2年を見ても、ND型ロードスターは年間1万台弱と、モデルライフにおいて過去最高レベルの販売実績をマークしているという。

なぜそんな現象が起きたのだろう。表に出れば得体のしれない死への恐怖がうっすらと背中に張りつく特殊な状況の中で、人々は自分なりの幸せのあり方を模索したのではないだろうか。我慢することはないとタガが外れた一方で、社会や自然に対して慎ましく振る舞うことを是としたい気持ちもある。そういう方々が辿り着いたクルマにおける自分なりのハピネスがロードスターだったのではないかと思う。余談だが、スズキ ジムニーもまたそういうクルマだ。共通するキーワードといえば「本物」と「継続」ではないだろうか。

ロードスターは後輪駆動の軽便な2座オープンというイギリスが十八番としてきたコンセプトを再定義し、環境や安全などの規制に縛られて死滅したと思われていたニーズをNA型で再び掘り返した。2代目のNB型はそのメカニズムを継承、3代目のNC型は時のRX-8と車台を共有するなど、采配の難しい時代も続いたが、それでも初代の志はまったくブレることなく引き継がれている。

速さの追求よりも原点回帰を目指したND型ロードスター
4代目となるND型は専用設計の自由度が高まったことで、新たなアクションを起こすことができた。おそらくもっとも拘ったのは、初代に準ずるほどの圧倒的な小型&軽量化だ。当時の技術担当役員だった金井専務と、次世代商品の主旨について意見交換をさせてもらう機会があったのは2009年頃のことだったと思う。そこで昔気質のエンジニアだった氏は「次のロードスターやるんやったら800kg台目指さんかいって、現場に発破かけとりますわ」と笑っていた。

ちなみに当時、エアコンを装備するようになったロータス エリーゼの重量は900kgにほど近い800kg後半だ。各種要件を折り込みOEMクオリティを担保する廉価な世界商品として、その注文は無理筋にもほどがある。

この時はさすがにND型の形状的断片もなかっただろう、でもこの無茶振りでコンセプトワークにおいて先祖返りの意思は強く共有されたと推する。結果、ND型は各種衝突安全基準をクリアしながら全長比で初代よりも短く、最軽量グレードは990kgという、今から10年前と鑑みても破格のスペックで登場することになった。

マツダが彗眼だったのは、日本仕様を含む一部仕向けに、初代よりも小さい1.5Lユニットを搭載したことだ。これすなわち、170psをマークする2Lユニットを搭載した先代より、どう転んでも遅いことを意味している。新型が旧型より遅いという商品企画は、普通のメーカーでは逆立ちしても通らないだろう。「この子は馬力で走るのではなく馬脚、すなわちシャシの総合力で走るクルマだ」と、訴えた作り手も認めた上役も、ロードスターを作り続けてきたことによって成熟したスポーツカー観を共有していたからこそ、実現できたことなのだと思う。

と、一方でそんなロードスターにも、一部のカスタマーの要望を汲んで2Lエンジンを搭載するグレードが設定されるという話もある。日本では既にRFが2Lで販売されているし、現に米国では幌モデルも2Lのみの設定だからして、開発云々において難しいことはないだろう。

搭載する2LのPE-VPR型は当初は吹けにガサツさが目立ったが、中身を隅々まで見直した2018年の改編以降は、サウンドも含めて1.5Lにほど近い軽快さを得るに至っている。RFとの車重差を勘案すれば1100kgは間違いなく切ってくるだろうから、高いギアでもトルクでグイグイ押してスイスイと加速する、安楽・快適なキャラクターとなるはずだ。

ともあれ選択肢が増えるのはいいことなので、マツダにおかれてはアフォーダブルというロードスターの精神性を大事にしていただければと思う。ちなみにグレードによっては1.5Lと2Lが選べる欧州の場合、概ねその差額は3000ユーロ程度のようだ。

でも一方で、1.5Lモデルの価値が2Lの登場によって削がれることはない。どころか、むしろその尊さを再認識される機会になるのではないかとも思う。

アップデートが施されて前期型と何が変わったか
その1.5L版ロードスターは2023年末のマイナーチェンジでサイバーセキュリティなどの法規対応のために電子アーキテクチャーを一新、それに伴って一部グレードにはスマホ連携にも対応する8.8インチのセンターディスプレイが採用されたほか、いわゆるACCの搭載やスマートブレーキサポートの強化など、ADAS回りの性能向上を果たした。

動的面では一部グレードに減速時の作動制限を強化して姿勢変化を抑えるアシンメトリックLSDの採用や、DSCをスピンモーション直近で作動させることによりスポーツ走行時の選択幅が広がるDSCトラックモードの追加、さらには全グレードでラック摺動摩擦を抑えた電動パワステのシステム変更、燃焼マップをオクタン価100のガソリンにきっちり合わせ込むことでのアウトプット向上などを果たしている。

走り始めから伝わりくる軽快感という点では、改良前のモデルの方がわかりやすかったかもしれない。かといって、それは20kgほど増した重量増が影響しているわけでもないように感じられる。むしろ効いているのはゲインの立ち上がりがより微小な操舵量でよりリニアに立ち上がるようになったことによる印象差だろう。対すれば前型は立ち上がりに少し角が立つ感触なぶん、クイックに動いているようにも錯覚する。

パワー的な伸びしろは乗る限りは感じられないが、中間域でのトルクの厚みは前型よりも確実に増していて、それはたとえば高速道路の登坂路をシフトダウンしたくなるかアクセルペダルだけで走る気になるか・・・くらいの差異として現れている。加えて回転の上がりだけではなく落ちの側も素早くなり、素早いシフト操作にもエンジンの側がしっかり追従してくれるようになった。いずれも、走りの気持ちよさにしっかり繋がっている。

これらの改良によって、ドライバーの操作が車体の振る舞いに逐一再現されるというロードスターのドライビングカーとしての個性及び美点は、より高精細な域に達したと思う。一方で、アクセルオフ時に減速姿勢をアクティブに安定化させるようなデバイスも加わり、御しやすさなども確実に前進しているのが現行のロードスターの新しさといえるだろう。

ロードスターという存在はさまざまな贈り物をくれる
加えて、一般グレードに備わるものをあらかた排し、素に近いところまで簡素化することで、ドライバーの一挙手一投足を明け透けに再現するのが、もっともベーシックなSとなる。速さに未練なく運転行為そのものを探求するドライバーにとっての姿見のようなこのグレードは、初代が目指してきたドライビングプレジャーをもっとも色濃く受け継ぐものとしてND型の当初から設定されてきた。

個人的にもSに準ずるND前期型の990Sを所有しているが、今のクルマのとんでもない速さに追いつかなくなった自分の運転をもう一度見直すといった探究的な目的に応えてくれている。

時にはうんと回して加速する必要にも迫られる1.5Lエンジンは、高速巡航であれば20km/Lに近い好燃費をマークする。車重の軽さは燃費のみならず消耗品の負担の軽さとも同義であり、なにより質量に阻害されないクルマの純粋な動きを見せてくれるという点でも特別だ。

そんな走りの非凡さが、屋根を開ければ散々見慣れた近所の道端さえ異なる景色を見せてくれるというオープンカーならではの効能と切り離せないものとして同居している。ロードスターのようなクルマは他に変わるものがないし、それがもたらす気持ちよさもまた他を探せど見当たらない。真のライトウエイトを創り続けるというマツダの執念が、世界をどれほど幸せにしてきたか。それはとても感慨深いことだと思う。

マツダ ロードスター Sレザーパッケージ Vセレクション 主要諸元
●全長×全幅×全高:3915×1735×1235mm
●ホイールベース:2310mm
●車両重量:1030kg
●エンジン:直4 DOHC
●総排気量:1496cc
●最高出力:100kW(136ps)/7000rpm
●最大トルク:152Nm/4500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・40L
●WLTCモード燃費:16.8km/L
●タイヤサイズ:195/50R16
●車両価格(税込):355万3000円

[ アルバム : マツダ ロードスター Sレザーパッケージ Vセレクション はオリジナルサイトでご覧ください ]

文:Webモーターマガジン Motor Magazine編集部

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みんなのコメント

9件
  • ろどすけ
    本物と継続。まさにですね。
  • ベベル
    ちょうどロードスターの購入を考えていて、とても参考になる良い記事でした。あと数年後に還暦を迎えるのでゆったりとしたカーライフを過ごすのにロードスターは本当に理想的なクルマと思ってます
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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