クルマの環境性能は包括的に評価される
タンク・トゥ・ホイール(T to W)とは、燃料タンクからクルマを走らせるタイヤへ動力が伝わる(つまり走行)までの環境性能をいう。
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一般にクルマの環境性能は、その車両1台の性能で評価される。たとえば燃費や排気浄化性能、EVであれば電費などだ。商品性評価として確認したり比較したりできるひとつの指標としてのウェル・トゥ・ホイール(W to W)は、燃料を入手する段階からタイヤへ動力が伝わるまでの評価になる。
HEVも含めエンジン車であれば、原油の調達から精製、そしてガソリンスタンドへの運搬など、クルマのタンクに燃料を給油するまでの環境負荷も評価の対象になる。これをEVに当てはめると、発電の段階で、火力を使うか水力を使うか、あるいは再生可能エネルギーを使うかで、そもそも電気の環境負荷性能が変わる。送電による損失も考慮される。
2025年秋に発表された、2023年度(2023年4月から2024年3月まで)の日本の電源構成比によると、68.6%が火力で、22.9%が再生可能エネルギー、8.5%が原子力となっている。火力発電が主力であるうちはEVのリチウムイオンバッテリー製造にまつわるCO2排出量が多いため、効率の高いエンジンを活用すれば、W to Wの評価ではEVが突出して環境性能に優れているわけではないとの見解がある。
しかしながら、それはエンジンが最高効率で運転されることを前提としており、エンジン単体での評価はともかく、利用者が実際にクルマを使う際の運転の仕方によって数値が変わる可能性があることを認識しておく必要がある。
そのうえで政府は、2030年度には電源構成比率を改善し、再生可能エネルギーを最大で38%程度、原子力を最大で22%程度、火力を41%程度に抑えると目標を定め、2040年には再生可能エネルギー比率を最大で5割程度に高め、原子力は2割程度と変わらず、火力は最大で4割程度まで減らすとしている。将来的に、EVの環境性能はW to Wでも改善が進み続けることになるわけだ。
ライフサイクル・アセスメントは、製品を作るための原料の調達から廃棄までにかかる環境性能の評価である。単に石油や電気といったエネルギーの調達にとどまらず、クルマを作るための原料の調達や部品の製造、運搬などの過程で必要なエネルギーと、使用中はもとより廃車となって廃棄するまでの過程のエネルギー消費も査定対象になる。
こうなると、たとえばレアアースの採掘や精錬なども審査されることになり、環境負荷の少ない材料の入手が求められることになっていだろう。
バッテリーやモーターの再利用まで考慮する必要がある
ところで、W to Wやライフサイクル・アセスメントは、ひとつの製品の生涯(誕生から廃棄)における評価の仕方であり、これは20世紀までの物づくりの上に成り立っている。しかし現在のEVは、リチウムイオンバッテリーを用いるため、その性能はEVの廃車後も継続する。
EVで働き終えたリチウムイオンバッテリーは、まだ70%ほどの容量を残している。廃車後にすぐ資源に戻すリサイクルを施すのではなく、70%も容量を残すリチウムイオンバッテリーを定置型として活用することが不可欠だ。たとえば再生可能エネルギーの発電による一時的な電力貯蔵や、災害支援のための電源確保、あるいは鉄道の踏切、また交通信号などで万一の停電に対する支援など、既存の電力供給網のうしろ盾となる働き場所がある。
二次利用されるリチウムイオンバッテリーは、EV製造時にCO2排出を含めた環境性能が査定されているのでCO2排出ゼロで製品化できる。もちろん製品を作る際にある程度のエネルギー消費はあるが、新品のリチウムイオンバッテリーを採用するのに比べ、環境負荷を少なく評価できる。
別の見方をすれば、そもそもEVとしては容量の30%ほどしか使えないのであれば、リチウムイオンバッテリー製造時のCO2排出量の30%程度のみEVの環境性能とし、エンジン車やHVと比較してみることも検討の余地がある。
レアアースを用いるモーターについては、家庭電化製品のモーターの耐久性の高さからも想像できるように、1台のEVで利用を終えてもモーター機能はそのまま別のEVで使えるほど耐久性が高いと、初代リーフの時代からいわれている。これについても、EV製造のために必要とされたレアアースの入手におけるCO2排出量は、EV2台ぶんにわけて評価してもいいという考え方もできなくない。
いいたいことは、過去の製品や商品の環境性能の評価は、W to Wもライフサイクル・アセスメントも1代限りの評価だったということだ。しかし、EVで使われるバッテリーやモーターは、使用後もまだ用途が残されており、1代限りでの評価は必ずしも正当ではないといえるかもしれない。
また、いまの電源構成を前提とした環境評価はひとつの視点ではあるが、クルマは新車として誕生してから十数年は利用されるのが一般的で、いま購入した新車は2036~2040年ごろまで走り続ける可能性が高い。その時代に使う電力事情によっては、使用段階での排気ゼロがより重要性を高めることになる。
2036~40年になってなお排気を出し続けることがどのような環境負荷を与えるか。自分が購入しようとするクルマの生涯(十数年後)に視線を伸ばしながら環境性能を評価することが必要ではないだろうか。
いま証明される環境性能が無駄であるというわけではない。しかしその評価はいまの性能でしかなく、クルマや家庭電化製品のように十年単位で長もちする製品に対しては、10年後の電力供給の様子を視野に選択肢を検討するのがいいのではないかと思う。
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EVにリセールバリュー無いからってそんなこじつけするかな?