昭和は遠くなりにけり・・・か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「三菱 デリカスターワゴン」だ。
三菱 デリカスターワゴン4WD(P25W型):昭和61年(1986年)6月発売
デリカスターワゴンが7年ぶりにフルモデルチェンジし、3代目となったのが1986年(昭和61年)6月のことだ。小型キャブオーバー型ワンボックス車に三菱得意の4WDシステムを組み込み、骨太なイメージで人気車の地位を得ていたが、3代目もそのコンセプトは引き継がれた。
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エクステリアはスペース効率を重視したキューブスタイルを基本に丸味を持たせるという、当時としては斬新なもの。フロントウインドーを大きく傾斜させたスラントノーズ、ルーフの左右両端をビード状に持ち上げたエアロルーフ(標準ルーフ)、エアダム形状のサイドスカートにより空力性能を高め、高速走行時の安定性を向上を狙ったのは、時代の要請でもあっただろう。4WD 2500ディーゼルターボのEXCEEDにはフロントガードバー、大型サイドステップ、リアアンダーガードが標準装備され、道なき道を行く本格的四駆であることを主張していた。
スターワゴン4WDには、サイクロン2500ディーゼルターボとサイクロン2000の2タイプのエンジンが用意された。2.5Lディーゼルは大排気量ならではのビッグトルクに加えて、渦流室式の新燃焼室や燃料噴射の流量特性を向上させた新噴射ノズルなどの採用によりレスポンスをアップ。オフローダーとしての走破能力を確保しつつ、オンロードでの小気味いい走りを両立させることに力を入れた。ガソリン仕様のサイクロン2000は、超速吸気方式、瞬間燃焼方式、全速排気方式など、三菱独自のサイクロン・メソッドを駆使したエンジンで信頼性の高いものだ。
搭載される4WD機構はパートタイム式となる。ローとハイのレンジ切り換えができるトランスファーを備え、2Hは後輪駆動となり一般道路や高速道路などのオンロードでの走行時に使用する。4Hは、4輪駆動高速レンジで、雪道、泥地、砂地、悪路など。2輪駆動走行が困難なときに使う。4Lは、4輪駆動低速レンジで、とくに大きな牽引力やエンジンブレーキを必要とするときなどに選ぶものだ。トランスミッションはデビュー当初は5速MTのみだったが、1988年9月のマイナーチェンジで、ディーゼルターボの4WD車にも4速ATが設定された。
サスペンションはフロント:ダブルウイッシュボーン/リア:リーフスプリングリジッドとなっている。フロントはアッパーアームにトーションバースプリングを取り付け、スペースを有効に使うとともに地上高を稼ぎ、悪路での走破能力を向上させている。2WD車には乗り心地と安定性に優れるI(アイ)アームを利用し、4WD車には耐久性に優れるAアームを使用するなど使い分けている。
リアサスペンションはリーフリジッドの頑丈さだけでなく、ゴムブッシュをリファインすることなどで乗り心地を向上させている。とくに4WD車はリーフ位置をアクスル軸の上に配置することで悪路走破性を高めた。シンプルなパートタイム4WD機構とこのサスペンションの組み合わせがデリカスターワゴンの人気を決定づけたと言って良いだろう。
さらにこの手のオフローダーとしては珍しいラック&ピニオン式のステアリングギヤボックスや、フロントに厚さ22mmのベンチレーテッドディスクブレーキを採用するなど、走りを十分に楽しめる仕様とするとともに、リアのリーディングトレーリング式ブレーキには、空車時の後輪の早期ロック防止を果たすGセンシングプロポーショニングバルブも装備した。
全体的なパッケージングの良さや趣味性を持たせたことからデリカスターワゴンの人気は根強いものとなった。デリカがその後も代を重ねていってもスターワゴンの人気は衰えず、5代目のデリカD:5となった2020年現在でも乗り続けるユーザーも多い。それだけ基本性能が高く、実用性と趣味性が両立していたといえるだろう。
三菱 デリカスターワゴン4WD 2500ディーゼルターボ EXCEED 主要諸元
●全長×全幅×全高:4460×1695×1975mm
●ホイールベース:2240mm
●重量:1740k
●エンジン型式・種類:4D56型(ターボ付)・直4 SOHCディーゼルターボ
●排気量:2476cc
●最高出力:85ps/4200rpm
●最大トルク:20.0kgm/2000rpm
●トランスミッション:5速MT×2
●タイヤサイズ:215SR15
●価格:251万2000円
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