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WECデビューに向け精力的に走り込むBMW。今後の予定と課題、IMSAとの同時参戦にならなかった理由

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WECデビューに向け精力的に走り込むBMW。今後の予定と課題、IMSAとの同時参戦にならなかった理由

 2024年からWEC世界耐久選手権へ参入することを発表しているBMWモータースポーツのLMDhプロジェクト。BMW MハイブリッドV8のデビューイヤーとなった今季は、来季からのWECプログラムに先駆けて北米のIMSAシリーズに参戦しているが、この夏には世界選手権用の車両がベルギーのチームWRTへデリバリーされたこともあり、ヨーロッパのサーキットでのテストプログラムも並行して行われている。

 10月11~14日にアメリカ、ミシュラン・レースウェイ・ロード・アトランタで開催されるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の今季最終戦『モチュール・プチ・ル・マン』を前に、BMWモータースポーツ代表のアンドレアス・ルースにLMDhプログラムの現状を聞いた。

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* * * * * *

――WECに先駆けての今季のIMSA参戦は、WECへ向けてのテストプログラムとして捉えてよいのでしょうか?
アンドレアス・ルース(AR):BMWとしては、あくまでIMSAへはシリーズチャンピオンを目指して勝ちに行くために出場しておりWECのテスト、もしくはその準備としての参戦としては捉えていない。

AR:BMWやBMW Mの量販車のマーケットにおいて、とくに北米は非常に重要な位置を占めている。その販売台数は他国をしのぎ群を抜いているだけに、北米市場でモータースポーツ活動を通じたマーケティング戦略的にも、北米からLMDhプログラムを開始することは理にかなっている。

――ポルシェやキャデラックのように最初からWECとIMSAの両方でLMDhプロジェクトを開始する案はなかったのでしょうか?
AR:BMWではLMDhへの参入についての決議までに時間を要し、かなり出遅れていたこともあり、1年目はIMSA一本に集中しようということになった。2024年はWECにも参戦するということで、今年のIMSAでの経験や起きたトラブルは、WECへの糧となり貴重なデータとなることは間違いないだろうし、それをWECにも有意義に活用できるだろう。

AR:そういった意味では、IMSAでのプログラムが世間的には“テスト参戦”や“テスト期間”と捉えられているのも無理はないと思う。来年はIMSAとWECの両選手権でトップを争えるようなポジションにいることが目標だ。

――新車で参戦した今季のIMSAでは、リタイアやトラブルにも見舞われたようですが、今季のIMSAを経て、信頼性は高まったのでしょうか?
AR:IMSAの初レースであった今年のデイトナ24時間レースでは、とくに持続性という意味でかなりのトラブルを抱えていた。最終戦のプチ・ル・マンを迎えるまでには、さまざまなことも起こったが、その度に対策を練ってきた。もちろん、まだ完璧とは言えないが、良い方向へ向かっている。最終戦では今季を締めくくるにあたり、なるべく良い結果を出して終わり、来年に繋げたいと思っている。

――ヨーロッパ国内のWRTのLMDhテストも精力的に行われていますね。
AR:ヨーロッパのテストではとくに大きなトラブルもなく順調で、来年のWEC参戦に向けてWRTやドライバーとともに、さらにマシンを成熟させていっている途中だ。とにかく可能な限り数多くのマイレージを重ねるべきだと考えている。いまのところはうまくいっており、満足のいくテストができているよ。

■パートナーシップを組むチームWRTへの注文

――8月末に行われたスパのテストでは、初めて一部の報道陣にその模様が公開されました。あいにくの“スパウェザー”ということもあり、大半がウエットのテストとなりましたね。
AR:スパでは3日間みっちり走り込んだ。安定したコンディション下で、コンスタントにさまざまなテストプログラムを実施できれば理想なのだが、スパ・フランコルシャンはなかなかそうさせてくれなかった。必ずしもテストには適したコンディションではなかったが、意図してもなかなか取れないウエットのデータもかなり収集できたことは良かった。完全なウエットのテストなど願ってもなかなか叶わないので、ポジティブに捉えている。

AR:とくに今年のWECのスパやル・マンでは、突然の雨にどのチームもかなり慌てていた。ウエットのテストをしっかりとやったチームはいなかったのではないかな。(我々はテストで)トラブルもなく走り込めたので、IMSAの経験が生かされていると感じた。IMSAの最終戦、そして来年のWECの開幕戦へ向け、引き続き集中して課題をこなしていくつもりだ。

――スパの他にはヨーロッパのどこのサーキットでテストを行ったのでしょう? また、今後の予定は?
AR:アラゴン、ポルティマオとスパでテストをこなしたが、今後もさらにテストを重ねる予定で、どこでどんなテストをするのかを考慮しながら今後のテストプログラムを組む予定だ。それには、来年に向けてドライバーのラインアップを見越して、誰と誰のドライブスタイルが合うのか、WECとIMSAに誰を配置するのか、ということも入ってくるだろう。2月の末には(カタールで行われる)WECのプロローグと開幕戦が控えているので、それに向けて着実に一歩ずつ準備をしていかなければならない。

――元アウディのファクトリードライバーであるロビン・フラインスを新たに招聘されましたね。今後、まだ誰かを新たに追加する予定は?
AR:来年のLMDhとGTプログラムで、どのシリーズにどれだけのファクトリードライバーが必要になるのか、しっかりと計算しなければならないので、まだはっきりとは明言できないが、場合によっては追加でさらに誰かを入れる可能性もあるだろう。

――LMDhのテストを重ねるうえで、来季からWECの活動を担うBMWカスタマーチームであるWRTに科す課題とは?
AR:WRTはアウディとのLMDhプログラムを見越してのフォーメーションの練習としてLMP2に参戦をしていたし、今シーズンも継続してBMW用に参戦しているものの、基本的にWRTはGTチームでプロトタイプの経験が少ない。来年からLMDhを正式に稼働するにあたり、お互いに今後良い仕事をするためにも、まずはマシンやBMWモータースポーツのLMDhプロジェクトチームとじっくり向き合い、理解を深めて欲しいと申し伝えた。

AR:システム、パフォーマンス、セットアップ、エネルギーマネジメントなどの向上には、まずはメーカー側とチーム側が互いに同じ方向に向いていないとうまくいかない。だが、新しいプロジェクトを開始するにあたり、互いをよく理解し合うということは必ずしも容易ではない。従って、WRTだけではなくIMSAのRLLも同様に、LMDhプロジェクトとして、スムーズなコミュニケーションや理解力と言う点では両チームとBMWの課題でもある。

――ところで、BMWのLMDhマシンのパワーステアリングには日本のカヤバ(KYB)製が搭載されていますが、それについてどんなご感想をお持ちですか?
AR:ダラーラのシャーシとセットでカヤバのパワーステアリングが搭載されているのは知っていた。フェラーリやキャデラックをはじめ、同じくダラーラのシャーシを使用しているメーカーは同様にカヤバのパワステを利用しているし、恐らく彼らもそう思っているだろうが、日本製ということで信頼性が高く、機能性も素晴らしい。いまのところ非常に満足をしているよ。

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