Lamborghini Silhouette
ランボルギーニ シルエット
20世紀最後のスモール・ランボ「ジャルパ」(1981)【ランボルギーニ ヒストリー】
ウラッコの販売不調とフェルッチオの退任
コンパクトなV型8気筒エンジンをミッドシップした2+2モデル。ポルシェ911の成功を手本としたフェルッチオの次なる戦略は、ウラッコとして現実のものになるが、そのセールスは残念ながら大きな成功を収めることはなかった。
フェルッチオはこのウラッコで、アメリカ市場を開拓することにも積極的な姿勢を見せており、1973年にファーストモデルとなったP250 ウラッコの生産が開始されると、アメリカ市場向けとなるP111を別個に開発するまでに至っていた。P111は当時のアメリカにおける厳しい排出ガス規制をクリアするために、ミッドの2.5リッターエンジンの最高出力は180psにまで抑えられ、外観では5マイルバンパーや前後フェンダーにフィットされたサイド・リフレクターなど、当時アメリカに輸出されたヨーロッパ車の典型的なディテールを持つモデルに仕上げられていた。
しかし、実際に販売されたP111 ウラッコの台数は、わずかに21台とされており、この時代はまだまだランボルギーニのみならず、ヨーロッパの高性能車にとって、アメリカ市場の壁は高かったことを、この数字は物語っている。
そしてウラッコの生産途中では、ランボルギーニ社の経営体制も大きく変化し、フェルッチオ・ランボルギーニは経営から完全に撤退。新たなオーナーとなったジョルジュ・アンリ・ロセッティのもと、チーフ・エンジニアの職はフランコ・バラルディーニが担うことになった。これまでフェルッチオからその職を委ねられていたパオロ・スタンツァーニ、そして創業直後からテストドライバーとして、またメカニックとして活躍してきたボブ・ウォーレスなどは、この新体制に反旗を翻し前後してランボルギーニを去っていった。
商品力を改善して誕生した「シルエット」
ロセッティがバラルディーニにまず命じたのは、P300 ウラッコの商品力をさらに高めることだった。そのために考えられたのが、よりスタイリッシュなデザインをもつニューモデルへとウラッコを進化させることだった。そうして誕生するのが「シルエット」である。
バラルディーニはまず、ウラッコの特徴でもあった2+2のキャビンを2シーターへと変更。ルーフをデタッチャブル方式とすることを決断し、それをベルトーネのマルッチェロ・ガンディーニへと伝える。ガンディーニはそのリクエストをもとに、前後フェンダーにフットワークの力強さをイメージさせるかのようなオーバーフェンダーを与えたほか、ブラックアウトされた水平のリアフード、そしてトンネルバックのスタイルを採用。フロントスポイラーもさらにスポーティなデザインへと改めた。
ちなみにリボルバータイプのホイールは、1974年にベルトーネがコンセプトカーのブラーボで採用したもので、これは後にランボルギーニを象徴するホイールのデザインとも語られるようになる。
広範囲に及ぶシャシーチューニング
メカニズム面では、P300 ウラッコから最高出力が260psへと10ps向上したほかは大きな変化はないが、一方でシャシーのチューニングは広範囲に及んでいる。スプリングやダンパー、スタビライザーのチューニングはすべてシルエットのために見直され、ジオメトリーも改められた。タイヤは前後とも15インチ径のピレリ製P7を装着していた。
インテリアも同様に、さらに機能的で実用性の高いデザインに一新され、リアシートがなくなったことで、フロントシートはバックレストが固定式のバケットタイプが新たに装備されることになった。
1976年にデビューを飾るものの、結果は・・・
シルエットが正式に発表されたのは、1976年のジュネーブ・ショーでのこと。参考までに車名の由来は、この年から世界選手権を戦うことになったグループ5マシン、すなわちシルエット・フォーミュラのように、派手なディテールをエクステリアで採用したからであったという。
シルエットは1979年まで生産が続けられ、トータルで53台がサンタアガタ・ボロネーゼの本社工場を後にしている。
【SPECIFICATIONS】
ランボルギーニ シルエット
発表:1976年
エンジン:90度V型8気筒DOHC
総排気量:2995.8cc
圧縮比:10.0
最高出力:191kW(260ps)/7500rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1375kg
最高速度:260km/h
解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
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