アストンマーティンF1チームは、新ファクトリーの建設がスタートしたことを発表した。チームのエグゼクティブチェアマンであり億万長者のローレンス・ストロールの野望は、彼のチームを世界選手権でタイトルを争う強豪へと育てることであり、そのためには最新の設備を備えたファクトリーが必要だと彼は考えている。
ストロールは2018年にレーシングポイントF1チームを買収、1991年にジョーダンとして始まったこのチームの変革に取り組み、今シーズンを前にこのチームをアストンマーティンへとリブランドし、マシンをブリティッシュグリーンに変更した。
アストンマーティンF1、新ファクトリーは2022年8月のオープンを目指す。コロナ禍で建設に遅れ
アストンマーティンF1チームをトップチームへと変えるためには、ジョーダン時代からほとんど変化のないシルバーストンの施設への改革が必要だと、ストロールは考えた。そのため彼は、拠点周辺の土地を購入し、3棟の建物を含む本拠を作る計画を立てた。ストロールは1億5000万ポンド(約227億円)から2億ポンド(約303億円)のコストがかかると見積もっている。
新たに作られる40万平方フィート(約3万7000平方メートル)の建物に、設計、製造、マーケティング部門が収容され、チーム初の最先端の風洞とシミュレーターも導入される。現在アストンマーティンは、メルセデスの風洞を利用している。
これまでチームは、様々な形で業務や部品をアウトソーシングしてきた。社内で対応する能力がなかったためだ。しかし新ファクトリーが完成すれば、風洞、モデリングサポート、製造施設がひとつ屋根の下に収められ、開発ペースが大幅に改善するものと期待される。
新ファクトリーの完成は2022年終盤から2023年初頭となり、風洞の稼働は2023年夏以降の開始が予定されている。
「これは非常に大きな投資だ」とストロールは語った。「このことは私のチームに対する信頼を表し、F1における私の野望と信念を裏付けるものだ」
ストロールは3年から5年のうちにタイトルを争うことを目標に定めているが、その野望を達成するためには施設の全面的な刷新が必要だったと述べている。
「現在の施設では難しいだろう」とストロールは言う。
「今は、増え続ける従業員を収容するために、当座しのぎのオフィスを追加している。従業員がファクトリー内のさまざまな場所にいるため、最善のコミュニケーションが取れていない」
「コミュニケーションと、研究開発および設計の改善は必要不可欠だった。既存の施設では、私が望んでいる人数まで成長を続けることはできなかった。不可能だったのだ。そういうことだ」
F1の主要チームが新たな財務レギュレーションに準拠するために組織を縮小する必要に迫られている一方で、アストンマーティンには拡大を進めている。それによってチームは優位に立つことができると、ストロールは考えている。
「新型コロナウイルスのためにこの建物の建設が何年か遅れていることは、マイナス面だといえるだろう。本来なら、今日の時点で建物は完成させておきたかった」
「だが、組織縮小を行わなければならない大規模チームよりも、我々は良い状態にあると確信している。縮小によって意欲は失われる。次に誰が仕事を失うことになるか分からないような状況だからだ。一方で我々は、何百人もの人々を従業員に加えようとしている。つまり我々は最高の状況にあるといえるだろう」
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