使い倒された中古パトカー 人気の理由を探る
テレビ番組や車載カメラのおかげで、パトカーのカーチェイスを見たことがある人は多いだろう。火花を散らしながら容疑者を追跡し、時には身体を張って相手の車両をひっくり返すというアクション映画のような映像もある。そのような派手な光景を目の当たりにしながら、中古のパトカーを購入したがる人がいる。
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英国のバーミンガム近郊、ブライアリーヒルにある中古車販売店「エクス・ポリスカー・センター(Ex-Police Car Centre)」では、月に約30台の「元警察車両」が売れているという。もちろん客は一般人で、使い古されたパトカーを喜んで買っていく。経営者のニコラ・フィニー氏は、この種の販売店としては英国最大規模だと話す。
「わたし達は1976年以来、警察車両の中古車を販売してきました。質の悪い中古車がたくさん出回っている中で、信頼できる元オーナーと整備履歴のあるクルマを買わない理由はありません」
ワンオーナーとはいえ、ドライバーは複数いる。しかも、全員がのんびりとクルージングを楽しんでいるわけではない。ロンドン警視庁は、2018年から2019年の1年間で、105台の車両が破壊または65万6000ポンド(約1億円)で償却されたことを明らかにした。その中には、1438件の車両追跡のうち27件の「戦術的接触」が含まれているはずだ。
走行距離や損傷具合…… 気になる使用状況は
フィニーは、「市街地を走る警察車両は、厳しい使用環境を強いられている」と認めつつ、「デヴォンやコーンウォールのような地方の警察署で使われていたものは最高です」と語る。
「走行距離が長くても、状態はいいんです」――ここで彼女が言う「走行距離が長い」というのは、20万~30万kmのこと。しかも、ほとんどの場合4年という短い期間で、だ。
それでも、警察は保有する車両に保険を掛けているので、損傷があまりにひどい車両を一般に売ることは許さないだろう。ウェスト・ミッドランド警察の車両管理者であるゲイリー・マレット氏によれば、損傷した車両は第三者のエンジニアによって状態を評価され、保険会社が使用するのと同じ4つの評価区分のうちの1つが与えられるという。
そして、車両を回収業者に売却し、あとは業者が評価区分に応じてスクラップにするか、修理するか、公売に出すかが決定されるのだ。構造的な損傷を受けた車両は、警察用の装備を外した上でスクラップとなる。マレットは装備について次のように述べている。
「パトカーの装備には3500ポンド(約57万円)かかるので、可能な限り装備品を再利用しています。ドアやパネルも再利用しますよ」
構造的な損傷はないものの、道路に戻せないほど消耗している場合は、回収業者に売却し、機械部品を取り外して販売する。軽度の損傷しかないものは、警察が認可した工場で修理された後、公売に出される。同様に、エクス・ポリスカー・センターが販売するような無損傷の車両も、公売で処分されたものだ。
BMWから三菱まで 選択肢は意外と豊富
エクス・ポリスカー・センターには常時約30台の中古パトカーが並んでおり、主にBMW X5、三菱ショーグン(パジェロの海外名称)、スコダ・オクタヴィア、プジョー308、ヴォグゾール(オペルの英国ブランド)・アストラなどがある。すべてディーゼル車で、新車から5年以下のものが多い。
取材班が訪れたときの価格は、2013年式ヴォグゾール・アストラ1.7 CDTi Tech Line Sports Tourer(走行距離24万km)の3295ポンド(約54万円)から、2019年式BMW X5 30d SE Auto xDrive(同12万km)の2万9995ポンド(約490万円)までと幅がある。
中古車市場全般に言えることだが、中古パトカーの価格は上昇傾向にある。同時に、警察が新車の調達に問題を抱えているため、処分される中古車は少なくなっている。
幸いなことに、エクス・ポリスカー・センターの中古車は十分にきれいな状態のものばかりだ。しかし、もし綺麗なメタリックカラーの個体を探しているなら、パトカーは諦めたほうがいい。ほとんどの場合、回転灯などのライト類やアンテナを取り付ける「穴」が開いた状態で処分され、修理業者がそれを埋めて再塗装する。
そして当然ながら、これだけ使い込まれると、内装は少々くたびれた感じになる。ダッシュボードにも取り付け穴は残っている。タッチスクリーンはそのまま使えるが、通信装置をまるごと交換することもあるという。
メンテナンスは万全? 信頼できる整備履歴
しかし、警察による整備履歴に惹かれてパトカーを購入する人は少なくない。「警官の安全が第一です」とマレットは言う。
「ブレーキ、サスペンション、ステアリングはOEM部品で交換します。多くの軍隊がそうであるように、わたし達も独自のワークショップを持っています。メーカーによる整備間隔が3万kmの車両でも、実際には同じ期間に4回、わたし達によって整備されていることがよくあります」
エクス・ポリスカー・センターでは、時々、機動隊バスのような興味深いものを目にすることがある。ミサイルや割れたガラスから警官を守るための二重窓を備え、キャビンヒーター、収納ロッカー、多数の座席、さらには牢屋までついている。犬用のケージが取り付けられた三菱ショーグンもあった。
時折、機密書類を積んだままの車両が届くそうだ。フィニーの印象に残っているのは、アン王女に同行する運転手への指示が残されたレンジローバーだという。また、ある車両には、「蛇が乗っているので運転しないように」というメモが入っていた。幸い(不運?)にも蛇は発見されなかったそうだが、古いパトカーの運転席の下を掃除するときには、覚えておくといいだろう。
パトカーだったBMW X5に乗ってみた
エクス・ポリスカー・センターを訪れた際、2018年式BMW X5 30d SE Auto xDriveに試乗させてもらった。
25万9000km走行しているが、その半分しか走っていないように感じられる。インテリアは手入れが必要だが、パーキングブレーキのスイッチが割れていることを除けば、良好な状態と言える。
車両の健康状態を示すインジケーターには、最後に大きな整備を受けたのは15万6000kmと表示されている。販売店では、警察はサービスコンピュータをリセットしないため、整備記録の証明になるとしている(最近、タイミングチェーンが交換されているようだ)。
希望価格は1万9995ポンド(約327万円)とのこと。他と比較をしようにも、同じようなX5を見つけるのは難しい。装備の充実した2018年式のMスポーツなら、これの半分以下の走行距離でたくさん見つかるが、約1万2000ポンド(約200万円)以上高くなってしまう。信頼性の高い「アシ車」として購入するなら、中古のパトカーはお手頃と言えるかもしれない。
購入時に注意すべき点 ホントにお得なの?
ウェスト・ミッドランド警察の車両管理者、ゲイリー・マレットは、「パトカーだった車両を買うときは、しっかり点検してください」と注意を促している。
「おそらく頻繁に整備されているのでしょうが、それでもパトカーとして酷使されてきたことに変わりはありません。整備履歴と全体的な状態を確認し、アクセサリーの穴埋めや塗装の具合に注意を払ったら、人が頻繁に触れるポイントをチェックします」
「例えば、ドアは何度も開け閉めするし、シートにはさまざまな体型の人が座る。シートベルトやスイッチ類は何度も使用されているはずです。インフォテインメント・システムが機能するかどうか、ダッシュボードやその周辺に見苦しい取り付け穴がないかどうかも確認しましょう」
価格に関しては、走行距離が少なくても一般の中古車より高くなるというわけではない。例えば、2010年式三菱ショーグン3.2 DI-DC Equippe LWB(走行距離10万6000km)の場合、他の店舗で見つけた同年式、2オーナーの一般車が14万6000km、1万950ポンド(約180万円)だったのに対し、1000ポンド安く販売されている。
もちろん、走行距離の多いものを選べば、さらに安くなる。例えば、2018年式18万5000kmのヴォグゾール・インシグニア2.0 Turbo D Design Sports Tourerは8995ポンド(約147万円)で、他店舗のワンオーナー11万kmのインシグニアより約2000ポンド安いのだ。とはいえ、こちらの年式は若干新しく、ボディカラーも良い。何事もそうだが、何に対してお金を払うか決めるのは自分だ……。
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