自らの意思で自分の人生を生きようと走り続ける感動作『脱走』が公開中だ。脱走を計画するイム・ギュナムを演じたイ・ジェフンと、それを阻止するリ・ヒョンサンを演じたク・ギョファンに、自分の手で幸せを掴み取る方法について訊いた。
『脱走』のあらすじ
男性の加齢による不調をサポートする天然成分を配合。“おじさんが整う”ための新サプリメントが誕生
北朝鮮軍の最前線部隊に所属するイム・ギュナム軍曹。10年間の兵役を勤め上げ除隊を目前に控えていたが、彼の決意は固まっていた。「南へ行く。自分が生きたいように生きる」という思いを携え、綿密に計画した脱出ルートで脱北を図る。しかし、不測の事態が発生。ギュナムを幼い頃から知っているエリート軍人のリ・ヒョンサンに助けられるも、最悪の運命が待っていた。
監督を務めたのは、『サムジンカンパニー1995』のイ・ジョンピル。平民出身の兵士ギュナムには、ドラマ『復讐代行人~模範タクシー~』などのイ・ジェフン。特権階級出身の上級軍人役ヒョンサンを演じたのは、Netflixオリジナルドラマ『D.P. -脱走兵追跡官-』など多くの作品で注目を集めるク・ギョファンだ。
見る人の記憶に長く残るだろうと、確信できた
──これまでにも『JSA』や『愛の不時着』といった、北朝鮮と韓国の分断を描いた感動作がありましたが、今作は脱北を図り、命がけで軍事境界線を目指す兵士の逃走と、それを容赦なく追撃するエリート少佐を主軸にした、非常にリアルな脱北劇です。ハラハラすると同時に何度も心を揺さぶられました。ご出演を決められた理由を教えて下さい。
イ・ジェフン シナリオを読んだ時点で、情熱を沸き上がらせてくれる、燃えるようなエネルギーを感じさせられた物語で、そういった感情を体現できる、伝えられ得る作品になるだろう。そして観る人の記憶にも長く残るだろうと確信しました。実際、すでに公開された韓国でも、意味深い成果を残すことができましたし、今回、日本でも公開できることに、喜びもひとしおです。そしてもう1点は、ずっとご一緒したいと思っていた、尊敬するイ・ジョンピル監督作品であったこと、この素晴らしいチャンスを与えられたことに感謝しました。
ク・ギョファン 僕は仕事に関して第六感がはたらくんです。超能力と呼んでくださってもいいですよ(笑)。いつかどんな形であれ、ジェフンさんと作品を共にできるだろうと信じていたら、見事に、それも思っていたよりも早く実現することになり、すぐに引き受けました。ジェフンさんは内面に秘めた感情を表現できる素晴らしい俳優です。そして、やはりジョンピル監督の作り出す作品の魅力ですね。僕はインデペンデントの映画をやっていた頃から、監督とは何かしらご縁があったのですが、今回のオファーは素晴らしい贈り物をいただいた気分でした。
──脱走後は、過酷なシーンが息つく間もないほど繰り広げられます。中でも印象に残っているシーンを教えてください。
イ・ジェフン もうすべてが印象的だったといっていいですが、逃げるために、とにかく走りまくる。止まることは死を意味することですから、走り抜くしかないわけで、演技とはいえ本気で極限まで挑戦しました。そうでなければ嘘になってしまう。実際、撮影中にこのまま息が止まってしまうのではないかと思う瞬間があったほどです。あれほど走りまくる作品はもう最後になるのではないでしょうか。
実際、イ・ジェフンは撮影のために、普段から鍛えている身体をさらに絞り、撮影中は58キロ台をキープしていたという。役のためには自分を追い込むという彼ならではの覚悟の役作りといえるだろう。
──まさに満身創痍の状況でしたね。最初、脱北を望む部下の下級兵士ドンヒョク(ホン・サビン)と共に脱走するのですが、一度は見つかって、ふたりは逮捕されます。ひどい拷問をされたにも関わらず希望を捨てず、再び脱走を決意して走り出します。
イ・ジェフン 自分の人生を自分の意志で生きたいという、それのみでした。イム・ギュナムは、きっとどれだけ失敗しても走り続けたでしょう。ここでは失敗すらできない、というセリフが印象的でした。
──ギョファンさんはどうですか? 印象的なシーンについて。
ク・ギョファン そうですね、僕の場合はどこのシーンというよりも、まずシナリオを読んだときに浮かんだイメージがあり、それを実現させたいという気持ちが大きなモチベーションになっていたと思います。それは物語の最後に、青々とした草原で、ふたりが向かい合うという姿でした。実際にはそうはならず、もっとシリアスな結末に向かうのですが、僕自身にとってギュナムは幼なじみでもあり、たとえ敵対していてもふたりの間には、分かり合える感情があると思ったのです。
──追跡中に、ヒョンサンがひとりで風の吹く草原に座り込むシーンはありましたね。手の指をながめて、かつてロシアでピアニストとして公演していたころの自分、やりたかったことをしていた自分を思い出すかのような。あのシーンは冷酷な少佐ではなく、ひとりの人間として映し出されていて印象的でした。
ク・ギョファン そう言っていただけると光栄です。僕はシナリオを読むとき、いつもその向こう側にあるものを想像しながら読むのですが、あの場面に込めた“思い”は、素晴らしいシーンとして残すことができたと思います。
作品は誰と、どんな人たちと作るのかが大切
──おふたりが出演作を選ぶとき、進めるとき、もっとも大切にしていることは何でしょうか。
イ・ジェフン まずシナリオを読んで、これがどう具現化されていくであろうと想像します。ただ映画はシナリオだけでは完成しませんから、大切なのは作り手たちのコミュニケーションがいかにとれるかどうかだと思います。これはずっとこの仕事を続けてきたことで分かったのですが、果たしてこのシーンは、皆が同じ方向に向かって、同じ思いを共有しながら作れているのだろうか、といったことです。そのためには、演者も制作側も互いによく会話しあうことが重要だと思っています。
──意見がくい違ったときは、どのように?
イ・ジェフン それぞれが納得するところまで話し合います。あるときは説得するようなこともありますが、そうやって常に健康的なコミュニケーションをとることは、よい作品を作り上げたい者たちにとっての大切な心構え、姿勢ではないでしょうか。
ク・ギョファン 僕の場合は、シナリオについては好みのものもあればそうではないものもありますし、シナリオは半分だけを信じるようにしています。
──それはクールですね。
ク・ギョファン 残りの半分は、いまジェフンさんが話したように、全体のコミュニケーションによって作られると思っています。たとえば僕は監督業もしているので、先ほども少し触れましたが、シナリオのセリフの奥にあるものを大切にしていて、セリフで描き切れなかった余白があったとして、そこを埋めていくのが、俳優であったり、撮影監督だったりする。非常にセンシティヴな感性が必要なので、この映画を誰と、どんな人たちと作り上げるのか、ということはとても重要だと考えています。
──『脱走』は、とてもよいクルーだったということですね。
ク・ギョファン そうです。良い要素がいくつもありましたよ。まずはお話したように、ジェフンさんの存在と、監督。もうひとつは、『左手は添えるだけ』。
──それはどういうことでしょうか?
ク・ギョファン 『SLAM DUNK』のセリフです(笑)。シナリオも素晴らしかったし、まさに(我々は)ただ手を添えるだけ、でした。
作品作りについて話すふたりの口調は熱いが丁寧で、映像作品を愛してやまない純粋さ、真剣さがひしひしと伝わってきた。それら熱量は余すところなく本作にも反映されている。
──この作品は自分の人生は自由に選択できるということ。切り拓けるということ。そこを核としていると思います。主人公は夢を抱き、命がけの逃走へと飛び込んでいきました。おふたりには、そのような人生の大きな転機、岐路に立ったことはありますか。
ク・ギョファン 僕には頻繁にあります。
──え、頻繁にですか?
ク・ギョファン ええ。ただこれが転機になると自覚したことはなく、気づかぬうちに、ということがとても多いんです。どの方向に向かって進むべきか、と思うことはありますが、結局のところ偶然に身を委ねていたら良い結果を残せたというか。たとえば撮影をしていて、今の自分の演技はきっとNGカットだなと感じても、完成した映画を観たら、ああ、こういうふうに使われるのかとか思うことがあります。以来、自分の思い、経験だけで判断することをしないようになりましたし、現場で何回もテイクを重ねることがあっても、演技がうまくいかず恥ずかしいなどとは思わず、それだけもっとよりよいものになる、可能性が広がっていると捉えるようになったんです。そういう意味では、成功も失敗も存在しないのではないか、と思うようになりました。
──それは深い言葉ですね。ジェフンさんはどうでしょう?
イ・ジェフン 僕は大きな転機といった、明確なものがないんです。自分の人生を考えたとき、子どものころから周りにはいつも大好きな映画やドラマの世界があって、のめり込みました。ハリウッド映画や香港映画、日本映画もたくさん見ましたし、日本の漫画も本当にたくさん読みました。特に『SLAM DUNK』は大好きです(笑)。そういったさまざまな喜怒哀楽を表現する物語を見るたび、色々な感情が揺さぶられて、多くのことを考え、いつしかあの世界に入れたら、作る側になれたらと自然に夢見るようになったのです。俳優になれたら多様な人生を生きられそうだなと。小さなころからの経験が、いつしか自分の栄養となって蓄積されていることに、すごく感謝しています。確実に『脱走』にも、その栄養素が活きたと思っています。
本作は凄まじい脱北劇を半端ない疾走感をもって描いたものだが、監督のイ・ジョンピルはこう語っている。「観終わったあとに、『自分の話みたいだ』と思って欲しいという部分がありました。国籍やイデオロギーを超えて、一人ひとりの暮らし、人生は似ていると感じてほしかったのです。幸せを求めて暮らす人々にメッセージを伝えたいと思いました」
誰もが自由に、自分の人生を生きられることほど、幸せなことはないだろう。ラストは感動とせつなさに胸を掴まれる。人間ドラマとしてまたひとつ、語り継がれるだろう傑作が誕生した。
『脱走』写真・横山創大
文・水田静子
編集・遠藤加奈(GQ)
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