トヨタ アルファードが売れに売れている。2020年の年間販売台数は9万748台。
登録車の販売ランキングではトヨタ ヤリス、トヨタ ライズ、トヨタ カローラ、そしてホンダ フィットに次ぐ5位となり、堂々のミニバントップに輝いた(余談だがフィット以外の4台がトヨタ車というのも凄いことだ)。
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前年(2019年)のアルファードの販売台数は6万8705台で、2020年の対前年比は132.1%と驚くべき伸びなのだが、そこには理由もある。
兄弟車のヴェルファイアの販売状況だ。2019年に3万6649台を販売したヴェルファイアだが、2020年は1万8004台へとダウンしているのである(対前年比49.1%)。
2台を合計すると、2019年の10万5354に対し、2020年は10万8752台。つまり2台をあわせて考えると、2019年から2020年に関してはほぼ横ばい(微増)で安定しているといえる。
ただ、アルファードとヴェルファイアの販売比率には大きな変化が生じたというわけだ。その背景には何があるのだろうか。
文/工藤貴宏、写真/池之平昌信、中里慎一郎
【画像ギャラリー】顔で大きく差別化!? 絶好調アルファードとヴェルファイア 姉妹車を比較
電動化の時代にアルファードのガソリン車比率は8割!?
2020年4月以降のトヨタ販売店全車種販売を開始後、販売台数を順調に伸ばしていった。年間販売台数は9万748台と、ミニバンのカテゴリーでトップを飾った
考えられるのはひとつ、2020年4月から全国のトヨタ販売店で全車種扱いがスタートしたことだ。それまで、アルファードは「トヨペット店」、ヴェルファイア(前身は「アルファードV」は「ネッツ店」だけで販売されていた。
しかし、2020年4月以降は、全国に約5000あるトヨタ販売店のすべてでアルファードとヴェルファイアが購入可能となり、その結果としてアルファードがより多くの消費者から選ばれるようになったのである。
いずれにせよ、350万円以上するミニバンが年間10万台以上売れるのだから、凄いことだ。
アルファードの販売実績をみると、ハイブリット車よりもガソリン車のほうが多く売れていたことがわかった。販売台数のうち、8割はガソリン車だという
そんなアルファードだが、販売実績をみると興味深い現象がある。これだけハイブリッドがもてはやされている時代にもかかわらず、ガソリン車の比率が高いのだ。
アルファードは「2.5L 直4ガソリンエンジン」、「3.5L V6ガソリンエンジン」、そして「2.5L直4ガソリンエンジン+モーターのハイブリッド」と3つのパワートレインがあるが、ガソリン車が全体の8割以上。ハイブリッドは残り2割未満しかないのだ。ヴェルファイアの統計を見ても同様だ。
同じトヨタ高級車でも、セダンのクラウンは約8割がハイブリッド。アルファードとまるで逆になっている。世の中の傾向をみるとアルファードもハイブリッドが売れてもおかしくなないのだが、そうではないのだから不思議だ。理由はどこにあるのだろうか?
HVは4WDだけ! ガソリン車は2種のエンジンを用意
状況を理解するために、まずアルファードで展開している3つのパワートレインについておさらいしておこう。
ハイブリッドは、最高出力152psの直4エンジンに前後あわせて211psのモーターを搭載。ガソリンはレギュラーで駆動方式は4WDだけの設定になっている。
燃費がいいのに加えて、停止からの発進もエンジンを掛けずにモーターでおこなうから静かで微振動もなく快適。価格は454万7000円からだ。
アルファードには「2.5L 直4ガソリンエンジン」、「3.5L V6ガソリンエンジン」のガソリン車が用意されている。直4エンジンのほうがコストパフォーマンスが最も高い
V6ガソリン車は、301psというガソリンエンジンのパフォーマンスが魅力。マルチシリンダーならではの軽快な音と滑らかなフィーリングも楽しめる。
また直4エンジンに比べると振動も少ないので、ハイブリッドには届かないが乗員にとっても快適だ。ガソリンはハイオクで、駆動方式はFFと4WDが選択できる。
燃費はWLTCモードで9.9km/Lからとすぐれないが、パワートレインのエモーショナル感を求めるなら、V6ガソリンがイチオシだ。価格は518万5000円からと直4に比べて高い。
直4エンジンは182psでガソリンはレギュラー。駆動方式はFFと4WDが選べ、価格は352万円からだ。最もコストパフォーマンスが高い選択肢である。
なぜアルファードはガソリン車が圧倒的に売れるのか
エンジンごとの販売比率を比較すると、直4モデル 6万9000台(V6モデルはわずか4500台)と売れている。リーズナブルなパワートレーンを選択した顧客が多いとみられる
さて、本題のガソリン車が売れている理由を探ってみよう。そのヒントはエンジンごとの販売比率にある。2020年の販売実績をみると、直4モデルは6万9000台。対してV6モデルはわずか4500台。圧倒的に直4を選ぶ人が多いのである。
つまりどういうことか。価格帯が安いパワートレインが売れていることにほかならない。具体的な価格差を見てみよう。中間グレードの「G」(V6モデルは「GF」)同士で比べてみると、直4モデルは453万9000円から。V6モデルは518万5000円から。そしてハイブリッドは534万4000円となる。
同等のグレード同士でみると、直4モデルに対してV6モデルは約65万円高く、ハイブリッドはさらに15万円以上(直4ガソリンに対して約80万円)高い。その価格差が直4ガソリンモデルの人気に結びついていると判断するのが、どう考えても自然だ。
ハイブリッドはFFの設定がないので、「4WDはいらない」と考えた人も一定数は存在するだろう。しかし多くの人は、なによりもリーズナブルなパワートレインを選んだに違いない。
その結果、「ハイブリッドではなくガソリン車が売れている」という時代の流れとは異なる状況が生まれているのである。
トヨタ高級車であるクラウンは、アルファードと真逆でハイブリット車のほうが、ガソリン車よりも断然売れているという
もちろん、クラウンでもハイブリッドがガソリン車より高いのだが、それにもかかわらずハイブリッドのほうが断然多く売れている。アルファードとの違いは、懐事情に余裕をもってそのクルマを選んでいるかどうかの違いだろう。
アルファードも充分に高額車であり、購入にはそれなりの負担が必要だが、クラウンを選ぶユーザーは車両代に対して懐事情にさらに余裕を持つ人が多いということである。
余談だが、その違いはヤリス(ハッチバック)とヤリスクロスにも生じている。ヤリスのハイブリッド比率は約46%だが、ヤリスクロスでは約61%と高まる。これも両車の購入層の違いゆえの結果に他ならない。
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