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ホームビルド・スポーツカー 前編 ロータスにターナー、ロッチデール ほか

掲載 更新 2
ホームビルド・スポーツカー 前編 ロータスにターナー、ロッチデール ほか

オーナーが作るスペシャル・モデル

執筆:Simon Taylor(サイモン・テイラー)

<span>【画像】オーナーの手作り スペシャル・モデル 変わり種 少量生産のスポーツモデルたち 全86枚</span>

撮影:James Mann(ジェームズ・マン)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


スペシャル・モデルと聞いて、どんなクルマを想像するだろう。1950年代の英国では、アマチュアが中古部品を買い集めて作ったようなクルマを指していた。

その昔、手頃な量産スポーツカーが存在しなかった英国。古いオースチンやフォードを安く手に入れ、エンジンとシャシーを利用し、軽く独創的なボディに置き換えるという手法が一般化していた。

エンジンをチューニングし、アスクルレシオを変え、独立懸架式のサスペンションを与えるオーナーもいた。また、当時は先進的といえたガラス繊維強化プラスチック、FRP製のボディを提供するメーカーも複数存在していた。

だが、広告写真はスタイリッシュでも、基本的にはボディの表皮のみ。滑らかなサイドラインにカバーの付いたヘッドライト、ガルウイング・ドアに惹かれて購入しても、届いてから大幅な加工を必要とした場合が殆どだった。

そのため、実際に理想が現実となったスペシャル・モデルは少ない。水準の高い例もあったものの、車検が一般化する以前だったとはいえ、信頼性が低く粗悪な作りなことの方が多かった。

1950年代後半に入ると、オースチン・ヒーレー・スプライトやBMCミニの登場が、ドライバーを誘惑する。それでも新車に掛けられる高い税金のおかげで、キットカーとして需要は残った。

複数メーカーからエンジンやシャシーなどを購入したことを証明でき、自ら組み立てることが可能なら、免税扱いとなったのだ。ロータス・エリートですら、英国ではキットカーとしても購入可能だった。

それから半世紀以上が過ぎ多くが消滅していったが、一部は大切に残されている。毎年8月になると、英国コッツウォルドでヒストリック・スペシャルデーが開かれている。

英国編集部では、そのスペシャル・モデルのスペシャル・デーにお邪魔させていただいた。風変わりなクルマを何台かご紹介させていただこう。

ロータス・シックス(オーナー:ナイジェル・スペンサー)

ロータスの創業者、コーリン・チャップマン氏の事業は、スペシャル・モデルの販売から始まっている。最初のロータスは、1930年代のオースチンがベース。オースチン・セブンのシャシーに、合板で作られたボディが載せられていた。

1952年、彼は1172ccのフォード10用ドライブトレインを搭載でき、シンプルなアルミ製ボディを被せられるスペースフレームを開発。そのクルマはレースで勝利を収め、キットカーへの注文が寄せられるようになった。

軽量で操縦性に優れるだけでなく、複数メーカーのエンジンに対応できた点も強み。フォードのほかMGやBMWといった銘柄のユニットが、オーナーの手で積まれたという。合計100台以上が売れ、今へと続くスポーツカー・ブランドの礎を築いた。

ナイジェル・スペンサー氏が所有する1台も、そのロータス・シックス。ポリッシュ仕上げのアルミ・ボディが眩しい。サスペンションはフロントがコイルスプリングとダンパーによる独立懸架式、リアはソリッドアスクルだ。

フォード車用のホイールが、いかにもキットカーらしい。エンジンはフォード100E用のサイドバルブで、アルミ製ヘッドを搭載。3速MTにはクロスレシオが組んであるという。

スペンサー家にやって来てから50年。モスキート戦闘機のパイロットもしていたという父が1970年に購入したものの、完成させることはなかったそうだ。

しかしナイジェルが8年前に一念発起し、シックスを完成させた。今では、サイドバルブを特徴とするロータス初期の量産モデルとして、完璧な姿を湛えている。

ターナーMk1(オーナー:デレク・ベントレー)

英国中部のウォルヴァーハンプトンにあるガレージで、シングルシーターのレーシングカーを何台か製作したジャック・ターナー氏。1955年になるとFRPボディのスペシャル、ターナー・スポーツを発表した。

ラダーフレーム・シャシーにBMC社製のAシリーズ・エンジンを載せたキットカーとして売られ、特にフェイスリフト後は格好良く仕上がっていた。製造台数は600台以上で、多くが北米へ輸出されている。

後継モデルとなるMk1には、フォードやクライマックス社製のエンジンが搭載されることが多く、軽量化が加えられレースにも頻繁に姿を見せている。

1958年、より手頃な価格でオースチン・ヒーレー・スプライトが登場。そこでターナーは1960年代に入ると、より洗練されたGTクーペを発表する。しかし多くは売れず、1966年にターナー社は消滅してしまう。

このターナーMk1は、スペシャル・モデルを愛するデレク・ベントレー氏がオーナー。ほかにロッチデール社やフェアソープ社のモデルも複数所有しているという。50年も乗っているロッチデール・オリンピックの走行距離は、56万kmを超えたそうだ。

彼は1981年に、ボロボロの状態でターナーMk1購入。2004年までそのままだったが、オリジナルのスーパーチャージャー付き948ccエンジンを1275ccのツインキャブ仕様へ換装し、走れる状態へ仕上げた。

フランスのル・マン・クラシックへも、Mk1で向かったとのこと。走行距離は伸び続けるだろう。

ロッチデールGT(オーナー:レス・ブラウン)

スペシャル・モデルとしてベーシックなボディ・シェルを販売していたロッチデール社。1956年にフォード用シャシーへの搭載を前提とした、完成度の高いボディを持つスポーツカー、GTを発売する。

スチール製サブフレームを備え、カーブを描くサイドウインドウが付いたドアが特徴。内側もしっかり成形してある。そして何より、見た目が良い。

余計なラインのないスタイリングに、フォルクスワーゲン用のヘッドライトを備え、ファストバック風のリアまわりも整っている。ドライブトレインとのサイズ感も良く、技術を持った人なら、手頃な価格でスマートなクーペを組み立てることができた。

製造台数は数100台といわれ、FRPモノコック・ボディを備える後継モデル、オリンピックの開発資金を捻出している。こちらのキットカーの製造台数は、約400台だった。

レス・ブラウン氏がオーナーのGTは、新しめのランニングギアに交換してある。エンジンは1965年のBMC社製のAシリーズで、シャシーは1973年式のトライアンフGT6用だという。

学校の教師を務めるブラウンは、このGTをエンジンが抜かれた状態で購入。生徒とともに、課外活動の一環でレストアしたそうだ。「わたしより溶接の技術が上達した生徒もいます」。とブラウンが笑顔で話す。

彼は積極的に乗っていて、このスペシャル・デーへも片道550kmの道のりを自走でやって来た。

ファルコン・ペレグリン/ファルコン・バミューダ(オーナー:トニー・ソープ/エイドリアン・レヴェリッジ)

スペシャル・モデルが全盛期だった頃、ピーター・ペランディン氏が立ち上げたFRPボディ・メーカーがファルコン・シェルズ社。特にMk2と呼ばれたボディは、ジャガーDタイプを小さくしたような見た目で成功している。

フォード・ポピュラーのシャシーに載った仕様では、走りは今ひとつ。しかし、レン・テリー氏が設計したスペースフレームが提供され始め、コンパクトでシャープなスポーツカーに仕上げることも可能だった。

1172ccのフォード・エンジンに4シーター・レイアウトを採用したバミューダは、2シーター・クーペのカリビアンGTほど走行性能は高くなく、製造台数は伸びずじまい。だが、見た目はエレガントだ。

1960年代に入ると、手頃な価格のスポーツカーが何台か登場。スペシャル・モデルを手掛けていたファルコン・シェルズ社も他社と同じく、ボディとシャシーなどがセットになった、フルキット仕様のペレグリンを発表する。

フォード105E用のエンジンが前提で、フロント・サスペンションはコイルとウイッシュボーンを備える。リアもリジッドアスクルながら、コイルスプリングで支えている。だが価格はライバルより高く、ペレグリンは2台しか作られなかった。

ファルコン社のキットカーを完成させたオーナーは、ほんの僅か。ライトブルーの1台は、1961年のロンドン・レーシングカー・ショーへ出店された、ファルコン・ペレグリンの1号車。30年後にトニー・ソープ氏が納屋から発見したそうだ。

コスワース・チューニングの105E用エンジンを搭載していたが、今は1.6Lのクロスフロー・エンジンに載せ替えてある。「技術的には非常に高いと思います」。と説明するソープ。現在の交通環境でも、充分に速く乗りやすいと感じるという。

エイドリアン・レヴェリッジ氏がオーナーの赤いバミューダは、自動車エンジニアのレスリー・バラミー氏が設計したLMBラダーフレームを採用した1台。フロントサスペンションは独立懸架式だ。

エンジンはフォードのサイドバルブで、SUキャブレターにはスーパーチャージャーも組まれている。ファイナルレシオは、3.7:1と比較的高い。ステアリングアームにショックアブソーバーを取り付けることで、キックバックを低減させたそうだ。

この続きは後編にて。

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みんなのコメント

2件
  • 海外はいいな車を自由にいじったり古い車を修理したりする文化が発展していて好きな事ができる
    羨ましい
  • イギリスではたいやが4個付いていてハンドルとシートがあればどんな車でも行動走行が可能と聞いたことがある。流石車文化が発生した国だけあるなと思う。今ではずいぶん車メーカーは外国資本になってしまったがF-1を始めとしてモータースポーツが社会的地位を確立している。一方日本はその対極。車には異常な高額負担を課し古くなると新しい車に買い替えるようにさらに高額の税金を課す。少しでも改造すると犯罪者のように扱い、あまり意味のない車検制度が車好きを圧迫する。欧米に比べて車の制限速度は異常に遅く設定されているそうな。そろそろ国民を子ども扱いするのを政府は止めて基本自己責任を徹底してほしいと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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