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ヨシムラ「KATANA 1135R」詳細解説|コンプリートカスタムの手法で5台のみを製作した究極の銘刀【ヨシムラ伝】

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ヨシムラ「KATANA 1135R」詳細解説|コンプリートカスタムの手法で5台のみを製作した究極の銘刀【ヨシムラ伝】

1980年代初頭の登場当時にAMAスーパーバイクのベース車とし1990年代のネイキッドブーム時には鈴鹿NK-1参戦車にカタナを選んだヨシムラ。ファイナルエディションを元にした“刀1135R”には登場からの20年分のスープアップとヨシムラレーサー同等の方法論が、わずか5台という製作台数の中に込められた。

文:中村浩史、迫田秀正、H&L PLANNING 写真:平野輝幸、松川 忍、H&L ARCHIVES

▶▶▶写真はこちら|ヨシムラ「KATANA 1135R」


ヨシムラ「KATANA 1135R」解説
1982年のAMAスーパーバイク、そして1995年から始まった鈴鹿NK-1と、カタナでもレースを戦ってきたヨシムラ。

一般ライダーにも長く愛されてきたカタナだが、2000年にスズキが1100台限定となるファイナルエディション(SY)をもってGSX1100Sの生産終了を宣言、これを機に公道用コンプリート車のプランが立ち上げられ、2001年4月の東京モーターサイクルショーで初披露されたのが、ここに紹介する刀1135R(カタナ・イチイチサンゴーアール)だ。

ハヤブサX-1と入れ替わるようにして生産がスタートしたこのスペシャルマシン、販売台数が5台と極端に少ないのは、ヨシムラが確保できたファイナルエディションがそれだけだったという、至極シンプルな理由からだ。

購入するには必要事項を記載した書類を同社に郵送、希望者が多数の場合には抽選という高いハードルが設けられ、結果的に競争率は6倍を超えたとのこと。

隼X-1より100万円以上も高い358万円という価格が付けられたが、使われたパーツや施された内容から考えると、むしろバーゲンプライスといっても過言ではなく、実際これでも利益はまったく出ないという。ヨシムラのカタナに対する思い入れが余すところなく盛り込まれた名刀である。

ヨシムラ「KATANA 1135R」各部装備・ディテール解説
ホイール径は前後17インチ。キャスター角を立ててスイングアームを交換したことで、ホイールベースはノーマルの1515mmから1480mmとショート化。この数値はハヤブサと同一。ディメンションは前下がりに見えるが、これはテールアップの視覚的効果が大きく、乗車姿勢はほぼノーマルと同じだった。なお、スイングアームは試作車のみTTF-1用改で、他は同形状の量産型だ。



乾燥重量は197.8kgを公称。ガソリンなしでの本誌実測重量はSTDより45kgも軽い202kgだった。カラーはこの黒のみ。ホイールはビトーR&D製マグネシウム鍛造ホイール・マグタンのJB2で、サイズは純正1.85-19/2.50-17からフロントが3.50-17、リヤが5.50-17となった。納車時に履いたタイヤはダンロップD208でサイズはF:120/70ZR17、R:180/55ZR17。



燃料タンクとシートを外した状態。製作にあたって、完全に単体としたフレームには計14カ所に補強が加えられた。その位置や方法はカタナNK-1レーサーを踏襲したとのことだが、そのルーツはAMAスーパーバイクレーサーとも言えた。

その後フレームは粉体塗装のガンメタリック仕上げを受ける。フロントフォークはGSX-R600用Φ45mm(GSX1100S純正はΦ37mm)をカタナに合わせてインナーチューブを延長、にカートリッジ内上下のバルブを独自開発のFFVS(フリーフォーク・バルビングシステム)に変更して作動性を高めた。さらにオイルの粘度や油面高さも調整している。



正面からの姿はほぼノーマルと言えるだが、ノーマル3.50-19(100/90-19)から120/70ZR17のブリヂストンBT002ストリートに変わったことでフロントタイヤが太く見える。



リヤタイヤは4.50-17(130/90-17)から180/55ZR17へ。テールランプも高くセットされ、テールアップされたと分かる。



アルミ3次元加工の削り出しトップブリッジにはヨシムラのロゴがレリーフ加工されており、車名の1135R、001~005の車両番号(シリアルナンバー)が入る。前後17インチ化に合わせてフォークオフセットもカタナ純正の50mmから35mmに設定。このトップブリッジのフォーククランプ部はミラーステーのマウントも兼ねていた。

空冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒のエンジンは、STDの1074.9cc(Φ72×66mm)からΦ74mmのピストンを組み込んで、排気量を1135.4ccへと増大。これが車名へと反映された。カムシャフトはヨシムラST-1に換装。



ヘッドのポート加工、面研も施し、クラッチには強化スプリングを装着。ノーマルの94PSから150PSオーバーまでパワーアップ。クランクケースカバーはマグネシウム製の1135R専用品。



キャブレターはヨシムラミクニTMR-MJNΦ40mmで、エアクリーナーボックスの撤去に伴って、アルミ製のオイルキャッチタンクをドライブスプロケットの脇に装着する。ブラックボディで、各気筒をつなぐピッチパーツまでブラックとした手間のかかった仕上がりになっている。



数々のカタナ用マフラーを開発・販売してきたヨシムラだが、このマフラーは1135R専用の手曲げチタンサイクロンで単品販売はされなかった。ロングサイレンサーが前時代的ではあるが、それがいい。サスペンションはオーリンズ製フルアジャスタブルをレイダウン装着する。



特徴的なカタナメーターは廃され、三角パネルにスタック製ST200クラブマンタコメーターをセット。ステッピングモーターによる特徴的な針の動きがメカメカしく、話題を呼んだ。液晶部分にスピードをデジタル表示し、ファンクション切り替えで最高回転数メモリーやオド&トリップも表示する。



受注生産ながら単品でも購入できたアルミタンクはノーマルとほぼ同形状で、容量もかわらず20L。ノーマルは約6kgのスチール製だが、このアルミタンクは半分以下の2.8kg。わずか3.2kgというなかれ、車両の高い位置にある3200gの軽量化がどれだけ効果が高いことか。



ビトーR&D製のマグネシウム鍛造ホイールにGSX-R600用ローターとキャリパーを装着。正立フロントフォークもGSX-R600用だが、フォーク全長を伸ばし、ディメンションを最適化。



リヤブレーキキャリパーはニッシン製(フロントはトキコ製)で、スイングアームはヨシムラNK-1レーサーのカタナに使用したものをベースに開発された、これも1135R専用品。リヤホイールもマグタンJB2だが、フロントがGSX-R用だったのに対し、リヤは特注品。



リヤサスペンションはオーリンズ製フルアジャスタブルショックをヨシムラがモディファイしたもので、テールアップのために全長の長い製品をベースに、サスペンション内部をチューニング。チェーンはRK製520サイズでチェーンカバーはなし。



選択肢のなさで知られるステップも、ノーマルのボルトオン式タンデムステップステーをカットしてオリジナルを装着。シフトペダル、リヤブレーキペダルとも板材のアッパーエッジを落とし(ナイフエッジ加工)、ペダルワークの誤作動を防ぐ。



数々のレプリカが作られたシートはシートJOY製で、形状こそノーマルに近いものの、5ピースによる表皮の、いわゆる1135Rスタイル。ライダーが座る部分は滑り止め効果の高いディンプル表皮を使用し、ひとり乗り専用ながらタンデム部分もきちんと残してある。

ヨシムラ「KATANA 1135R」の魅力を再確認する
名車と言われるモデルには、その指標となるカスタム車両や、豊富なバックグラウンドを持つビルダーやコンストラクターの存在がある。カタナの場合は、ヨシムラの存在がまさにそうだろう。

カタナ登場当初はAMAスーパーバイクで、鈴鹿8耐で。最先端の現場で、新しいベースエンジンで勝つためのノウハウを自ら築き上げる。スズキから供されたGSX1000Sの4バルブエンジンは当時先端であり、逆に言えば誰も手を付けていない。そのパワーを上げ、それにともなう問題を解決し、実績を挙げる。

2バルブのGSから4バルブのカタナになってパワーが上がったが、カム山のかじりやピストン破損、クランクのズレといった問題が次々現れ、ひとつひとつ解決していく。ピストンは純正でも鍛造だったが、より現実的なオーバル比を持つ鍛造品を作る。ピストン裏にはオイルを吹き付けて冷却性を上げる。

クランクも、組み立て式のピンを溶接することでズレを抑える。今でこそ当然のような手法だが、当時は原因を、解決法を探り、ひとつひとつ当たっていった。

その対策の成果はスズキが油冷エンジンに反映させて、4バルブでの高出力と高耐久性をバランスさせた。カタナのエンジンは2から4バルブへの過渡期、既に空冷の到達域にあったのだ。合わせて車体は前後18インチ化し、長いリヤショックをレイダウンさせたり、スタビ付きアルミ角断面スイングアームを使ったりした。

レースはその後油冷、水冷へと移り、ヨシムラが再びカタナに力を入れるのは1990年代だ。日本に興ったカスタム/ネイキッドブームを受けて鈴鹿サーキットを中心に行われたNK-1レースだ。最新タイヤを履ける前後17インチ仕様としてフロントフォークも大径化し、フレームも補強する。登場当初にはベーシックな部分を、この時には現代化をという形で、ノウハウは蓄積された。

そして2001年。カタナの最終仕様=ファイナルエディション(GSX1100SY)発売から約1年をおいて、ヨシムラはこれをベースとしたコンプリートカスタム、「カタナ1135R」を世に送り出す。1982年のAMAスーパーバイク、1990年代のNK-1、そしてその前後に手がけたユーザーのカスタム。それらで築いた手法を一度全部見直した上で、この20年間に進んだ最新の技術を盛り込んだ。

車体の各部補強はAMAスーパーバイク仕様とNK-1仕様のいいところをミックスしてバランス。前後サスペンションはカタナ発売時にはなかったハイグリップ・ラジアルタイヤ&前後17インチ仕様に合わせて内部構造まで見直した。スイングアームとリヤホイールは1135R専用品を用意し……という具合だ。アルミ燃料タンクも同様。

また、この時点でカムも見直されていた。カムスプロケット取付フランジを従前のベース不明から、ファイナルエディション(GSX1100SY。1990年代に販売されたGSX1100SR/SMも同じ)のタイミングに合わせるように変更した。ちなみに1135Rでは、総合的なフィーリングがよいとしてST-2でなくST-1カムを使っている。バルブスプリングもカタナ純正品だ。

吸排気には不二雄さんが考案したMJN=マルチプル・ジェット・ノズル[中空で両横に多くの吐出穴を開けたジェットニードルで燃料を吹き出す]を組んだTMR-MJNキャブレター、専用の手曲げチタンサイクロンエキゾーストも備えて、出力は150PS。

発表時のヨシムラ実測車両重量は197.8kg(前後重量配分はフロント51:リヤ49)。1135Rが放たれた2000年代の市販リッタースーパースポーツ並みのスペックも持ち合わせていた。

車両製作時にあたっての調達数が5台だったため、結果的にこれが限定数となったこと。購入に当たってはヨシムラの審査(1135Rへの熱意を書面にしたためてヨシムラへ提出)があること。358万円~という販売価格。こうしたさまざまな逸話も、1135Rを特別たらしめることとなった。

そして1135Rは、後に各オーナーが「ビシッと決まるコーナリング」「外乱にも強く、レーンチェンジすら楽しめる」と評したスタビリティなど、実際にも高い完成度を持たされていた。キャスター角は実測25度、各部補強など、カタナの17インチ化に有用なデータも残し、それは後に有力カスタムショップも手本にしていく。

ファイナルエディション発売当時でもし現代版カタナを作るとこうなる……。それをかなえたのが、このヨシムラ・刀1135Rだった。販売から25年が経つ今振り返っても、そう思える1台となった。

ヨシムラ「KATANA 1135R」関連解説
カタナ・ファイナルエディションを元に“スーパースポーツ並みのコーナリング性能を与える”を基軸としたカタナ1135R製作時の写真。

単にカスタムでまとめるのでなく、車両メーカーでは出来ないことをパーツひとつから徹底することがヨシムラのコンプリートと考え、ステー類含む専用パーツを1135Rのために多く作った。スプロケットなども1135Rを所有するオーナーの補修部品としてでなければ入手もできないところまで徹底される。



1994年に興されたネイキッドバイクレース、鈴鹿NK-1に参戦するために作られたヨシムラ・カタナレーサー。そのルーツは1982年にデビッド・アルダナやウェス・クーリーがAMAスーパーバイクシリーズを走ったヨシムラGS(X)1000Sレーサー。

シートレールをピボット直前で1度切断し、再溶接した上でテールアップさせ、レイダウンリヤサスのストロークを稼ぐ手法や14カ所のフレーム補強はアルダナ・カタナ由来と捉えていい。AMA時代からのノウハウを前後17インチも加えてアレンジした現代集大成版カタナカスタムがカタナ1135Rと言える。



2019年の東京モーターサイクルショーに展示された001。製作当時の姿をほぼそのままに、実動で好調を保っていた。



2025年9月に撮影された002。オーナーの好みとヨシムラ公認でオーリンズΦ43mmフォークやブレンボ・ラジアルマウントキャリパー/フロントディスク/ラジアルマスターやドライカーボン製タンクを装着、ミラーステーも延長して実走も楽しまれた。



同じ頃に撮影された004。これもほぼそのままで、現オーナーが大事にしている。5台とも現存し、オーナーが代わったものもあるが、ヨシムラでその所在は確認され、車検や整備に対応(一部車両への作業はオーナー至近でヨシムラを深く知るショップによる)している。



トップブリッジ左右に見える黒いパーツ=フロントフォークのトップキャップを外すと、奥まった位置にイニシャルアジャスター(下2枚目の写真)が見える。

これを付属のツール(下写真)で調整する。クラッチはワイヤ作動式。



1135R・1~5号機に共通する特徴は各所にある。一番知られるのはフォークアッパーブラケットに入るシリアルナンバー(下写真・1号車ではNo.001/005)。

ほかにはスペシャルフォークボトムケース後ろ(下写真・同じく1135R1)とスイングアーム上部左側への号機打刻(さらに下写真・「01」)。

基本的にスペアや市販品はないということでもある、超限定品/専用製作品の証ということだ。ほかにヨシムラジャケットやシリアルナンバー/不二雄さんサイン入りの1135Rカラーイラストも付属された。



135Rから生まれたパーツもある。アルミフューエルタンク(下写真)はGSX1100Sにも使用可能。容量は純正に同じ20Lで重量が5.75→2.80kgに軽減。



下は2010年に加わったGSX1100Sカタナ用カム(ST-1Lカムシャフト、ST-2Lカムシャフト)。

従前のST-1/2とプロファイルは同じだが中空化で300g/本と20%軽量化。表面もバレル処理で低抵抗化された。

文:webオートバイ webオートバイ編集部
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みんなのコメント

11件
  • ylo********
    刀好きにはたまらん
  • ぼよよん
    昔シートJOYでアンコ抜きしてもらったけど、めっちゃ座りやすいシートになった ♪
    )^o^(

    対応もとても丁寧で、遠方だったので手書きの図面をFAXで送ったり、電話で何度も打ち合わせしてくれた。
    案外話好きの人で、色々雑談しているウチに「そのうち飲みに行きましょう♪」とか盛り上がったw

    結局行けず仕舞いで、秋田さんも亡くなっちゃった...
    (T . T)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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