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アルピーヌF1は、トヨタWRCから学ぶべき? チーム代表代行も務めた豊田章男会長の情熱的アプローチ

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アルピーヌF1は、トヨタWRCから学ぶべき? チーム代表代行も務めた豊田章男会長の情熱的アプローチ

 アルピーヌF1チームは、シーズン前半を終えたところでチーム代表を含めた幹部がチームを離れる事態に直面した。これにより、モータースポーツ・プログラムの運営における自動車メーカーの関与が注目を集めている。

 前身であるルノーを含め、このチームは10年間で7人がチーム代表を務めており、専門家でなくともこれが成功を目指す上で役に立たないことは分かるだろう。

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 もしかしたらアルピーヌは、トヨタがどのようにWRCに取り組んできたかということ、世界的大企業のポスである豊田章男会長の情熱的かつユニークなチーム運営から、多くを学ぶことができるかもしれない。

 2017年に17年ぶりにWRCに復帰して以来、トヨタは3度のWRCマニュファクチャラーズタイトル(2020~2022年)と4度のドライバーズタイトル(2019~2022年)を獲得している。この成功を語る上で、豊田会長の信条はシンプルだが、大いに役立つ。

「物事が起きている場所に最も近いところにいる人たちが、最もよく知っているのだから、最もよく知っている人たちに自分の仕事をさせるべきだと思います」と豊田会長はmotorsport.comに語った。

「それがベストだと思います。それは私がこのラリーでやっていることであり、トヨタの会社でもやっていることです」

 自動車メーカーがレースに出るのは、何よりもまず自動車を売るためであり、競技で磨かれた経験と技術を活かしてさらに優れた市販車を開発するためだ。レースで勝つことは、確かにその目的を達成する助けになる。もちろん成功を収めようとすれば、多くの資金が投入され、同様にプレッシャーもかかることになる。

 2021年にルノーF1がアルピーヌにリブランドされた際、当時のCEOであったローラン・ロッシは100戦以内にグリッド最前列への復帰を目指す計画を掲げ、自らにプレッシャーをかけた。

 しかしその計画はまだ半ばというところで、ルノー上層部は体制変更を決断。これは、F1チームの経営陣と自動車メーカーとの間で、物事が進むスピードに関する意見の相違が生じた結果だった。

 それに比べると、トヨタがWRCでのカムバックを発表して以来、経営陣が大きく変わったのは2021年にチームの立ち上げに貢献した4度のWRCチャンピオン、トミ・マキネンが身を引き、ヤリ-マティ・ラトバラがチーム代表の座に就いたときだけだ。

 モータースポーツへの投資が行なわれれば、メーカーがすぐにでも成功を望むのはある意味当然だろう。しかし、一夜にして成功を手にすることは事実上不可能だ。チャンピオンシップに挑戦するには、時間と健全な労働環境、そしてメーカーとチームの信頼関係が必要なのだ。



 豊田会長は、それを見事に体現していると言える。先週末のラリー・フィンランドでは、ラトバラにチーム代表の座を離れ、母国での一度きりのWRC復帰を果たす機会が与えられた。豊田章男は代表代行としてラトバラに代わってチームを率いた。

 自らもモリゾウとしてレースに参加するなど、豊田会長はモータースポーツに関して最も情熱的な自動車メーカーのリーダーだと言える。2017年にトヨタがWRCに復帰したのは、まさに彼のおかげだ。

 トヨタがフィンランドにまったく新しいWRC開発センターを建設する計画を明らかにした発表の席で、彼は「正直に言うと、私は子供がアイスクリームを愛するようにWRCが大好きなんです」と主張した。

 それは単なるリップサービスではない。彼がモータースポーツに関わっているとき、子供のようなにこやかな笑顔を浮かべており、そのポジティブなエネルギーの塊は、チームを成功に導くものなのだ。

「WRCに復帰しようと思った理由はふたつあります。ひとつは、この経験を生かしてより良いクルマを作るため、そしてもうひとつは人材育成のためです」

「このふたつを失えば、企業としての存在意義を失うことになります。だからこそ、WRCへのコミットメントはトヨタにとって長期的なものになると言えるのです」

 フィンランドで、motorsport.comはチーム代表代行としての彼のマネジメント・スタイルを目の当たりにした。トヨタがWRCで成功を収めている理由は明らかだ。それは、チームの一体感が感じられるなかで、スタッフがそれぞれの仕事を最大限にこなせるようにすることで成り立っている。

 彼はチーム代表として『ワンチーム、ワンドリーム』という言葉を掲げ、すべてのサービスに参加してスタッフに語りかけ、メディアのインタビューに応じることで表現した。彼はステージ上からも、サービスパークに戻っても、ドライバーたちに声援を送った。

「私はここが本当にホームだと感じるし、チームと、仕事をしているすべてのメンバーに感謝しています」

 そう豊田チーム代表代行は語った。

「チーム代表を引き受ける前は、彼ら(ドライバーたち)に迷惑をかけたくなかった。彼らはプロフェッショナルだから、私の目的はドライバーを応援することだけです。私はドライバーでもあるけれど、チーム代表が彼らのモチベーションを上げるために何を伝えたいのかを知りたい」

「最初の仕事は、チームメンバーと話をすることでした。いつもの朝の挨拶に加え、私が彼らに伝えたのは、シンプルに『ワンチーム』『ネバーギブアップ』『我々は負けず嫌い』の3つだった。そしてもうひとつ、今回覚えたフィンランド語『SISU(勇気の意)』です」



 SS5でのクラッシュでリタイアを喫したカッレ・ロバンペラがチームメイトの勝田貴元にアドバイスを送り、それが彼のステージ優勝、ひいてはヨーロッパでの初表彰台に繋がったことがそれを良く表していると、豊田代表は考えている。

「例えば貴元がフィニッシュした直後、カッレからアドバイスをもらったとコメントしていました。残念ながら彼のクルマを修理することはできなかったですが、チームメンバーとともに参加してくれていました。チーム代表として、またチームオーナーとして、彼らが互いに助け合い、ともに笑顔でいられることを誇りに思う。それが私たちのチームなんです。このような素晴らしいチームを作り、率いているヤリ-マティとチームのみんなに感謝したい」

「今回、チーム代表を代わったことで、チームの各メンバーがそれぞれの分野で非常にハードな仕事をしていることに気づくことができました。ヤリ-マティは残りの大会ではチーム代表に復帰します。私たちはこれからも特別な言葉を胸に、ともに働き、ともに戦っていきます」

 豊田会長の下で働くのはどんな感じなのか? 今回のラリー・フィンランド以外ではチーム代表として、トヨタをWRCでの成功に導く役割を担っているラトバラは、その質問に答える最もふさわしい人物だろう。

「彼と一緒に働けて本当に良かった。彼は私に、楽しんで、リラックスして、笑顔でいなければならないと言ってくれた」

「彼がサインをしたりインタビューに応じ、ステージに立ったことは印象的だった。自動車メーカーのトップがこれほど興奮し、このような仕事をする準備ができているのを見ることはあまりない。それが我々の成功の一部だ」

 どんなカテゴリーであれ、モータースポーツで成功を目指すメーカーが、豊田会長のアプローチから多くを学べることは明らかだろう。100戦計画が躓いたアルピーヌがF1で成功を収めるためには、トヨタのような信頼関係構築が必要になってくるはずだ。

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