現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ロータス、英国工場閉鎖へ 59年の歴史に幕 生産を米国に移す計画

ここから本文です

ロータス、英国工場閉鎖へ 59年の歴史に幕 生産を米国に移す計画

掲載 3
ロータス、英国工場閉鎖へ 59年の歴史に幕 生産を米国に移す計画

中国から閉鎖指示 すでにラインは停止中

吉利汽車傘下のロータスは、生産拠点を米国へシフトする方針を固め、英国ヘセル工場での生産終了に備えるよう指示を受けた。情報筋によると、この指示は、中国のロータス経営陣から出されたという。

【画像】ヘセル閉鎖でスポーツカー生産はどうなる? 小さく咲いた一輪の花【ロータス・エミーラを詳しく見る】 全20枚

ロータスはこの件についてコメントを控えたが、主要市場である米国での関税引き上げの影響に対処するため、同工場の主力モデルであるスポーツカー『エミーラ』の生産を5月半ばから一時停止していることを認めた。

関税障壁を突破し、米国で自動車を生産したい考えだ。ロータスの馮青峰CEOは、6月25日に開催された第1四半期決算発表で、「現地生産は実現可能な計画だと考えています。関税引き上げによる損失を補填するために、米国戦略を活用しようとしています」と述べた。

馮氏は、米国での生産について「戦略的パートナーと綿密な協議を行った」としたが、具体的な社名は明かさなかった。最も可能性が高いのは、エミーラを含む一部の生産を、稼働率が低いサウスカロライナ州のボルボ工場に移すことだ。ボルボも吉利の子会社である。

ロータスは、赤字が続く中でコスト削減に奔走している。同社は4月にヘセルで270人を解雇し、また巨額の費用をかけて数か月前に開設したばかりのクラーケンウェル本社も閉鎖される予定だ。パーク・レーンにある旗艦店は、英ディーラーグループのHRオーウェン社に移管されたが、これもコスト削減策の一環と見られている。

ロータスの販売台数は、今年第1四半期に42%減少し、吉利傘下でSUVの『エレトレ』やセダンの『エメヤ』など、新しいEVシリーズを発売して以来、初めての大幅減となった。

吉利は、マレーシアのDRB-Hicomから2017年にロータスを買収したが、20億ポンド(約4000億円)の投資の回収はまだ見込めない。ロータスは第1四半期に1億8300万ドル(約265億円)の純損失を計上し、負債は33億ドル(約4780億円)に増加した。

EV低迷で打撃 ハイブリッドに軸足

EVの高級車セグメントにおける需要低迷の影響が大きい。「近年、高級車ブランドのBEVの普及率は当社の予想を下回っています」と、馮氏は述べている。

米国は新EVシリーズにとって大きな市場となるはずだったが、中国製EVに100%の関税を課したことで、ロータスは米国でのエレトレの販売を中止せざるを得なくなった。欧州と中国でも需要が落ち込み、エレトレとエメヤの1月から3月までの販売台数は31%減の719台となった。

代わりに、『ハイパーハイブリッド』と呼ばれるPHEVシリーズに軸足を移し、スポーツカーにも電動ドライブトレインを搭載する。まず、エレトレのPHEV版を開発し、来年第1四半期に中国で発売する予定だ。

ヘセル工場は、エミーラの生産終了後に電動スポーツカーの生産を計画していたが、市場の反応が鈍く、この計画は延期された。「市場は電動スポーツカーを受け入れる準備ができているのか? その答えはまだわかりません」と、ロータス欧州部門のCEOであるマット・ウィンドル氏は5月、AUTOCARに語っている。

ヘセル工場は昨年約5000台のエミーラを生産したが、理論上の生産能力は1万台ある。ウィンドル氏は、より多くのモデルを生産するよう吉利に働きかけていた。その候補の1つが、ポールスターの電動ロードスター『6』だった。

「(ポールスター6の)生産は可能だと思います。現時点ではエンジン車だけなので、移行期間は必要ですが、その道を進んでいかなければなりません」とウィンドル氏は述べた。

吉利は、法規制によりエンジン車の生産終了を迫られていること、そして気候変動対策にあまり積極的ではない米国が、地球上で最後の主要なエンジン車市場となることを考慮し、ヘセル工場への投資拡大は価値がないと判断したのかもしれない。

馮氏は以前、エミーラにV8エンジンを搭載する選択肢も検討していると述べていた。

大きすぎた期待 国内産業への影響も懸念

ロータスの成長は大幅に過大評価されていた。2024年のニューヨーク証券取引所上場に先立ち、同社は2028年までに年間15万台を生産すると予測していた。その大部分は、中国・武漢の新工場で生産される予定だった。中でも、ポルシェ・マカンへの対抗馬となる中型SUV(コードネーム『タイプ134』)は、2027年以降のEV販売の主力になると期待された。しかし、EV市場の減速により、タイプ134は開発が中断され、将来の大黒柱を失った。昨年の総販売台数は1万2134台にとどまった。

ヘセル工場の閉鎖は、英国政府にとっても大きな打撃となる。政府は先週、2035年までに国内の自動車生産台数を昨年の90万5233台から130万台に拡大する産業戦略を打ち出したばかりだ。

ロータスの生産台数はJLR(ジャガー・ランドローバー)などの大手メーカーに比べれば少ないが、創設者コリン・チャップマン氏が政府から旧飛行場を購入した1966年以来、ノーフォークの地で生き残ってきた。吉利は、エミーラを生産するための新しいスポーツカー生産施設を含め、この工場に1億ポンド(約200億円)を投資した。

ロータスの元幹部の1人は、閉鎖計画を「恥ずべき行為」だと批判している。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

なぜクルマをこれほど安く作れるのか 型破りなコスト削減方法 英国記者の視点
なぜクルマをこれほど安く作れるのか 型破りなコスト削減方法 英国記者の視点
AUTOCAR JAPAN
ホンダはなぜ「大型EV」を捨てたのか? 北米「11万台の壁」と25%関税――三重苦からの再編戦略とは
ホンダはなぜ「大型EV」を捨てたのか? 北米「11万台の壁」と25%関税――三重苦からの再編戦略とは
Merkmal
日産「追浜工場」は生き残れるか? 鴻海EV協業で問われる「完成車メーカー」の定義
日産「追浜工場」は生き残れるか? 鴻海EV協業で問われる「完成車メーカー」の定義
Merkmal
ランドローバー、来年『フリーランダー』復活へ 中国向け電動SUVブランド
ランドローバー、来年『フリーランダー』復活へ 中国向け電動SUVブランド
AUTOCAR JAPAN
「聖地」閉鎖の噂は本当!? 日産の礎・追浜工場はどうなる?
「聖地」閉鎖の噂は本当!? 日産の礎・追浜工場はどうなる?
ベストカーWeb
欧州「ソーラー燃料」で低炭素化 EVとの共存図るスタートアップ
欧州「ソーラー燃料」で低炭素化 EVとの共存図るスタートアップ
AUTOCAR JAPAN
日産、追浜工場の存続案浮上、台湾・鴻海とEV生産を検討[新聞ウォッチ]
日産、追浜工場の存続案浮上、台湾・鴻海とEV生産を検討[新聞ウォッチ]
レスポンス
日産はなぜ「メイド・イン・チャイナ」に賭けるのか? EV「N7」の可能性と「グローバル拠点化」へ挑む28年間、大勝負の行方どうなる
日産はなぜ「メイド・イン・チャイナ」に賭けるのか? EV「N7」の可能性と「グローバル拠点化」へ挑む28年間、大勝負の行方どうなる
Merkmal
BYD 大型SUV人気に注目、新型『B5』欧州導入へ 686馬力のプラグインハイブリッド
BYD 大型SUV人気に注目、新型『B5』欧州導入へ 686馬力のプラグインハイブリッド
AUTOCAR JAPAN
デザインも価格も魅力的!新型プジョー3008の押しポイントとは?【キーマンたちにインタビュー】
デザインも価格も魅力的!新型プジョー3008の押しポイントとは?【キーマンたちにインタビュー】
AUTOCAR JAPAN
1年で利益がマイナス1兆円になった日産! 不振の原因は「EVを推しすぎた」の噂は本当か?
1年で利益がマイナス1兆円になった日産! 不振の原因は「EVを推しすぎた」の噂は本当か?
WEB CARTOP
日産「新型スカイライン」登場へ 13年ぶり“全面刷新”で「セダン廃止」の可能性も!? “急ピッチ開発”が進む「日産の伝統モデル」がどうなるのか 考えられる現実的な“シナリオ”とは
日産「新型スカイライン」登場へ 13年ぶり“全面刷新”で「セダン廃止」の可能性も!? “急ピッチ開発”が進む「日産の伝統モデル」がどうなるのか 考えられる現実的な“シナリオ”とは
くるまのニュース
いまや世界の巨人同士!! かつてトヨタは「小さなテスラ」と提携していたが何を生んだのか?
いまや世界の巨人同士!! かつてトヨタは「小さなテスラ」と提携していたが何を生んだのか?
WEB CARTOP
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2025 注目の最新発表まとめ(後編)
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2025 注目の最新発表まとめ(後編)
AUTOCAR JAPAN
世界が注目する米スタートアップ企業CEOが来日 最新自動車運転技術や高度運転支援システムの現状を語る
世界が注目する米スタートアップ企業CEOが来日 最新自動車運転技術や高度運転支援システムの現状を語る
Auto Prove
【6MTで帰ってきた!】フィアット500ハイブリッドが11月に生産開始 欧州
【6MTで帰ってきた!】フィアット500ハイブリッドが11月に生産開始 欧州
AUTOCAR JAPAN
BYD「軽EV」参入の衝撃――絶対王者「N-BOX」は安泰か? 価格破壊を超えた戦略に日本勢は本当に対抗できるのか
BYD「軽EV」参入の衝撃――絶対王者「N-BOX」は安泰か? 価格破壊を超えた戦略に日本勢は本当に対抗できるのか
Merkmal
アウディは一度消滅していた。60年前にブランドを蘇らせた運命の一台「F103」を再考する
アウディは一度消滅していた。60年前にブランドを蘇らせた運命の一台「F103」を再考する
LEVOLANT

みんなのコメント

3件
  • tak********
    経営者がチャイナ、全ての元凶。
  • やふーた
    トランプ政権もあと3年足らず、そのあとは関税も見直しが入る。
    そこまで考えて自国ブランドの自国生産をなくして 本当に良いの?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1573 . 0万円 1661 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1046 . 0万円 1570 . 0万円

中古車を検索
ロータス エミーラの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1573 . 0万円 1661 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1046 . 0万円 1570 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村