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ハイパーカーとの差の“追加調整”の可能性と、開幕直前の仕様変更をLMP2タイヤサプライヤーが明かす/WEC

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ハイパーカーとの差の“追加調整”の可能性と、開幕直前の仕様変更をLMP2タイヤサプライヤーが明かす/WEC

 WEC世界耐久選手権のLMP2クラスに今季からタイヤを独占供給しているグッドイヤー。その耐久レースプログラムのマネジャーは、最高峰カテゴリー『ハイパーカー』クラスとの速度差を設けるためLMP2クラスのマシンに施されているパフォーマンス調整に関して、ACOフランス西部自動車クラブのアプローチは「最良の妥協」であると述べている。

 WECとELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズのオーガナイザーは、現在ハイパーカークラスにおけるタイヤ独占供給権を保持しているミシュランとの競合を経て、2021年から3シーズンの契約でグッドイヤーをLMP2の公式タイヤサプライヤーとして選択している。

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 以来グッドイヤーは、2017年から投入されている現行LMP2車両と、前規則のLMP1時代よりも遅くなった新規トップカテゴリーとの間における適切な速度差の設定、いわゆる『階層化』と呼ばれるプロセスに関与している。

 この階層化には、LMP2のパフォーマンス抑制に関するふたつの段階があった。ひとつは2019年末に定められていたもので、もうひとつは今季のWEC開幕1カ月前になって変更されたものだ。この最新の変更により、LMP2の最低重量は20kg増加して950kgとなり、出力は20kW削減された。さらにはローダウンフォース仕様のエアロキットの使用が義務付けられている。

 これらの調整に加え、シーズン前のテストにおけるチームからのフィードバックに基づき、当初の意図とは異なるスペックのスリックタイヤへの変更も行なわれていた。

 グッドイヤーの耐久レースプロジェクトを統括するマイク・マクレガーは、これらさまざまな領域を組み合わせたパフォーマンスの抑制が、WECにおける11台のフル参戦車両を含めたこのカテゴリーを管理するための「最も適切な方法」であると信じている。

「非常に優れたカテゴリーがあり、それがとても良く構築されている場合、ドライバーは一定の水準というものに慣れている」とマクレガーはSportscar365に対し語っている。

「これは多くのダウンフォースと充分なグリップ力を備えた、ハイスピードで非常に優れたクルマだ」

「それらのいずれかの要素を犠牲にすると、関わる人々にとっては気に入らないものとなるだろう。とりわけ、多くの予算を費やしているジェントルマンドライバーたちは『私はこの方向に進んできた、なぜ我々は別の方向に向かわなかったのか』と明白に口にしている」

「だが、もし別の点から始めていたら……パワーダウンだけで同じタイヤを履いていたとしたら、彼らは同じように満足できない状況になっていたと思う。卵が先か、鶏が先かという話だ」

「現時点では、ACOが向かうと決定した場所が、おそらく最良の妥協点だ」

「(ACOの競技責任者である)ティエリー・ブーべのインタビューのひとつを読んだが、『(この先のさらなるLMP2への性能調整は)何もしない』と語っていた。これは一致点がどこにあり、両カテゴリーのどこに違いがあるのかを実際に理解できるようになるまでは、もっとも賢明なアプローチだ」

「(開幕戦前に行なわれた公式テストの)プロローグのあとでチームと話をした限りでは、彼らが進んでいる方向については誰もが比較的満足しているように見えた」

■3月のテストの後、急きょ仕様を変更


 グッドイヤーは現在、ACOおよびFIAとともに開幕戦のスパにおけるデータを検証し、WECの残りのシーズンに対して(LMP2タイヤに)改良を加える必要があるかどうかを判断しているという。

 ル・マン・ハイパーカー(LMH)を走らせるトヨタは、スパのレースで勝利を飾ったあと、プロトタイプクラス間のギャップにさらなる注意を払う必要がある、と述べていた。優勝したトヨタGR010ハイブリッドは、LMP2クラス優勝のユナイテッド・オートスポーツに1周差をつけフィニッシュしたが、これをラップダウンするのにレースの半分以上を費やしていた。

 WECの上層部はスパにおいて、LMP2に対するさらなる性能抑制を今年はしないことを明言し、階層化のプロセスの焦点をハイパーカーへと移している。

 ただしマクレガーによれば、グッドイヤーとWECは、それでもなお緊密なパートナーシップの一環として、LMP2タイヤを最適化する方法を評価し続ける準備ができているという。

「我々はタイヤに関して多くの経験を積んでおり、どこに“ウインドウ”があるのかを知っている」とマクレガー。

「だからこそ、我々は(昨年)12月にテストをしたスペックのひとつである、この“Cスペック”タイヤへと回帰したのだ」

「我々はこのレンジの範囲内およびその周辺に、いくつかのコンパウンドを持っている。だから彼ら(WEC)が『(ラップタイム的にLMP2が)いるべきポイントはここだ』と指定するなら、我々はそれについてより詳細な精査を進めることができる」

「ブーべのこれまでのコメントは、『スパのレース後にすべてをレビューする』とすでに話し合った、ということである。スパはハイパーカーにとって初めてのレースであり、抑制されたLMP2マシンがどこまでいけるのか、我々が将来どの方向に進むべきかについて、完全に理解できる機会だった」

「我々は単に何かを提示したり、実行しようとしていることを伝えるだけの存在ではない。真のパートナーシップという面では、WECと一緒にその決定を下す必要がある」

「それは彼らが望むもの、彼らが必要とするものに合ったタイヤでなければいけないし、残りのシーズンのどこかにフィットするものだろう」

 マクレガーはまた、いくつかの変更が加えられたLMP2クラスにおいて今季から役割が拡大するなかで、グッドイヤーのアプローチは敏捷性を示すことができた、と信じている。

 以前に使用されていたコンパウンドと新しい構造を組み合わせた2021年仕様のタイヤは、3月のバルセロナにおける合同テストの後に選択された。

 グッドイヤーはそのテストに3つの異なるスペックを持ち込んだが、チームの受け取り方はまちまちだった。ル・マンにおけるラップタイムで2秒、他のサーキットで1~1.5秒ほどラップタイムが落ちるようにグリップを低下させた設計のタイヤに対し、適応するのが難しいと一部のドライバーは感じていたという。

 その後の分析の結果、まったく異なるスペックが導入されることが決定され、4月下旬のスパでのプロローグテストと開幕戦でWECに投入された。

「チャレンジだったよ。だが、我々はとてもうまくやってきたと思う」とマクレガーは述べている。

「タイヤのスペックを変更しているため、少々複雑ではあった」

「バルセロナテスト後の決定事項を反映してプロローグまでに新たなスペックを用意するため、我々の製造施設とそれを支えている人々はすべてをとても素早く変更し、本当に懸命に働いてくれた」

「このことは、ACOやFIAと緊密に連携してタイヤを供給するために、そのような状況下で我々がどれほど機敏に対応できるかを示していると思う」

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