現存は106台 史上初のハイパーカー
数世紀に渡る自動車史で、史上最高のロードカーはどれだろう。数多くの名車が作られてきたが、技術力と設計力で1990年代を代表する1台といえば、マクラーレンF1だろう。どの年代の最高傑作と比べても、その崇高さは劣らない。
【画像】史上最高のロードカー マクラーレンF1 ゴードン・マレーのT.50 スピードテールにアルトゥーラも 全109枚
レーシングカーやプロトタイプを含めても、現存するF1は106台しかない。マクラーレンのカリスマは、仮に大富豪のカーマニアであっても、購入できる機会はもちろん、実際に目撃することすら簡単ではない。
しかし、短い人生は何が起きるかわからない。キャリーオーバーが溜まった宝くじが当たったり、遠い親戚から2000万ポンド(約39億円)の遺産が舞い込んでくる可能性も、完全なゼロではないはず。いつかに備えて、知識を持っておくことは悪くない。
F1の開発を率いたのは、ゴードン・マレー氏とピーター・スティーブンス氏という、ゴールデンコンビ。発売は1992年で、スーパーカーを超越した、史上初のハイパーカーといって良かった。
その2年後、AUTOCARへ試乗機会が到来し、詳細データテストを実施している。この時に残された記録は、マクラーレンにも公式なスペックとして利用していただいている。
0-97km/h加速は3.2秒で、0-161km/h加速は6.3秒、0-241km/h加速は12.8秒を達成。最高速度は370km/h以上だった。当時としても世界を塗り替えるような数字だったが、今でも殆どのスーパーカーを凌駕する速さだ。
エンジンは6.1L V12 NA 信頼性は極めて高い
ミドシップされるエンジンは、自然吸気の6064ccV型12気筒。マレーによる依頼を受けてBMWが製造したユニットで、最高出力は636ps、最大トルクは66.3kg-mを誇る。
もとレーシングドライバーのレイ・ベルム氏の話では、本格的なル・マン・レーサーを彷彿とさせる驚異的な速さと音響を叶えつつも、信頼性は極めて高いとか。彼は1994年に、シャシー番号46のオーナーになっている。
その頃マクラーレンのCEOだったロン・デニス氏へ、ベルムは直訴。サーキット仕様のF1を要望し、F1 GTRが作られるきっかけを生んだ。「自分はこれまで5台のF1を所有してきましたが、いずれも完成度は高く、整備上での問題はありませんでした」
「レーシングカー仕様は、トラブルでエンジンの載せ替えが必要になり、当時で8万ポンド支払いました。今なら、100万ポンド(約1億9500万円)程度はかかるでしょうね」。ベルムが笑顔で教えてくれた。
ちなみに、クラッチ交換だけでも数万ポンド(数100万円)は必要とのこと。軽量なケブラー製ガソリンタンクは、5年毎の交換が求められているが、作業にはエンジンを下ろす必要がある。もちろん、簡単なことではない。
実用性も悪くない 普通のクルマのように乗りたい?
売りに出される機会も、滅多に来ない。マクラーレンF1オーナーズクラブを創設したベルムによると、稀にオークションへ出品されるものの、殆どは非公開で落札されるという。「それでも昨年は、数台のクルマが売買されています」
「初代のオーナーが70歳代になり、最近はそれなりの数が流通し始めています。自分は2004年にシャシー番号16のF1を、35万ポンドで落札しました。当時は、そこまで高くなかったんです。しかし2011年頃から、相場の高騰が始まっています」
軽量なカーボンファイバー製シャシーによって、F1の運転体験は他に例がない。常識を打ち破った、左右に助手席が並ぶ3シーター構成は、深い陶酔感を生む。運転姿勢は完璧といえ、スリムなリムのステアリングホイールは握りやすい。
運転席へ座れば、足もとの正面に3枚のペダル。太ももの両脇には、スイッチ類が整列している。ハイパーカーとして、実用性も悪くはない。ドライバーの他に2名の家族や友人を乗せられ、ドアの後方には小さくない収納も設けられている。
一生に1度は乗りたい、と願いたいところだが、最近のお値段は2000万ポンド(約39億円)以上。F1 GTRは、3000万ポンド(約58億5000万円)を下らない。
「もし購入したら、普通のクルマのように乗るのが正解だと思います。ガレージへ仕舞い込んだり、博物館で展示するだけなんて、所有する意味がありませんよね?」。ベルムらしいアドバイスだ。
新車時代のAUTOCARの評価は?
マクラーレンF1は、公道を走るために作られた最高のドライバーズカーだといえる。ル・マン24時間レースへ出場するような、殆どのレーシングカーより走行性能は優れるが、それはこの徹底的なマシンの偉業の1つの側面でしかない。
F1は、常にドライバーを高ぶらせつつ、圧倒しないマシンといえる。自動車史における偉大な1台として、深く刻まれると確信している。もし54万ポンドの予算を準備できるなら、自分も注文する行列へ加わるはず。(1994年5月11日)
オーナーの意見を聞いてみる
レイ・ベルム氏
「1992年のモナコでの発表イベント直後に、シャシー番号46を注文しました。レーシングカーへ改造してもらう計画で。ロン・デニスさんには断られましたが。しかし、100万ポンドでワンオフのレーシングカーを作っても良いと、提案されました」
「そんな大金はありませんでしたが、レーシングカーを希望する人を他に3名探したら、税抜き65万ポンドでも構わないとのこと。自分は2人の希望者を探し出しました。そのクルマはロードカーと同時に納車されたので、当時はF1を2台所有していたんです」
購入時に気をつけたいポイント
トランスミッション
6速MTは、636psのV12エンジンを許容する耐久性を備えるものの、負荷は小さくない。滑らかに変速できるか確かめたい。クラッチはカーボンファイバー製。信頼性が高いとはいえ、若干滑りやすい。交換には数万ポンド(数100万円)が必要になる。
ブレーキ
標準のパッドとディスクは高性能。パッドは、2万4000km毎の交換が指定されている。マクラーレンのクラシックカー部門、MSOヘリテイジはパッド素材の改良を重ねており、最新アイテムはペダルの感触に優れるという。
定期メンテナンス
MSOヘリテイジによる点検整備は綿密で、合計85時間を要する。エンジンを降ろし、燃料タンクやホース、消耗品が一式交換される。またエンジンやトランスミッション、サスペンション、補機類はオーバーホールされる。ダンパーは、10年毎に交換とのこと。
作業が終わると、グレートブリテン島中南部のミルブルック自動車試験場へ持ち込まれ、走行テストを実施。作業終了の承認が行われる。
ボディとインテリア
カーボン製ボディに擦り傷などがないか、丁寧に観察したい。シャシーも含めて、修理には想像以上の費用が必要になる。
エンジンルーム内には、熱を反射しボディパネルを保護する目的で、金箔が貼られている。整備の際に交換されることが一般的。貼り直すのに、18時間程度は必要とのこと。
中央の運転席のサイドボルスターは、乗降時に身体が当たりすり減りがち。
知っておくべきこと
横に3列並んだシートの中央に、運転席がある。ドアからは遠い位置で、スムーズな乗り降りには練習が必要といえる。
英国や日本では左側のドアを開き、助手席へ一度腰を下ろし、右足を運転席側へスライド。腕で身体を持ち上げつつ、左足もペダル側へ移動し、腰から運転席へ座るという方法が一般的だという。慣れれば簡単かもしれない。
F1を落札する場合は、純正のツールボックスとサービスマニュアルがセットになった、レザーケースが付帯することを確かめたい。貴重なアイテムだ。
純正のガソリンタンクはケブラー製だが、英国のランザンテ・モータースポーツ社は、アルミニウム製のタンクを開発している。これなら、5年毎の交換は不要。採用を前向きに考えて良いだろう。
英国ではいくら払うべき?
1万7000ポンド(約332万円)以下
マクラーレンF1で現実的なのは、ミニカー。ホットホイールなら数ポンド(数100円)で探せるが、職人がハンドメイドするアマルガム社製のスケールモデルは絶品。1/8スケールで、芸術品のように精巧に出来ている。
1500万ポンド(約29億2500万円)~2499万ポンド(約48億7499万円)
本物のF1の交渉権を得られる価格帯。年式や走行距離によって落札額には幅がある。状態もまちまちだ。
2500万ポンド(約48億7500万円)以上
走行距離の短い、極上状態のF1がご希望ならこの価格帯から。幸運なら、珍しいF1 GTRも狙えるだろう。
英国で掘り出し物は発見できず
シャシー番号29のF1は、2024年5月に非公開で落札されているが、執筆時に出品中のF1は英国に存在しなかった。2021年には、走行距離400kmの1台が1482万5000ポンド(約28億9088万円)で落札されているが、最近の相場は上昇中。
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