この記事をまとめると
■プジョー5008は実用性重視の7人乗りSUVとして仕立てられている
このハンドルって……本当に便利なのか? プジョーが実用化する気満々の「HyperSquare」ってなに
■独立式シートを採用した3列目は大人でも十分に使用できる空間を確保している
■上質な乗り心地とプジョーらしい軽快なハンドリングを実現している
「3列シートでもカッコいい」それがプジョー5008
つい先日、仲間のジープ・グランドチェロキーにおっさん4人で乗り込んで出かけたときのこと。出先で別の友人夫妻とばったり会って、皆で立ち話をしてたら突然の雨。グランドチェロキーのオーナー氏は「駅まで送るよ」と、普段はシートバックを倒してゴルフバッグを放り込んでることの多い3列目シートの準備をしはじめた。なるほどな、と思った。僕は独り身だしライフスタイル的にもまったく必要としてないから3列目シートのメリットに直面したことがなかったのだけど、こういうことか、といまさらながら実感したのだった。
なければないで諦めもつくけど、あればときどきものすごーく便利なのが3列目シート。3列と2列のチョイスがあるなら3列目シートがある方を選ぶ人が多い、というのも納得できる気がしたものだ。
が、上陸したばかりのプジョー5008はどうだろう? 何しろベースとなった3008は、驚くほど綺麗なフォルムをもつファストバックスタイルのクーペSUVだ。アーティスティックなディテールとクルマ全体から漂ってくる独特なエレガンスは、408と並ぶ近年のプジョーの名作デザインだと僕は思ってる。その徹頭徹尾スタイリッシュであることにこだわった姿と3列目のシートは、見事なまでにトレードオフ、なのである。どっちを選ぶ? と問われて苦悩する人も多いんじゃないか? なんて考えたりもした。
でも、実車をじっくり眺め、走らせてみて、そんな馬鹿げたことを考える必要はなかったな、と思うようになった。
そもそも、5008のスタイリングに難があるわけじゃない。フロントのドアまでは3008とほぼ同じで、ルーフをリヤまで伸ばしただけだとありがちなリヤビューになってしまうところをサイドウインドウやモールのリヤ側の角度を工夫するなどして形づくったスタイリングは、SUVとしてはじつにバランスがいい。
リヤのオーバーハングが伸びてることも大きな要素だろう。パッと見からしても、なかなか悪くないのだ。3008は、ちょっと変ないい方かもしれないけど、そのスタイリングのなかに見え隠れする“美しい違和感”のようなものが魅力だと感じてるのだけど、こちらは逆にバランスのとれた自然なプロポーションが見せどころだ。
車体のサイズを見ていくと、全長4810mm、全幅1895mm、全高1735mm、ホイールベース2900mmと、3008より全長は245mm、全高は70mm、ホイールベースは170mm、それぞれ拡大されている。長さと高さが大きく違ってるところからも、意図的に3008とは性格・性質をわけていることが伝わってくる。
そう、3008と5008は別のクルマ。5008は3008をベースにしてはいるけれど、あくまでも似て異なるクルマとして作られてるのだ。
現在のプジョーの粋とセンスをクーペSUVという時流にのったスタイルで存分に表現した3008、そのエッセンスをまとった実用SUVである5008、といったところか。
3列シートを望む人が選ぶべきクルマ
そうした作りわけの根っこにあるのは、いうまでもなく3列+7人乗りのシートレイアウトなのだけど、1列目の2座は当然として、2列目の3座も3列目の2座も、それぞれが独立したシートとされている。2列目の3座のそれぞれをリクライニングさせたり倒したりすることが可能で、6対4の分割で前後にスライドさせることもできるから、それらを上手に調整することで、3列目の乗員もほどほど以上に快適な空間を得ることができるのは軽い驚きだった。
SUVの3列目シートはエマージェンシー用に感じられるケースも少なくないのだが、フロアが高めで大人にとって理想的な着座姿勢はとりにくいものの、数時間の移動なら問題なく過ごせるんじゃないか? と感じられた。もちろん3列目の背もたれをパタンと折りたためば、そこは十分な広さをもったラゲッジスペースとなる。5008の後ろ半分は、十分以上に有用なのだ。
肝心の走りはどうかといえば、それは上質のひと言に尽きる。3008と同じく最新のSTLAミディアムというプレットフォームは剛性感もたっぷりあって、そこにマウントされてるサスペンションも滑らかに実直に上下する。猫足というにはちょっと筋肉質な印象だけど、乗り味は総じてまろやかでしなやか。どこかしっとりしていて、はっきり快適といえる水準にある。
ホイールベースが伸びたことによる恩恵は直進安定性に表れていて、3008でも優秀と感じたのに、さらに素晴らしいレベルに引き上げられている。一方、コーナーでは旋回してるときにリヤタイヤが後ろにあることがわかる動き──フロントに対してリヤがゆっくり追従してくるような印象──を見せるのだけど、鼻先の軽さが効いてノーズそのものはスッと素早くインを向こうとしてくれるから、ダルさのようなものはまったくなく、気もちのいいコーナリングを楽しめる。プジョーらしい操る楽しさは、少しも損なわれていなかった。
ただひとつ、ちょっとばかり懸念を感じたのはパワートレインだ。搭載するのは1.2リッター3気筒ターボをベースとする48Vのマイルドハイブリッド。ステランティス各ブランドに採用されている、メインストリームといえるものである。
フィアット、アルファ、ジープ、シトロエンのコンパクトなモデルではものすごく好印象だったし、個人的にはかなりの名機だとも思ってる。けれど、さすがに1.7トンを越える5008だ。エンジンで136馬力と230Nm、48Vモーターで22馬力と51Nmというアウトプットでは物足りなさを感じるんじゃないか? と、試乗前に予想してたのだ。
それはほとんどの場面では杞憂に終わった。日常的な領域ではスルスルと力強く加速して、必要なスピードを刻んでくれる。小さいながらもモーターのアシストが効いていて、街なかでも高速領域でもちょっとした峠道でも、そう不満を覚えることはなかった。が、それはいずれも僕ひとりで走らせてたときに感じたこと。今回は7人フル乗車は試してないし、荷物だって何ひとつ積み込んでない。それらを満載したときには、どう感じるのだろう? なんて心配してたりする。
それにこの車格なのだから、高速道路の合流とかきつめの登り坂とかでアクセルペダルをガバッと踏み込まなくても余裕でいけちゃうぐらいのパワーやトルクがあったらもっといいのに、と感じた場面もあった。いや、繰り返すけど、普通に走ってる限り、不満らしい不満はないのだ。ただ、せっかくの完成度が高いフラッグシップSUVなのだから……という欲深い気もちが生まれてしまっただけ。1台のSUVとしての総合得点は、かなり高いところにあるのは間違いない。
前述のとおり僕は独り身だしライフスタイルとしてシートはふたつでも十分というクルマの使い方をしてるから3列目のシートに惹かれたりはしないのだけど、そこを望む人が選ぶクルマとして、この5008は十分に選ぶに値するモデルだと感じてる。
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みんなのコメント
すぐ廃れそうだけど・・・