進化したマツダ「CX-80 XD-HYBRID Drive Edition Nappa Leather Package」は、魅力的な3列シートSUVだった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
新型マツダCX-80 XD-HYBRID Drive Edition Nappa Leather Packageの特徴
伸びやかで艶やか──新型マツダCX-80 XD-HYBRID Drive Edition Nappa Leather Package試乗記
1.ゆったりとしたクルージングを楽しむ2.居心地の良い2列目シート3.実用的な3列目シート4.マツダ渾身のフラッグシップモデル1.ゆったりとしたクルージングを楽しむ
(前のページから続く)実際に市街地へとクルマを進めると、モーターの恩恵を即座に体感した。
2.1tを超える巨体でありながら、発進時にはモーターの強力なアシストが瞬時に立ち上がり、まるで氷の上を滑り出すかのように、滑らかかつ力強く車体を前へと押し出していく。
ディーゼルエンジン特有の振動やガラガラとしたノイズは抑え込まれており、車外で聞けばかすかに直列6気筒ディーゼルらしい野太いサウンドが確認できるものの、分厚い遮音材に囲まれたキャビンの中では静寂そのものである。
さらに今回の商品改良では、フロントドアガラスが遮音ガラスに変更されており、これによって高速走行時の風切り音などの侵入がさらに低減され、静粛性能が一段と高められていた。
ステアリングを握りながら交差点を曲がり、あるいは車線変更を行うたびに、兄弟車であるCX-60との明確なキャラクターの違いが浮き彫りになる。
全長4990mm、全幅1890mm、全高1710mm、そしてホイールベースが3120mmに達する巨大な体躯は、運転席からでも物理的な大きさ、重さをはっきりと意識させる。CX-60が持っていた、ドライバーの操作に対して俊敏にノーズの向きを変えようとするスポーツカーのような機敏さや、ある種の緊張感とは対極にある。CX-80はあくまで大らかで、ステアリングの応答もマイルドに躾けられており、ゆったりとしたクルージングを楽しむためのセッティングが施されているのだ。
乗り心地に関しても、3120mmの延長されたホイールベースが効果を発揮している。CX-60の初期モデルでしばしば指摘されていた、リアサスペンションからの突き上げ感や、ボディ全体が揺すられるような微振動は、CX-80においては抑え込まれている。試乗車には電子制御サスペンションこそ搭載されていないものの、ドライブモードを「ノーマル」にして走行する限り、路面のアンジュレーションをサスペンションストロークの奥深くでしなやかに吸収し、フラットで落ち着きのあるフラットライドを提供してくれる。
ただし、唯一気になった点を挙げるとすれば、ブレーキのフィーリングである。2120kgの質量を持つクルマに対して、ブレーキペダルを踏み込んだ際の初期の制動力の立ち上がりがややマイルドであり、より強力なストッピングパワーと剛性感のあるペダルタッチが与えられていれば、重量級SUVとしての安心感がさらに増すのではないか、と、感じられた。
2.居心地の良い2列目シート
CX-80を語る上で避けて通れないのが、後席空間の設えである。今回の商品改良に際し、シートバリエーションの見直しが行われ、ユーザーの要望を反映した選びやすい構成へと変更された。
具体的には、「Premium Sports」および「Premium Modern」グレードでは6人乗りキャプテンシート仕様のみの設定となり、それ以外のグレードでは7人乗りベンチシート仕様、または6人乗りセンターウォークスルー仕様を選択できるようになった 。今回の試乗車は後者の6人乗り仕様であり、2列目シートには左右独立のセパレートタイプであるキャプテンシートが装着され、中央には3列目へと続くウォークスルーの空間が確保されている。
2列目シートに腰を下ろすと、VIPを迎え入れるにふさわしい空間が広がっている。左右のシートそれぞれにアームレストが備わり、手動式ではあるものの、乗員の体格に合わせてきめ細かく調整できるスライド機構とリクライニング機構を完備。足元空間は広大で、足を組んでくつろぐのも容易である。センターのウォークスルースペースには、ドリンクを置くのに便利なカップホルダー付きの小型トレイが足元付近にあり、実用性も高い。さらに、サイドウィンドウには専用の引き上げ式サンシェードを内蔵。
そして何より素晴らしいのが、圧倒的な開放感である。オプション装着された巨大なパノラマサンルーフにより、黒を基調とした室内でありながらも暗さを感じさせない。CX-60の後席に座った際にわずかに感じられた閉塞感や圧迫感は、CX-80の2列目空間には存在しない。
リア専用のエアコンディショナー操作パネルも備わり、静粛性の高いキャビンとフラットな乗り心地が相まって、どこまでも乗り続けたくなるような至福の移動空間が構築されている。
3.実用的な3列目シート
続いて、多人数乗車SUVとしての真価が問われる3列目シートの居住性について、身長170cmの筆者が実際に乗り込んだ。
3列目へのアクセスは、2列目シートの中央にあるウォークスルースペースを通って移動するか、あるいは2列目シートの肩口にあるレバーを操作し、シートバックを倒しながら座面全体をワンアクションで前方にスライドさせて生まれた隙間から乗り込む形となる。
実際に3列目に着座してみると、残念ながら足元の空間的な余裕は限られている。2列目シートに大人が快適に座れる標準的な位置にセットした状態では、3列目の膝回りの空間はギリギリであり、リラックスして足を伸ばすのは難しい。さらに難点として挙げられるのが、足の置き場だ。後輪を収めるための巨大なホイールハウスが室内に大きく張り出しているため、足元空間の幅が狭められているのだ。そのため、左足は2列目シートの下の隙間になんとか滑り込ませられたものの、右足の行き場がなく、結果的にウォークスルーの空間に向かって斜めに足を投げ出すような、やや変則的で落ち着かない着座姿勢を強いられてしまう。
しかしながら、マツダの開発陣が3列目シートを単なる子ども用の補助席や、短時間のエマージェンシー用として割り切っていないのは、充実した装備から見て取れた。
シートバック自体は十分な高さと厚みが確保されており、大型のヘッドレストを引き上げれば、大人の頭部もしっかりとホールドしてくれる。さらに、驚くべきのは3列目専用のエアコン吹き出し口が備わり、USB Type-Cの充電ソケットも用意されている。カップホルダーにいたっては、左右のトリムにそれぞれ2個ずつ、合計4個も配置されており、アームレストとしての機能も兼ね備えている念の入りようだ。また、サイドウィンドウの面積が十分に取られており、パノラマサンルーフからの光も届くため、最後尾に押し込められたような暗さや閉所恐怖症的な感覚はない。
乗り心地の面では、構造上リアアクスル(車軸)のほぼ真上に座るため、路面の段差を乗り越えた際の突き上げ感や、上下に揺すられるバウンシングの動きは、どうしても2列目シートと比較すると大きく、身体に伝わってくる。とはいえ、トータルで見れば、これらの充実したアメニティ装備の数々によって、1時間程度の近距離移動であれば大人でも十分に耐えうる、実用的な3列目シートとして成立していると評価できる。
3列目シートは、背もたれのストラップを引けば簡単に前方に倒せるので、2列目シートの背面からフラットに連なる広大なラゲッジスペースを作り出せる。荷室の使い勝手は高く、日常の買い物からキャンプなどのレジャーまで、あらゆるシーンで活躍することは想像に難くない。
4.マツダ渾身のフラッグシップモデル
今回の商品改良を経てさらに熟成度を高めたマツダ CX-80は、2030年に向けてマツダが掲げる“ひと中心”の価値観のもと、“走る歓び”を進化させ続け、顧客の日常に移動体験の感動を創造するといった目標を、高い次元で具現化した1台であると言える。
兄弟車であるCX-60が担うドライバーズカーとしての情熱的な走りとは一線を画し、延長されたホイールベースと増加した車体重量を逆手に取り、大型SUVならではのゆったりとした鷹揚な乗り味と、どこまでもまっすぐ走り続けたくなるような圧倒的な直進安定性を手に入れた。
日常的に多人数での乗車機会があり、家族や大切なゲストを乗せての長距離ドライブを頻繁に行うユーザーにとって、これほど頼もしく、かつ運転の疲労を抑えてくれるグランドツアラーは少ない。
加えて新たに追加されたXD-HYBRID Drive Edition Nappa Leather Packageは、しっとりとしたナッパレザーがもたらす触感とマットブラックヘアラインが醸し出すシックで知的なインテリア空間、実用性に富んだ3列目シートと強大で高効率なディーゼルハイブリッドの組み合わせによって、独自の地位を築き上げる。
新しいCX-80は、マツダ渾身のフラッグシップモデルとしてふさわしい1台だった。
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