2022年の全日本ラリー選手権第4戦「丹後ラリー」が5月20日~5月21日、京都府京丹後市を舞台に開催。この一戦を制したのは、シュコダ・ファビアR5を駆るヘイキ・コバライネンだった。「久万高原ラリーでリタイアした後、エサペッカ・ラッピと話をしたら、“グラベルでは限界が来てもコントロールできるけれど、ターマックではゲームオーバーだから、マージングが少なすぎるんじゃないか”と言われてね。だから、今回はセーブしがらも速く走れるように改善していた」と語るように、コバライネンはコンスタントな走りを披露。その結果、コバライネンが後続に45秒の差をつけて今季3勝目を獲得した。
こうしてリベンジを果たしたコバライネンだが、前述のとおり、前戦の久万高原ラリーではレグ1でリアサイドをウォールにヒットし、サスペンションを破損してリタイアしていた。その際に右のリヤフェンダーを失っていたのだが、空力的に影響はなかったのだろうか? そもそもラリーカーのエアロダイナミクスはマシンのパフォーマンスにどれくらいの影響を与えるのだろうか?
■今季導入の性能調整、コバライネンにあまり影響なし。ファンにもより魅力的な調整が必要?|全日本ラリー第3戦
「フォーミュラカーやスーパーGTカーならエアロダイナミクスにダメージを受けると走ることは難しいけど、ラリーカーではエアロダイナミクスを破損しても走れるし、実際に久万高原ラリーでリヤフェンダーを壊してからも大きな影響はなかった。もっと速いステージなら影響した可能性はあるけれど、日本のラリーは中低速コーナーが中心だから空力の与える影響は少ないと思う」とコバライネン。
さらに「フォーミュラカーやスーパーGTの空力はとても重要で、フロア下やウイングはセンシティブにクルマのパフォーマンスに影響を与えるよ。それと同じようにWRCのラリー1に関しても空力が与える影響は大きいと思う。グラベルではあまり影響しないと思うけれど、ターマックではエアロダイナミクスが一定の役割を担っていると思うし、リヤウイングにダメージを受けるとクルマの動きは不安定になるんじゃないかな」とのことだ。
確かにWRCのラリー1ではエアロダイナミクスの重要性が指摘されており、グラベルラリーでは、しばしば巻き上げられたダストが、リヤウイングで整流されるシーンが見られるだけに、WRCの高速ステージではエアロダイナミクスがパフォーマンスを左右するのだろう。一方で、コバライネンが指摘したように全日本ラリー選手権のSSはストップ&ゴーの中低速コーナーが中心となっていることから、空力の影響は少ないのかもしれない。
とはいえ、2021年よりそれまでの三菱ランサーからトヨタGRヤリスにスイッチした奴田原文雄はシーズン途中にリヤウイングを装着したが、「リヤウイングを付けたら、リヤが安定してアンダーステアが強くなりました。だから、それに合わせて足回りのセッティングを変えたんですけど、それぐらい中速コーナーでリヤウイングの効果はあると思います」とのこと。
さらにスバルWRXを駆る新井敏弘も角度調整が可能なリヤウイングを装着しているが、「普段はリヤを抑えるためにダウンフォースをつけているけれど、ラリー北海道では最高速を上げるためにウイングを寝かせている。体感では分からないけれど、データを見ると車速に影響している」とのことで、イベントのキャラクターに合わせて空力のセットアップを変更しているようだ。
つまり、全日本ラリー選手権といえども、エアロダイナミクスは一定の効果を発揮しているようで、それゆえに、リヤウイングの装着が認められているJN1クラスの国内規定モデル、RJ車両ではトヨタGRヤリス、スバルWRXともにアフターパーツのリヤウイングを装着しているのである。
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