アウディスポーツが生み出す「クーペ」は、流麗でありながら猛々しく、しかも凛とした存在感をまとう。理想のGTを実現するために盛り込まれた革新の数々が、揺るぎない自信へとつながっている。(Motor Magazine2021年3月号より)
RSはアウディブランドが目指す究極の姿だ
アウディRSモデルの強い存在感。それは、ベースとなる「A」の姿に適度な「スパイス」を加えることで完成される。たとえばフロントマスクは、RSモデルとしてのアイコンであるグロスブラックのペイントが似合うように、グリル形状が整えられている。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
面白いのはクーペ系のRSでは、アバント系に比べるとややモディファイが「オトナ」に思えることだろう。強大なパフォーマンスを受け止めるファットなタイヤを装着しているが、それをカバーするフェンダーフレアの盛り上がりに唐突感はない。
結果として完成したクーペ系のRSモデルは、アウディが持つ本質的な美しさをいささかも損なっていない。いや、場合によってはさらにバランスが良いのではないだろうか・・・と、さえ感じる。
アウディの本質と言えば、フルタイム4WDシステム「クワトロ」など、フォーリングスを象徴するテクノロジーの数々もまた、RSのために磨き抜かれている。クワトロの可能性を世に知らしめるために、アウディが世界ラリー選手権(WRC)に挑戦した歴史はよく知られているが、それ以外にも彼らはヨーロッパやアメリカのサーキットで開催されるツーリングカーレースに積極的に参戦、数々の栄冠を勝ち取ってきた。
実は、クワトロのあまりの強さにおののいたライバルたちは「ハンディキャップを与えて欲しい」とレース主催者に嘆願。ところが、それを受け入れてもなお圧倒的な強さを誇ったために、最終的にモータースポーツの世界から締め出されていったのは、知る人ぞ知るエピソードである。
オンロードとオフロードの両方で傑出したパフォーマンスを生み出すクワトロは、RSモデルの、ひいてはアウディというブランドが目指す多用途性の象徴ともいうべきテクノロジーである。
同様に、スポーティなハンドリングと快適な乗り心地を両立したシャシ、高性能でありながら柔軟性も備えたエンジンなどについても、アウディというブランドが追求し続けてきたグランドツーリング性能をグレードアップしている。生来の個性を磨き抜いたスタイルの魅力や、独自技術の集大成としての高い完成度・・・RSモデルは、アウディブランドが目指す究極の姿と言えるのだ。
RS5クーペのデザインは、2ドアプレミアムGTのお手本と言ってもいい。アウディらしい端正な表情とRSモデルの特徴である力強さが織りなすRS5クーペのプロポーションは、まるで狩りのさなかに獲物を狙って低く身構えるネコ科の猛獣にも似た、気品溢れるしなやかさと躍動美を全身で表現している。強い存在感をことさらアピールするわけではない。抑えきれず内から滲み出る野性=スポーティ感こそ、RSモデルの真骨頂と言えるだろう。
乗り始めてすぐに感じたのは、最高出力450psを生み出すV6ユニットが響かせる快音だった。その音色は純度が高く、回転数と歩調を合わせるようにエキゾーストノートの音程も上下する。これはエンジンブロックなどが共振して起きる定在波がシャットアウトされている証拠で、それだけていねいに作り込まれていることを意味する。フェラーリの澄んだエンジン音と、基本的に同じ原理だ。
そこでアウディスポーツは、この抜けのいい快音を積極的にキャビンにも伝えることを思いついたようだ。その音量は決して過大ではないが、クルージング時を除くと常に耳を楽しませてくれるレベル。さらに峠を走る時には、この音色とドライビングがシンクロして、鼓動がほんの少しだけ速くなるような快感が得られることだろう。
もちろん、このエンジンの魅力はサウンドだけではない。アクセルペダルにかすかに力を込めただけでも弾けるように反応するレスポンスの鋭さには目を見張らされるし、そこからペダルを踏み続ければ6800rpmのレブリミットまで即座に、そして淀みなく到達する回転バランスの良さにも圧倒されるはず。450psと600Nmのパフォーマンスは1750kgの車重に対して十分以上で、本国発表によれば0→100km/h加速はなんと3.9秒でクリアしてしまう俊足の持ち主でもある。
サーキットスピードでも優れたトラクションをお発揮
ハンドリングも2ドアクーペらしく軽快そのもの。このRS5クーペを富士スピードウェイで試乗したことがあるが、ターンインではナチュラルな反応を示すいっぽうで、コーナーの立ち上がりではクワトロを利して強力なトラクションを発揮し、脱兎のごとく加速していく。
そのストレスを感じさせない安定感あふれる走りは、レーシングドライバーでさえトリコにしてしまう。私の知り合いにはアウディ好きのレーシングドライバー(それも世界的に有名な・・・)が少なくないが、彼らもこのスタビリティの高さに魅了されるようだ。
乗り心地はやや硬めながらゴツゴツ感が決して不快に思えないのは、タイヤやサスペンションなどをていねいにチューニングした恩恵だろう。前述した軽いエンジン音を除けばロードノイズなども意外に小さいので、長距離ドライブは得意科目のひとつだ。今回も取材先から帰る200km近い道のりを、まったく退屈することなく一気に走り抜けられたのも、RS5クーペのロングクルーザーとしての資質を物語っているように思う。
RS5クーペに比べると、RS7スポーツバックははるかに重厚で、そこはかとない威厳をたたえている。ルックスだけでなく、走りの印象でも同様だ。その魅力を支えているのが、先代から見違えるような進化を果たしたDRC(ダイナミック ライドコントロール)である。対角線上にあるダンパーの油圧経路を連結して無駄なロールやピッチングを抑え込むDRCが、RS7のどっしりとした乗り心地を生み出すのに貢献しているのは間違いない。
従来型ではハンドリング向上に特化するあまり、快適性はけっして良好とは言えなかった。ところが最新世代はエアサスペンションと勘違いしてしまうほど優しい。しかも、適度なしなやかさが加わったことでロードホールディング性が向上、路面が荒れたワインディングロードでも安定した姿勢が保たれ、より安心してコーナーを攻められるようになった。
威厳溢れる走りを支えるもうひとつの要素が600psと800Nmを生み出す4L V8ツインターボエンジンである。その回転フィールはV8らしく、どこまでも滑らか。しかも、RS5と違ってゆっくりと走っている時はエンジン音がほとんど聞こえない。おかげで、RS7の広々としたキャビンで寛いでいると、自分が正統派のサルーンに乗っているかのような錯覚をしてしまう。
スロットルペダルをぐっと踏み込んだ時の反応も、V6エンジンを積むRS5の弾けるような感触とは明らかに異なる。もちろん、一切のターボラグを感じさせることなく、踏めば直ちに加速を開始するのだが、加速度の立ち上がり方が実に滑らかなのだ。
そのままアクセルペダルを踏み続ければ、RS7のV8エンジンは完璧なスムーズさを保ったままレッドゾーンまで突き進んでいくが、その圧倒的な加速感もなぜか優雅と思わせてしまうあたりに、RS7のプレステージ性が表れているように思う。
荷室空間のゆとりはRS6アバントにも匹敵
流れるように美しいファストバックのルーフラインを持つRS7だが、アウディスポーツバックの伝統にのっとり、そのスペースユーティリティは極めて高い。たとえば、身長171cmの私が後席に腰掛けても頭上にはまだ6cmほどの空間が残っているほか、ひざまわりと前席の間にも20cmを優に越す余裕があった。しかもラゲッジルームは535Lの大容量。これはRS6アバントより30L少ないだけだというのだから、驚かずにはいられない。
したがってロングクルージングはお手のもの。そのあり余るパフォーマンスがドライバーに自信と余裕を与え、普段よりもむしろゆっくりと走りたくなるのだから不思議なものだ。ある夜のこと、人影まばらな高速道路を流していると、対向車や前走車が現れるたびにアダプティブハイビームを備えたLEDマトリクスヘッドライトがストロボライトのように明滅し、暗闇の中に巨大な光のページェントを描き出した。そのとき、私は心の中で「このまま夜通し走り続けたい」とひとり呟いていた。
ところで「RS」の歴史は、RS2アバントから始まった。そのため、スポーツ性とともに多用途性を兼ね備えていることがその大きな特徴となっている。つまりクーペというカタチはある意味で、異端的存在と言えるかもしれない。
しかし、ここでひとつ付け加えておきたい。それはアウディのクーペがけっして、なんらかの我慢を強いるものではない、ということだ。「狭く、使い勝手が悪いカタチ」というクーペに対する思い込みは、忘れて欲しい。もちろん、絶対的なスペースユーティリティはセダンやアバントにはかなわない。けれどアウディの巧みなデザインワークは、そのネガティブを巧みに抑えている。事実、RS5とRS7の後席は、オトナでも十分腰掛けられるほど実用的だ。
実は今回の取材でも男性3人が1台に乗り込み、200kmほどを移動する機会があった。トランクには3人分×一泊二日の旅支度とともに脚立、三脚を含む撮影機材を満載。それも2ドアのRS5クーペに、である。もちろん後席片側は荷物置き場にはなったけれど、それなりに取材旅行を満喫することができたことは、ある意味驚きだった。
快適な乗り心地とともに上質感を高めたインテリア
そうした実用性の高さは乗り心地や静粛性にも貫かれていて、おかげで普段遣いからロングツーリングまでさまざまなシーンでしっかり使うことができる。今回、2台の「クーペ」をテストドライブしてみたことで、とりわけ最新世代のRSモデルは、その傾向が強まっていることが確認できた。
上質な素材を使ってていねいに作り込まれた、インテリアの魅力についても触れておこう。カーボンコンポジットのフェイシアやスポーツシートに施されたハニカムパターンのステッチなどが、スポーティな味わいを表現している。
だがキャビン全体を覆っているのは知的で緻密なアウディの「世界観」にほかならない。そのセンスの良さに、私は強い共感を覚えたのだった。美しくてスポーティ、グランドツアラーとしての才能にも恵まれたクーペとは、なんと贅沢で充実した時間を与えてくれるのか・・・。
長い時間、さまざまなシチュエーションでじっくり付き合ってみたからこそ、アウディというブランドが与えた天賦の才が確かに、光り輝いて見えた。(文:大谷達也/写真:小平 寛・井上雅行)
アウディRS5クーペ主要諸元
●全長×全幅×全高:4715×1860×1365mm
●ホイールベース:2765mm
●車両重量:1750kg
●エンジン:V6 DOHCツインターボ
●総排気量:2893cc
●最高出力:331kW(450ps)/5700-6700rpm
●最大トルク:600Nm/1900-5000rpm
●トランスミッション:8速AT(ティプトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・58L
●WLTCモード燃費:7.6km/L
●タイヤサイズ:275/30R20
●車両価格(税込):1340万円
アウディRS7スポーツバック主要諸元
●全長×全幅×全高:5010×1960×14155mm
●ホイールベース:2925mm
●車両重量:2170kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●総排気量:3996cc
●最高出力:441kW(600ps)/6000-6250rpm
●最大トルク:800Nm/2050-4500rpm
●トランスミッション:8速AT(ティプトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・73L
●WLTCモード燃費:9.9km/L
●タイヤサイズ:275/35R21
●車両価格(税込):1799万円
[ アルバム : アウディRS5クーペ/RS7スポーツバック はオリジナルサイトでご覧ください ]
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