マルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)の2024年が始まった。今季、ドゥカティのサテライトチームであるグレシーニ・レーシングMotoGPに移籍したマルケスにとって、走らせるマシンも、チームも、ファクトリーチームではない環境も、何もかもが新しい。ドゥカティのデスモセディチGP23への適応、そして長年コンビを組んできたクルーチーフ、サンティ・エルナンデスと別れ、新しいスタッフとコミュニケーションを深めていかなければならない。
マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで行われた公式テストで、マルケスは1日目に1分58秒621の9番手、2日目に1分58秒118の14番手、そして上位4名のライダーが1分56秒台のタイムをたたき出した3日目には、6番手タイムの1分57秒270を記録した。ドゥカティ勢としては5番手のタイムである。
この3日目のタイムアタックの前に、マルケスはイメージトレーニングに勤しんだらしい。
「1日目は(トラブルが多発して)難しかったけど、2回目は多くの周回を走って、レースペースに近いタイムで走れた。ただ、タイムアタックはまだまだだった。それで、昨日の夜はベッドの中で『タイムアタック(イメージトレーニング)』をしていたんだ。今朝は7時に起きて、もう1時間、『タイムアタック』をした(笑)。というわけで、今日はタイムアタックがよくなったんだ」
タイムアタックがうまくいっていなかったのは、「(ドゥカティでは)ホンダとはまったく違うライディングスタイルだから」だ。新品タイヤでのタイムアタックは2周程度しかできず、多くの機会があるわけでもない。少ないチャンスの中でライディングスタイルを順応させていくのは、ホンダの11年間で体に染みついたライディングスタイルがあるだけに、マルク・マルケスといえども難しいらしい。
「リヤタイヤの使い方が、(ホンダとドゥカティでは)まったく違う。だから、ホンダみたいにドゥカティを走らせられないんだ。バレンシアでは、バイクの乗り方が(ホンダとドゥカティは)近かった。でもここはそうじゃない。11年間で乗り慣れてきたバイクの癖をとらないといけないんだ。難しいよ」
「ペースを刻むほうが楽なんだ。時間があるからね。でも、タイムアタックは考えてなんかない。本能のまま走っている。本能のまま走れば、ホンダのライディングになる。でもこのバイクはそれじゃ、うまく走れない。だんだん慣れているところだよ」
マルケスによれば、ホンダはフロントを多く使うが、ドゥカティはリヤを多く使うバランスだという。
「特にコーナー立ち上がりを理解しないといけない。このバイクでタイムを出せるところだ。(デスモセディチGPの)最大のポテンシャルを引き出すためだ。ホンダは逆で、タイムアタックではコーナー進入が大事だった、このバイクは、立ち上がりなんだ」
とはいえ、確実にドゥカティマシンへの適応が進んでいることは、タイムが証明している通りだ。
そんな中でも変わらないものがある。自分の周りにいるスタッフとの関係性を重視する考え方だ。マルケスは自分の周りにいる人たち、つまり“チーム”を重要視しており、その片鱗がコメントの端々に感じられた─。例えば、1日目には「(クルーチーフの)フランキー(カルチェディ/スズキでジョアン・ミルのクルーチーフを務めた)は僕を知る必要がある。僕も、彼を知る必要がある」など、相互理解の必要性について言及していた。
確かに11年間、心身に馴染んだ環境や癖はすぐには変わらないかもしれない。マルケス自身が、「まだドゥカティの走らせ方をわかっていない」と言うように。しかし、マルケスの進み方は、揺るぎない。そこには、2024年シーズンの可能性が含まれているはずだ。
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