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「ちょい乗り」は冬と夏のどちらがダメ!? パワートレーンによってどれがダメージ大きいの?

掲載 更新 38
「ちょい乗り」は冬と夏のどちらがダメ!?  パワートレーンによってどれがダメージ大きいの?

 寒くて寒くて、近所の買い物にもクルマで行きたくなってしまう冬。ですが、近所への買い物といった、すぐそこまでの距離にクルマを使う「ちょい乗り」は、多用すればクルマに悪影響を及ぼすことに。その原因は暖気不足。暖機が充分にできないことで、エンジンにかかる負担が大きくなってしまうのです。

 暖機不足、と聞くと、寒い冬は特に「ちょい乗り」がよくないような気がしますが、では暑い夏ならば「ちょい乗り」は問題ないのでしょうか。また、昨今はパワートレーンの種類が増えていますが、ハイブリッドやディーゼルなど、パワートレーンの違いで、ダメージの度合いは異なるのでしょうか。

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文/吉川賢一
写真/マツダ、三菱自動車、ベストカー編集部、AdobeStock

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■夏もダメージは受ける!?

 エンジン始動から停止まで、数分以内程度の「ちょい乗り」は、冷却水や各部オイルが適温まで上がり切る前にエンジンを止めてしまうため、繰り返すことで設計どおりのエンジン出力が出ないなどのトラブルにつながります。

 ほかにも、触媒温度が充分に上昇しないため、排ガス浄化性能が不充分となることや、バッテリーへの充電量が不足してバッテリー上がりを起こしやすくなる、エンジンオイルの劣化が早い、などのトラブルも誘発します。

暖機運転はエンジン全体へエンジンオイルを回すことでエンジンを保護する目的として行われる。そのため、エンジンをかけたあとは待機する必要はなく、しばらくはゆっくりと走行すればよい

 そのため、昔はエンジンスタート後に暖機運転をするよう推奨されていましたが、最近のクルマでは、CPUが燃焼状態をチェックして最適な混合気を供給してくれるため、エンジン始動後にすぐ走り出しても、暖機走行を心がければ、問題はありません。

 これらは夏でも冬でも同様。通常運転中のエンジン本体は、およそ400℃程度にまで上がっています。夏の外気温がいくら高くても、エンジンが本来性能を発揮できる温度からすればまだまだ低い温度。

 もちろん、寒い冬よりも暑い夏のほうが影響は少ないですが、エンジンを止めてから一晩程度経って、エンジン本体が外気温と同じ温度になっているならば、夏でも「ちょい乗り」はエンジンにダメージを与えてしまいます。

■ただ、やはり冬のほうがダメージは大きい

 とはいえ、クルマによりダメージを与える可能性が高いのは、やはり外気の低い冬期のほう。クルマの各部が、適性温度に上がるまでかかる時間が長くなるので、その分、ダメージを与えてしまいます。

外気温の低い冬のほうがクルマの各部が適性温度に上がるまでかかる時間が長くなるので、ちょい乗りのダメージが大きい

 特に、気温が低いとエンジンオイルの流動性が下がり、最悪の場合、油膜切れの状態でピストンとシリンダーが直接接触するような「ドライスタート」にも。マイナスフタ桁になるような極寒冷地では、低温状態でも満足な性能を発揮できる粘度を持つエンジンオイルへの交換が必須です。

 ちょい乗りからは少し話がそれますが、冬の注意点として、ディーゼル車の場合は、燃料である軽油が凍る可能性があります。特に注意が必要なのは、寒い時期に、暖かい地域で満タンにしたディーゼル車で、寒冷地へ移動した場合です。

 あまり知られていませんが、軽油は地域や季節によって、低温時の流動性が異なるものが販売されています。石油連盟によると、軽油への要求品質として、軽油の流動温度が5度以下の特1号から、1号(-2.5度以下)、2号(-7.5度以下)、3号(-20度以下)、特3号(-30度以下)と、5段階に分けています。例えば、北海道(道南除く)では1~3月は特3号、4月は2号、5~6月は1号、沖縄では1~12月通年で特1号、といった形で、JISにより規定されているのです。

表:軽油のJIS規格。軽油は地域によって低温時の流動性が異なるものが販売されているので、寒冷地に行く際は現地で販売されている軽油を給油する

 ディーゼル車で普段の生活圏とは違う寒冷地に行く際は、現地で販売されている軽油を給油するようにしてください。ちなみに、ガソリン燃料が凍る温度はおよそ-100度であり、軽油のように細かく分類する必要はないそうです。

■ディーゼルはちょい乗りに向かない

 一般的に、「日常の足としてならばガソリンエンジン車、100kmの長距離移動がメインならばディーゼルエンジン車」といわれていますが、これは本当にそう。その理由は、ディーゼルエンジン車特有の構造、排出ガス浄化装置(DPF)にあります。

最近のクリーンディーゼル車には、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)と呼ぶ排出ガス浄化装置がついており、ちょい乗りだと正常に機能せずトラブルの原因となる

 最近のクリーンディーゼル車には、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)と呼ぶ、排出ガスに含まれる粒子状の物質(主にスス)をキャッチして、燃焼して無害化するという機構が入っています。

 ですが、ちょい乗りをくり返していると、この燃焼除去が間に合わなくなります。DPFが働くにはススを燃焼させるだけの温度が必要だからです。DPFが機能しなければ、DPF内にススが詰まってしまい、エンジンの調子が悪くなります。

 日本車メーカーで乗用車のディーゼルエンジン車に力を入れているマツダ車は、「通常走行中はDPFで捕集されたPMは自動で除去されますが、次のような時はPMが自動で除去されません」と、説明書に明記しています。

・車速約15km/h以下の走行を続けている時
・10分以下の短時間走行の繰り返しなど、エンジンが暖機できない走行を繰り返した時
・長時間アイドリング状態の時

参考:「ディーゼル車とガソリン車では寿命が違う?その理由とは?」

 ちなみに、メーター内にDPF警告などのマークが出てしまった場合、ディーラーや整備工場などへ入庫し、診断機による「DPF再生作業」が必要となります。内部に溜まったススに燃料を吹き付けて燃やす方法や、一度DPFを切断して内部のフィルターを洗浄液で洗い流すといった方法がありますが、費用は5万~10万円程度かかるようです。

 DPF全交換は約15万円するようですので、それよりは安く仕上がりますが、ガソリンエンジン車にはない出費が発生する可能性があるとは、ディーゼル車乗りは承知しておかないとなりません。

■「ちょい乗り」に最も向いているのは、バッテリーEV

 やはり、ちょい乗りが多くなる街乗りメインであるならば、ガソリン車もしくは、ガソリンハイブリッド車がおすすめ。ガソリンハイブリッド車の場合、ECUがスタート時のクルマの状況を判断し、エンジンが冷えている場合には、エンジン始動を自動的に行って暖機するので、ドライバーは何の気も遣わずに使用できます。

 ちなみに、最も向いているのはバッテリーEV。冬場に暖房を利かせるとバッテリー消費が激しいことを除けば、何の気も使わずに利用できます。「充電する」というカーライフに慣れさえすれば、バッテリーEVは、ちょい乗りメインのほうの「答え」でしょう。

東京オートサロン2022に三菱から出展された軽EVコンセプトモデル「K-EV concept X Style」2022年度初頭発売予定。補助金使って200万円!? なら、まさに「ちょい乗り」にもってこい!!

 とはいえ、そんなバッテリーEVも、サスペンションなどの足回りに使っているブッシュやタイヤ、モーターマウントといったゴム部品など、定期的に動かしてあげることで、クルマのコンディションを維持することができます。普段は近所の買い物にしかクルマを使わない方も、週に一度は、愛車でドライブに出かけるようにしてください。

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みんなのコメント

38件
  • 小回りや買い物で軽自動車を使うことすら
    気に喰わないのがいるみたいだけど、
    自分が欲しいものは部屋に何年も閉じ籠もって
    お父さんお母さんに頼んで買って貰ってるから
    そういうこと言ってるんだろ。

    ちゃんと親孝行してやれよ
  • 人も車も適材適所です。

    能力を十分に発揮できない使われ方をするのは、人も車ももったいない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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