長年隠されていたヒトクセあるフェラーリが出品
毎年8月にペブルビーチで開催され、RMサザビーズの頂点に君臨するモントレー・オークションには、毎年選りすぐりのコレクターズカーが登場し、世界の愛好家たちからも注目され続けている。
【画像】こんな酷いフェラーリ誰が買うの? なんと2億7375万円で落札された500モンディアルの残骸 全29枚
今年のモントレー・オークションに出品された車両の中で異彩を放っていたのが「ロスト&ファウンド・コレクション」から放出された20台のフェラーリたちだった。これらはその名の通り、フロリダで不動産業を営んでいたコレクター、ウォルター・メドリン氏が「隠し、忘れ去られていた」フェラーリたちなのだ。保管中に台風でガレージが倒壊してダメージを負った車両や、長年放置されて傷んだなど、一癖ある車両が用意された。
フェラーリ 500モンディアルってどんなクルマ
今回出品された「ロスト&ファウンド・コレクション」の極みの1台が、1954年フェラーリ 500モンディアル・スパイダー・シリーズI ピニンファリーナ(C/N:0406MD)だ。
フェラーリと聞くと12気筒エンジンを思い浮かべようが、500モンディアルは4気筒エンジンを積む初のレーシング・スポーツカーとして送り出された。エンツォ・フェラーリは1950年のフォーミュラ2(F2)に参戦中、4気筒のマシンが12気筒のフェラーリに肉薄していることに気付いたことが開発のきっかけだった。
4気筒エンジンは低回転で高出力を発生し、軽量コンパクトなことから、フェラーリが苦手とするツィスティなコースでパフォーマンスを向上できることに気づいたのである。フェラーリはアウレリオ・ランプレディ技師に4気筒エンジンの開発を命じ、1951年に登場した2.5リッターの625F2は予想以上の活躍をみせた。
そうしたなか、1952~1953年の世界ドライバーズ選手権のマシンは、F1ではなくF2で競われることになり、フェラーリはすぐさま2リッターの500F2を開発する。車名の500は単室あたりの排気量を示す。500F2はスクーデリア・フェラーリのアルベルト・アスカリが駆り、1952年と1953年のワールドチャンピオンを獲得し、フェラーリの名と技術の優位性を世界に知らしめた。
その後、フェラーリはランプレディが開発した4気筒エンジンの成功を受け、カスタマー向けレーシング・スポーツカーを製作する。その車名はアスカリが2年連続でワールドチャンピオンを獲得したことにちなみ、イタリア語で世界を意味するモンディアルと名付けられた。500モンディアルはピニンファリーナ・ベルリネッタが2台、ピニンファリーナ・スパイダーが12台、スカリエッティ・スパイダーが14台、モノポスト仕様が1台の合計29台と、エンジンのみが1基作られた。
0406MDのヒストリー
今回出品されたフェラーリ 500モンディアル・スパイダー(C/N:0406MD)は、1954年に2台目のモンディアルとしてマラネッロから送り出された。ミラノで最も重要なプライベーター・チームだったスクーデリア・グアスタッラを率いるフランコ・コルナッキアに、この0406MDが納車された。
同チームではスクーデリア・フェラーリのエースドライバーだったフランコ・コルテーゼにステアリングが託され、500モンディアル初の総合優勝を飾った。多くのレースでクラス優勝はもちろん、総合でも上位に食い込む活躍を遂げた。その後、0406MDは1954年にピニンファリーナ製のボディを捨て、スカリエッティによってワンオフ・デザインのスパイダーに改造されている。
その後はイタリアで何人かの所有を経て、1958年にアメリカに渡った。アメリカでの3人目のオーナーは、当時モアパワーの手段として一般的だったアメリカンV8エンジンに積み替える改造を行った。しかしながらレース中にクラッシュし、火災に見舞われてしまった。
無残に消失した0406MDの残骸は愛好家に引き取られ、何人かを経て1978年に現所有者のウォルター・メドリンが入手した。以降、モンディアルはクラッシュした状態のまま保管され、以来フェラーリ愛好家の目から遠ざかり、今回のオークションで45年ぶりに公の場に姿を見せた。
驚きの額で落札
今回出品されたフェラーリ 500モンディアル・スパイダー0406MDの、クラッシュ・炎上して大きく変形したボディは、長年放置されていたため電蝕と酸化で朽ち果てていた。さらに付属するのは代わりの750モンツァ用の4気筒エンジン(エンジンナンバー:0440MD)と、トランスアクスルと、リアサスペンションだけで、他のパーツはほとんどが失われ、まさにドンガラといえる悲惨な状態だ。
しかし事前に主催者から発表された予想落札額は120~160万ドル(約1億7520~2億3360万円)と驚きの額だった。せめてもの救いは、最低落札額が設定されていないことだった。
フェラーリの公式レストレーション部門であるフェラーリ・クラシケにフルレストアを依頼すれば、そこそこのコンディションの車両でも邦貨で1億円から3億円ほど必要になる。クラッシュして欠品だらけの0406MDを復元させるとなると、いくら請求されるかわからない。まさに『時価』の世界といえる。ちなみに標準的なコンディションでナンバーマッチングのフェラーリ500モンディアル・スパイダーは、邦貨換算してピーク時で5億5555万円、直近では2憶8702万円で落札されている。
実際のところフェラーリの4気筒レーシング・スポーツは、12気筒モデルに比べて評価が低い。そのため取引価格も12気筒と較べると高額にならない傾向にある。これまでの500モンディアルのオークション相場と、0406MDのコンディションと欠品具合を考えると、主催者発表の予想落札額はいささか楽観的に思えた。しかし、オークションを終えてみれば驚きの結果となったのである。なんと予想落札額を超える187万5000ドル(約2億7375万円)で落札されたのである。腐っても鯛ではないが、クラシック・フェラーリの強さを改めて思い知らされた。
新オーナーは0406MDをそのまま保存するのか、あるいは往年の姿に復元して公の場に現れるのか、フェラーリ愛好家にとって今後の動向に興味は尽きない。
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みんなのコメント
ほとんど作り直して
5億で売れるかどうかなのか
よくわからん世界