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「三菱らしさ」復権へ――デザインと開発の責任者が語る「冒険心」と「ランエボのDNA」は加速してゆく

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「三菱らしさ」復権へ――デザインと開発の責任者が語る「冒険心」と「ランエボのDNA」は加速してゆく

 ジャパンモビリティショー2025の三菱自動車ブースで、執行役員でありデザイン本部長でもある渡辺誠二氏と、開発フェロー・澤瀬薫氏に同時インタビュー。新コンセプトカー「エレバンス(Elevance)」に込めた“Elevate×Advance=高揚と前進”、そして三菱自動車のブランドコア「アドベンチャー」を軸に、デザインと技術がどのように結びついているのかを直撃した。三菱自動車のデザイントップ・渡辺氏と、電制四駆の第一人者・澤瀬氏の大変贅沢なインタビュー、「三菱のこれから」を占う内容でもありました!

文:ベストカーWeb編集部、写真:森山良雄

【画像ギャラリー】ジャパンモビリティショー三菱ブースの画像をしっかり見る(21枚)

三菱らしさの核心とは……「アスリート」

――まずは今回のジャパンモビリティショーで世界初披露となったコンセプトカー「エレバンスコンセプト」について教えてください。

三菱自動車デザイン本部長・渡辺誠二氏(以下、渡辺氏)/“Elevance(エレバンス)”というのは、Elevate(高揚)とAdvance(前進)の掛け合わせた造語です。三菱自動車のブランドコアである「アドベンチャー」を、だれもが体験できるストーリーに落とし込んだプロトタイプといえます。外界と室内をできるだけ一体に感じられる“シームレスネイチャー”の発想で、自然のリアリティを車内へ取り込む価値を目指しました。

――渡辺さんが考える「三菱らしさ」とはどのようなものでしょう。

渡辺氏/ひと言でいえば「堅牢で、足腰が強く、無駄な脂肪のないアスリート」です。たとえば強靭なアスリートって、そばにいると頼りがいがあるなあと感じるじゃないですか。クルマを擬人化したときに「誠実で頼れる人」に見えることをデザインパーソナリティとして重視しています。三菱自動車の開発現場には、真面目で誠実な人が多いです。そうしたエンジニアやデザイナーの人柄を造形やディテールにまで宿らせたい。どのサイズのクルマでも、一目で三菱だと分かる信頼感を形にする……それが私たちの出発点です。

――技術とデザインの先後関係は。

渡辺氏/そうですね……ご存じのとおり、うちは頑固な人が多いから……。「やりたいからやる、それを“できること”に落とし込む」というイメージでしょうか。理想と実装の往復を前提に、走りや安全・快適の価値と矛盾しないところまでデザインを磨きます。たとえば空力(Cd値)でも、三菱らしい力強い面構成を保ちながらトップクラスを狙う“健全なコンフリクト”を繰り返しています。

――澤瀬さん、今回の駆動レイアウトの狙いを。

三菱自動車開発フェロー澤瀬香氏(以下、澤瀬氏)/この「エレバンスコンセプト」は、前輪はインホイールモーター、後輪はデュアルモーター方式(左右独立ではなく、二つのモーターをミックスして再配分する三菱独自のシステム)を使っています。ヒルクライムのように後輪荷重が増す場面では、後ろ側に大きな駆動力が要ります。限られたサイズ・コストの中で最大のパフォーマンスを引き出すと、この組み合わせが合理的になる。フロントはインホイールにすることで、左右駆動力差の制御を行ってもステアリングに余計な反力が入りにくい利点があります。ブレーキと同じ“接地点での作用点”だからです。PHVシステムのパッケージングとも整合しやすいです。

――インホイールは“バネ下重量”が課題と言われます。

澤瀬氏/確かに増えますが、振動対策は解法があり、総合としては大きな問題になりません。むしろ操舵フィールやトラクションの作り込みで得られるメリットが大きい。2017年の「e-EVOLUTION CONCEPT」以来、コツコツと開発を継続してきた知見を投入しています。

――「ゼログラビティコントロール(姿勢制御)」という言葉も出ました。

渡辺氏/スキー競技の「モーグル」を見ていると、一流選手は、激しい凸凹の雪面を滑走するために、下半身が激しく上下しますが上半身はまったくブレないですよね。あれを車体のデザインで表現したかったんです。車体の姿勢づくりはデザインでも大命題ですので。

澤瀬氏/それを聞かされて、なるほどなと思いましたし、渡辺さんからイメージを聞かされて「出来ますか?」と言われたので、「ええ、わかりました、出来ます」と答えました(笑)。技術的にも“遅れのない、イメージ通りの応答”にこだわっています。S-AWCの思想を高重心パッケージでも活かし、余計な修正舵を減らしてフラットに走れることが、安心と楽しさを両立させます。

――新型デリカD:5についても聞かせてください。

渡辺氏/時代が変わっても守るべき「デリカらしさ」はキープしました。そのうえで、バンパーのセンター・グラビティを上げ、アプローチアングルをしっかり確保。顔つきはより“ブロッキー”に。冷却のための開口は空力と機能を両立させています。外装意匠は環境配慮の観点からクロームをやめ、ダークサテン塗装へ。エンブレムやロゴもトーンを統一し、機能美で“守られている感”を高めました。サイドのプロテクターを成立させるため、スライドドアのリンクや内装トリムも見直しています。

ーーついにS-AWCがデリカD:5に装備されることになりました。S-AWC搭載車史上最も車高が高いクルマだと思いますが、その点はどう思いますか?

澤瀬氏/やっと、ですよね。僕としてはもっと前からデリカD:5にはS-AWCを載せてほしかった。S-AWCは車高が高いクルマほど大事なんです。操縦安定性に効くので。

――デザインと開発の“せめぎ合い”は。

澤瀬氏/どの会社にもありますが、三菱自動車は議論が密なところがあります。空力・冷却・三菱らしい造形を突き合わせ、トップクラスのCdを狙いながら個性を落とさない。

 渡辺氏/“健全なコンフリクト”で、結局は同じ価値、頼れる走りと機能で裏付けられた造形に収束していきます。

――三菱自動車の組織としての強みは。

渡辺/大きいメーカーに比べると、デザインも開発も小ぶりなチームで、アジャイルに動けるところです。決めたらすぐ反映できる身軽さがある。

澤瀬氏/そうですね。組織が小さいので、同じメンバーが複数車種に関わるので、ブランドの共通化がしやすいです。他メーカーさんと協業する際に、いろんな車種、いろんな分野の話し合いをするんですが、先方は車種や分野ごとにメンバーが変わりますが、うち(三菱自動車)はいつも同じメンバー(笑)。これは大変だけどいいところもたくさんあって、まず話が早いです(笑)。それと、規模で勝負しないからこそ”選ばれる理由”を前面に出し続ける文化が根づいている、とも言えます。

――最近「三菱らしい商品」が続いています。この流れは今後も続きますか?

渡辺氏/もちろんです。むしろ三菱自動車のようなメーカーは、そこ(「らしさ」の追求)を強めていかないと勝負にならないと思っています。時間はかかりますけど、前述のとおり、三菱らしさ、ここでいう“誠実で頼れるアスリート”のようなクルマを今後も出していきます。おおらかで寛容、ナーバスに見えない落ち着き、行って帰ってこられる堅牢さ、そこに自然と冒険へ踏み出せる高揚を載せるクルマを出していきます。

澤瀬氏/そうですね。どんな路面環境でも、誰もが安全・安心・快適に、しかも自信を持って楽しく走れるクルマ。たとえ車種の形が変わっても、ランエボ由来のDNAはS-AWCなどの形で生き続ける……、それが三菱らしい「走る喜び」だと思っています。

――最後に、読者へのメッセージを。

渡辺氏/皆さまの期待どおり、そして“一目で三菱”と分かるデザインを更新し続けます。パーソナリティのある、頼れるクルマを楽しみにしていてください。

澤瀬氏/技術がどれだけ進んでも、私たちは「走る喜び」を忘れません。悪条件でも安心して走れる……その価値を磨き続けます。

◆まとめ

 近年、三菱自動車は「三菱らしさ」を磨き上げてきている。今回、世界初披露となったコンセプトカー「エレバンスコンセプト」はSUV+新型PHEVであり、三菱の最も得意とするジャンル。またここ数年で三菱最大のヒット車となった「デリカミニ」はフルモデルチェンジを果たして新型がデビュー、唯一無二の個性を持つ「デリカD:5」もビッグマイチェンを果たして今冬発売となる。三菱自動車がかつての勢いを取り戻してきた。大変な時代だが、「今後も三菱らしさを磨いてゆく」とデザイン部門のトップと開発フェローがはっきり語ってくれたのは心強い。楽しみに「三菱らしいクルマ」を待ちたい。

 それと、これは直接言質をとったわけではないが、新型(マイチェンではなくフルモデルチェンジ版の)デリカD:5、開発しているっぽいですぞ。「三菱らしい商品を出していく」って「そういうこと」ですよね! 期待しています!!

文:ベストカーWeb ベストカーWeb
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