モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、1993年のル・マン24時間レースを戦った『ジャガーXJ220C』です。
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『ジャガーXJR-11』スプリントでの速さを求めたジャガーターボ【忘れがたき銘車たち】
いまからちょうど30年前、1993年のル・マン24時間レース。この年のル・マンは前年の出場台数が大きく落ち込んだこと、世界スポーツカー選手権(SWC)や全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)など、長らく時代を形成してきたグループCカーのシリーズが軒並み終了したこともあり、1980年代以来久々にGTカーのクラスが復活した年であった。
この1993年、そのル・マンに戻ってきてGTカークラスに参戦したのが『ジャガーXJ220C』だった。そもそも市販車の『XJ220』は1991年に誕生したジャガーのスーパースポーツカーで、グループCカー時代にジャガーのマシンを手掛けてたトム・ウォーキンショウレーシング(TWR)が開発、生産を担なった車両だった。
『XJ220』はコンセプトの時点ではリヤミッドにV型12気筒エンジンを積み、フルタイム4WDやアクティブエアロを採用するはずの車両だったが、市販化にあたってはコストなどさまざまな理由からそれらを断念。
エンジンはアメリカのIMSA-GTP向けに開発されたプロトタイプカー『XJR-10』に積まれていた3.0リッターV6ツインターボをベースに、3.5リッターへと排気量をアップして搭載した。また駆動方式も四駆ではなく、後輪駆動に改められていた。
こうして誕生した『XJ220』をベースにTWRは1993年のル・マン参戦に向けて、レーシングカーへとアップデートした。モノコックは市販車と同じアルミモノコックだったものの、ボディカウルをグラスファイバー製の脱着式のものへと変更。さらにリヤウイングがボディ一体型から独立式のオリジナルにモディファイされていた。
エンジンはロードカーと同じ3.5リッターV6でありながらも規定でリストリクターが装着され、500馬力程度とロードカーよりも若干パワーダウンした数値に留められていた。
このように『XJ220“C”』となって軽量化が進み、レーシングカーとなった『XJ220』だったが、基本的にはロードカーそのままという出立ちで、ライバルだったポルシェ911ターボS LM(964型)よりも80kgも車重が重いマシンだった。
そんな『XJ220C』は1993年のル・マンに3台が送り込まれ、まず予選でライバルのポルシェに遅れをとってしまう。しかし決勝では3台のうち2台がオーバーヒートやガスケット破損で姿を消したものの、デイビッド・ブラバム/ジョン・ニールセン・デイビッド・クルサード組の50号車が総合15位、GTカーが対象のカテゴリー4のトップでフィニッシュ。見事、GT復活初年度を勝利で飾った。
ところが、ル・マンに出場していた『XJ220C』にはエキゾーストに触媒が装着されていなかったとして車両違反が問われてしまう。これは『XJ220C』が当てはまるIMSAインターナショナルGT規定では、市販状態でなければならないことが定められているにも関わらず、市販車で装着されていた触媒が付いていないということが違反の理由だった。
このことは予選でも問題にされていて、決勝には出場できたものの、再びレース後に違反の裁定が下され、結局、『XJ220C』の優勝は取り消しとなってしまった。ちなみにこれを違反としたのはル・マンを主催するACOでテクニカルコミッショナーを務めていたアラン・ベルトーという人物で、彼はこれより以前にもウォーキンショウと“揉めごと”を起こしており、そのこともこの失格劇に大きく関係していたという向きもある。
その後、『XJ220C』は別チームに受け継がれ、ル・マンへも参戦したが1993年ほどの活躍を見せることはなかった。
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