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岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較

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岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較

 鈴鹿サーキットでの第8戦、第9戦の2連戦で2024シーズンを終えたスーパーフォーミュラ。FIA F2から今季スーパーフォーミュラに参戦したルーキーの岩佐歩夢(TEAM MUGEN)は結局、シリーズランキング4位で今季を終えることになった。その速さは誰もが認めるところながら、レースでなかなか期待された結果が残せず、この最終鈴鹿大会でもスタートのトラブルに見舞われるなど苦しい週末になってしまった。レース後の岩佐、そして担当の小池智彦エンジニアに聞いた。

 まるで2024年シーズンの岩佐を象徴するかのように、速さと不可解さとトラブルに見舞われ、順位変動の大きい週末だった。

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 金曜のフリー走行で2番手タイムとなり、上々の滑り出しに見えた岩佐。翌土曜日の第8戦の予選でも2番手となるも、決勝ではまさかのスタートトラブル。その日曜日の第9戦の予選では11番手、そこから決勝ではファイナルラップで牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)を130R手前でオーバーテイクするなど4つ順位を挙げて7位フィニッシュ。なかなか評価の難しいラスト2連戦となった。

「(牧野との最終ラップでの戦い)うまくやれたと思います。自分でも納得のオーバーテイクです。もう少し早くできればとは思って居ましたが、今シーズンを通してなのですけど、ダーティーエア(他車の後で空気が乱れた状態)に入った時に結構、ポテンシャルが落ちてしまう。今回もそこだけがネガティブに出てしまって、すぐにオーバーテイクすることはできませんでした」と、第9戦のレース後に話していた岩佐。

 今年1年については、以下のように総括した。

「悔しいです。自分が目指していたところ(チャンピオン獲得)に行けなかったというのもありますし、全力で挑んだ結果でもあるので、悔しさがありますけど、それと同時にこのチャンピオンシップで得た経験値や学んだことというのは、やっぱりすごく多くて、自分の中でもかなり成長できたかなと感じています。いろいろ反省点も改善点もありますけど、本当に充実した1年でした。これをしっかりと、今後、自分が目指している世界の頂点というところに活かしていきたいなと思います」

 リザルトの上下動が多かったラスト2連戦、実は岩佐と15号車のマシンは、新しいトライを試みていた。担当の小池智彦エンジニアがレース後に話す。

「今回、今までやったことのない攻めたセットアップを持ってきていました」

 そのセットアップは「よりエアロに特化したセットアップで、低速コーナーを捨てて、セクター1などの中高速コーナーを獲りに行く」(小池エンジニア)というものだった。

 そのトライは金曜、そして土曜の第8戦予選までは良かったが、決勝での手応えは薄く、スタートではトラブルも発生した。小池エンジニアは以下のように説明する。

「エンジンのギヤのセーフティーモードが入ってしまって、ギヤが入らない状態でした。シフトを入れても信号が送られていないので、ギヤが入らない。他のホンダエンジン勢でも待機時間が長かった組に(前方のグリッド)起きかけていました。今日(第9戦)はそのセーフティーを半分解除するような形で、できました。本当にドライバーもメカニックはまったく悪くなくて、エンジン側の問題。それが『ここで出ちゃうか』と」

 そして、金曜、土曜の予選で速さを見せていた『攻めたセットアップ』は、日曜の第9戦の予選では完全に不発となってしまった。

「Q1はグリップがあってポールを狙えるかなという自信もあったのですけど……それが6番手通過で焦りました。Q2に行ったら、出て行った時からグリップレベルが低くて。(ポールポジションの)野尻さんとコンマ8秒差は、ちょっと不可解ですね」と、小池エンジニア。

 岩佐も同様にこの予選のパフォーマンスには首を傾げた。

「正直、クルマのフィーリングとしてはQ2はすごく良かったですし、自分のドライビングも今シーズンの中ではかなりいい形で走れた。でも、その状態でタイムが出ない。トップとかなり(0.8秒)のタイム差で11番手というのが、まったく納得がいかなくて、すぐにデータ分析をしましたけど現状、原因が見つかっていません。タイムを見ると、どこのセクターでも遅くて、かなり謎です。今シーズンはもう終わりましたし、来年は決まっていないですけど、この予選の件はクリアにしてから年を越したいと思っています」

 結局、岩佐と小池エンジニアは、以前の15号車のセットアップに戻して第9戦の決勝に挑み、11番手グリッドから7位でチェッカーを受けることになった。

⚫︎岩佐歩夢が秘めているポテンシャルの高さ。小池エンジニアが体感したリアム・ローソンとの比較

 2024年シーズンを終えて岩佐のランキングは4位。昨年の15号車をドライブしていたリアム・ローソン(今季RBからF1に途中参戦中)のランキング2位と比べると一見、岩佐の成績は見劣りしてしまう。だが、小池エンジニアの視点はどのランキングとは異なる。

「リアムと比較されることが多いのですけど、僕個人としましては、岩佐は今年フロントロウ4回、リアムは3回で、今年の方が接戦だったと思います。岩佐は2位表彰台も3回上っていて、スタートでトラブルとかがあった時でも、レースでは確実に追い上げてきていました。予選一発もあるし、レースでも追い上げて来る。ただ、(運を)持っていなかったですね。リアムは持っていた。今年は総じて野尻(智紀/TEAM MUGEN)さんも苦しんでいたので、チームとしてのタイミングもあったので、岩佐には申し訳なかったですね」

 その小池エンジニアに、ドライバーとしての岩佐の魅力を改めて聞いてみる。

「僕が担当してきたドライバーの中でも、彼は本当にF1に行くべきドライバーだと思います。みなさんが言われていると思うのですけど本当にクルマを理解しているし、クルマの開発能力が高い。自分の走りに関しても、多くの日本のドライバーはクルマの開発だけで対応しようとする人が多いのですけど、彼の場合、クルマでやるべきところとドライビングでやるべきところを分けて考えている。リアムの場合はドライビングのことだけでしたので、その海外の思考と日本の思考のハイブリッドができる。彼、頭がいいんですよ。ですので、本当にF1に向いていると思います」

 次世代の日本人F1ドライバー候補の筆頭として名前が挙げられる岩佐歩夢。だが、すでに来季のF1のシートは実質、すでに埋まっており、岩佐の2025年の昇格は難しい状況だ。今季はスーパーフォーミュラとレッドブルF1のテスト&リザーブドライバーとしてファクトリーでのシミュレーターなどを担当した岩佐、来季はどのような形になるのだろう。最終戦が終わったばかりの岩佐に聞く。

「来年に関しては何も決まっていません。未定です。いろいろ、お話としては動いているのが現状です。ただ、確約だったり、決まったものはありません」と岩佐。

「僕としてはスーパーフォーミュラで1年間戦いながら、それと同時並行でF1のレギュラーシート獲得というところに向けて動いているというところがあるので、F1のシート獲得、F1の舞台で戦ってトップを狙うというところは今後も変わらないので、そこに向けてどうなるかですね。(今季のこれからは)スーパーフォーミュラのシーズンが終わったので、ここからは海外の方(F1のシミュレーター作業など)が多くなります」と続けた。

 12月の3週目には、2025年に向けたスーパーフォーミュラのテストが鈴鹿サーキットで行われる。岩佐の参加のウワサはあるものの、確定している情報はまだ何もない。F1シート獲得に向けて、どのようなステップを踏むことになるのか。岩佐の2025年の去就には、もう少し時間が必要なようだ。

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