伝説的なエンジンの1つ、K20型
text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
【画像】ホンダ・シビック・タイプR EP3型からFK8型まで 4世代を比較 全63枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
モンスター・エナジーやアフターマーケット・パーツのブランドロゴ、VTEC insideといったステッカー。2代目のEP3型ホンダ・シビック・タイプRでは、お決まりのアイテムだった。
若者にも手が届く身近な高性能モデルであり、ハリウッド映画のワイルドスピードが育んだ日本車のイメージなどが相乗し、そうなる理由は理解できる。そんなボーイズレーサーも、近年は価格が上昇中だ。
中古車サイトを眺めてみると、純正状態のクルマには強気の値段が付いている。英国では、1万2000ポンド(184万円)くらいが一番高い価格帯のようだ。
K20型と呼ばれる2.0LのVTECユニットは、伝説的なエンジンの1つ。レスポンスは極めて鋭く、適正に手を加えれば300psを超える馬力を生み出すことも可能だ。もちろん手を加えずとも、優れた能力は備えている。
ホンダのエンジンとして、信頼性も良好。そのおかげで、英国には状態の良いクルマを残そうという人も少なくない。高くなっている取引価格も、その流れを支えている。
ややカルト的なEP3型の英国での人気は、初めて正式に英国へ導入されたシビック・タイプRであることが理由の1つ。ホンダは以前から高性能モデルで欧州のドライバーを誘引しようと試みてきたが、実際にヒットしたのは、大胆な3ドア・ホットハッチだった。
フォルクスワーゲンにとってのゴルフGTI
初代から確かな評価を得たシビック・タイプRは、フォルクスワーゲンにとってのゴルフGTIのような存在。それは現在でも受け継がれている。FK8型へ進化した5代目シビック・タイプRは、登場から4年が経つ2021年でもホットハッチの王者に君臨している。
EP3型の中古車を探す際、気を付けたいのが今までの履歴。価格帯が上昇傾向なら尚のこと。改造による影響はもちろんあるが、しっかり大切に乗られてきたかどうかは、重要なポイントとなる。
事故歴や走行距離だけでなく整備記録も精査し、前オーナーがどれだけ愛情を注いで維持してきたかを確かめたい。適切な管理さえしていれば、エンジンは耐久性が高い。
燃費は良くても10.0km/Lを少し超える程度だが、日常的な移動手段としても充分に使える。0-100km/h加速は6.6秒で、毎日の通勤も楽しいものにしてくれるだろう。
高値で取引されているのは、純正状態のクルマ。とはいえ、改造されていても内容が良ければ、シャシーやドライブトレインから最高の喜びを引き出すのに一役買ってくれる。
日本仕様のEP3型は、英国仕様より若干パワフル。シャシー設定も異なり、限界領域での挙動の予想を少し容易にしてくれる。サーキット走行を楽しみたいなら、フェロード社製のブレーキパッドなど、チューニングに多少の投資をしてみるのも良い。
どう乗るかに関わらず、まずは間違いのない内容のタイプRを選ぶこと。堅実的に買えるEP3がまだ市場にあるうちに、よく比較して、これぞという1台を手に入れたい。
EP3型タイプR オーナーの意見を聞いてみる
オーウェン・ロイド
「好きにならない理由がわかりません。アイコン的な存在ですよね。K20型エンジンを載せた中古車として、手頃な値段は注目です。先代より一気にパワーアップし動的性能も高められており、取り引き価格は上昇しているようです」
「EP3は、思いっきりガソリンを燃やしたくなるクルマ。走りは信じられないほど激しい。間違いなく楽しいです。しかし落ち着きには欠けます。クラッシュしたクルマが多い理由でもあるでしょう」
「1980年代のプジョー 205 GTiに似ている感じ。コーナー途中でアクセルを一気に抜くと、挙動不審になるんです。それがエキサイティングでもあるのですが」
不具合を起こしやすいポイント
エンジン
16万kmまでのタイミングチェーン交換は不可欠。新しいエンジンへ載せ替えるより、はるかに安価に済む。まだの場合は値下げ交渉に使えるだろう。
エンジンを高回転域まで回すなら、10分以上のウォームアップが済んでから。3速や4速で6000rpm付近まで回して、VTECの切り替わりを体感できない場合、エンジンオイルの不足などの可能性がある。メンテナンスも怪しい。
トランスミッション
変速をアシストするシンクロメッシュは、ハードな使い方を続けると不具合を招く。カーボンで強化されたシンクロには、英国では約300ポンド(5万円弱)で交換可能。
2004年のフェイスリフト時に、操縦性を向上させるためフライホイールが軽量化されている。クラッチ交換に合わせて、軽いフライホイールへ一緒に交換するのも良い手だ。
リミテッドスリップ・デフの装着も可能。ステアリングフィールが改善され、アンダーステアが抑えられる。検討したいモディファイの1つ。
サスペンションとステアリング
オリジナルのショーワ社製ショックアブソーバーはへたりやすい。多くが交換済みだろう。アライメント調整のボルトが固着することがある。日本仕様のアンチロールバーは硬く、コーナリングレスポンスが向上する。
ボディとシャシー
サイドシルやリアのフェンダーアーチがサビている場合、その内側にもっと酷い被害が広がっている可能性も。板金修理で修理は可能。フェイスリフト後のEP3型は特に、フェンダーアーチ内に水分を含みやすい防音材が入っていて錆びがち。
ヘッドライトのクリアレンズは濁る。艶を失ったホイールは再塗装で輝きを取り戻せる。赤色のボディは退色しやすいが、磨けば復元できる。
インテリア
オプションは限られていた。英国にはエアコンレスも流通しているが、エアコン付きを探す価値はある。フロントシートは摩耗しやすいものの、交換用シートは見つけやすい。
快適なレカロシートに赤い内装と、プライバシーガラスが与えられた30thアニバーサーリーが英国では販売された。フェイスリフト後には、レザー巻のモモ社製ステアリングが付くプレミア・エディションも出ている。
知っておくべきこと
悲しいかな触媒の盗難が英国では多く、部品の供給は充分ではない。外されてしまったクルマをもとに戻すには、英国では1000ポンド(15万円)ほど必要で、諦めてサーキット走行専用に回される例もある。
車検を通すには触媒は不可欠。外れている場合は、抜けた良い音がする。盗まれないために、クルマの保管場所などは気をつけたい。
英国ではいくら払うべき?
1500ポンド(23万円)~2999ポンド(45万円)
事故歴があるか、どこかが故障しているEP3型。改造され、サーキット走行専用になったEP3も英国では見つかる。
3000ポンド(46万円)~4999ポンド(76万円)
フェイスリフト前後に関わらず、走行距離が16万km以上のEP3型が英国では出てくる。
5000ポンド(77万円)~6999ポンド(106万円)
走行距離が比較的短く、車検も残っている例が多くなる。整備履歴などの心配は減る。
7000ポンド(107万円)以上
特別仕様車や、日本からの並行輸入のEP3型が英国では見つかる。中には、専門ショップが仕上げたサーキット・マシンも。
英国で掘り出し物を発見
ホンダ・シビック・タイプR(EP3型) 登録:2005年 走行:13万1900km 価格:5999ポンド(92万円)
かなり状態の良いプレミア・エディション。アンダーシールは施工されたばかりで、車検は1年残っている。消耗品は交換済みで、歓迎できる内容のモディファイもわずかに施されている。
ただし、タイミングチェーンの交換には触れられていない。走行距離を考えれば、必ず事前に確かめたいところだ。
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