リチウムイオンバッテリーの正しい扱い方とは
電気自動車(EV)で駆動用として使われるリチウムイオンバッテリーは、電極がどの種類であっても、精密な製造と、使用時の適切な管理と制御が、快適な利用と安全の決め手になる。
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一方、エンジン車からEVまで、すべてのクルマで使われる補器用としての鉛酸バッテリーは、そこまで厳密な取り扱いを意識させられることはなかった。もちろん、バッテリー上がりなどでほかから電気を融通してもらう際など、電極の取り扱いには慎重さが求められ、不用意に正極(+)と負極(-)が接触すると火花が飛び散るなどの危険があるため、気配りは必要だった。
しかし、EVのリチウムイオンバッテリーは、発火や熱膨張といった事故につながる危険性があり、安全の確保には万全の構えが必要だ。同じことは、リチウムイオンバッテリーを使うスマートフォンなどにもいえる。ただEVは、使用する量も電圧もスマートフォンの比ではない。リチウムイオンバッテリーはなぜ、それほど慎重な取り扱いが必要なのか? リチウムイオンバッテリーは、数種類あるバッテリーのなかでも高性能であることから、EVでの爽快な走りや、長距離移動をもたらす。
ここでは、リチウムイオンバッテリーと鉛酸バッテリーの特性を比較してみよう。
1セル当たりの電圧は、リチウムイオンバッテリーが約3.7V(ボルト)とされるのに対し、鉛酸バッテリーは約2Vである。これを6セル組み合わせることで、補器用の12Vバッテリーになる。ディーゼルエンジンの大型車は、始動時により高い電圧を必要とするので、12Vバッテリーをふたつ直列につないで24Vにしている。電圧の面で、リチウムイオンバッテリーは鉛酸バッテリーに対して2倍近く高性能である。
次に、エネルギー密度(Wh/kg)は、リチウムイオンバッテリーが約50~260Wh/kgであるのに対し、鉛酸バッテリーは約25~50Wh/kgである。リチウムイオンバッテリーは2~5倍も大きなエネルギーをもっている。
さらに、過充電になると電極の結晶が崩れることで短絡(ショート)し、熱を持ち、膨張したり発火したりする材料が使われている。そもそも大きなエネルギーをもち、高い電圧を発生するリチウムイオンバッテリーは、慎重に取り扱う必要があるのは当然だ。
ちなみに、マンガン酸やリン酸鉄の電極を使うリチウムイオンバッテリーは、過充電となっても容易に短絡しにくい結晶構造をもつ。
鉛酸バッテリーは、放電し過ぎると再び充電できなくなる懸念はあるが、基本的には満充電で保持するのがよく、比較的安定した特性のため、特別な管理を必要としない扱いやすさがある。保守を意識するなら、数年使った鉛酸バッテリーをさらに長もちさせたければ、一度放電し、そこからゆっくり充電しなおすと、ある程度回復して使い続けることができる。それでも一般的にはそこまで管理を意識することなく、3年前後で交換するのが一般的である。
充電に適切な管理が求められるリチウムイオンバッテリーは、EVでは数百セルを搭載し、これを直列と並列に組み合わせて使用することで、高い電圧で爽快にEVを走らせ、なおかつ並列による容量の確保で長距離移動を可能にしている。
車両に積載された状態での最大電圧は、350Vほどになる。また、容量は軽自動車の20kWhから、大型EVでは100kWh近く搭載する例もある。
1セルの高性能さに加え、組み合わせにより高電圧かつ高容量のリチウムイオンバッテリーを搭載するのだから、充電や放電において管理が必要になるのは当然といえるだろう。
バッテリーは人間のように扱うのがベスト
とはいえ、コンピュータ制御によるきめ細かい管理が行われているため、利用者はそれほど神経質にならなくても快適にEVを利用できる。スマートフォンなどに比べ、EVにまつわるバッテリー事故が圧倒的に少ないのは、そもそも衝突安全なども含め、安全第一で開発・製造される自動車産業の、安全に対する意識と技術、知識などの高さにあるといえるだろう。
リチウムイオンバッテリーを最適に使うには、充電では容量の80%を目安に、放電では20%前後を目安にすると長もちさせることができる。
リチウムイオンバッテリーは、電極間をイオンが移動することで充電と放電を行っており、正極と負極のどちらか一方の電極にイオンが偏り過ぎない状態が望ましい。また、普通充電(200V)を主体に行えば、性能維持に効果がある。500V前後の直流電流による急速充電がいけないわけではないが、普通充電を基本に考えるのがよい。
その扱いは、人間の食事に例えることができる。
普段とる食事は、よく噛んで、腹八分目が健康によいとされる。あまり空腹になると、急いでたくさん食べようとするので消化が悪くなる。普通充電は、それに似ている。急速充電をたとえるなら、早食い競争のようなものだ。イベントなどでたまに挑戦するのはいいが、日々の食事での早食いや食べ過ぎは避けたほうがよい。
人間との比較でさらに付け加えると、リチウムイオンバッテリーの適切な使用温度領域は、人間が快適に暮らせる気温に近いとされる。充電は0~45℃、放電は-20~60℃、保管は0~25℃の範囲がよいとされている。温度幅の両端の値は人間には辛い温度域であるにしても、おおよそ人が暮らせる温度の範囲とみることができるのではないか。
このことから、多くのEVがバッテリーの温度管理に液体を用い、きめ細かい調整を行っている。当初の日産リーフは空冷としていたが、最新のリーフは液体での温度管理に変更されている。ほかにも、寒い季節に急速充電したい場合、充電前にあらかじめバッテリー温度を高めておく制御を用いる車種が増えている。
リチウムイオンバッテリーは、まるで人間のような生き物と接するように扱うと、大きなトラブルは起きず、長く使い続けられるだろう。
ただ、忘れてはならないのは、EVでの役目を終えた「EV卒」のリチウムイオンバッテリーにも、まだ70%ほどの容量が残っているということだ。これを使い切ってこそ、資源の有効活用になる。
そこで、EVの走行性能ばかりに目を向けて新車を開発したり評価したりするのではなく、EVを卒業するときに車体からバッテリーを取り外しやすく、かつ分解可能なケースと組み付け方法で設計することが肝心だ。
車体と一体構造のバッテリーケースは、容量の増加という点では意味があっても、総合的な環境性能という点では不十分だといわざるを得ない。
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みんなのコメント
凄いね
スマホと一緒で劣化してから慌てるだけで、それでもEV車両に乗り続けるなら誰も否定はしない。