1980年代のクルマといえば、ハイソカー、街道レーサー、そしてボーイズレーサーが人気を博していた。この連載では、ボーイズレーサーと呼ばれた高性能でコンパクトなハッチバックやクーペたちを紹介していこう。今回は「マーチ スーパーターボ(EK10)」だ。
日産 マーチ スーパーターボ(EK10型・1989年1月発売)
1982年(昭和57年)10月に発売された初代マーチは、1985年2月のマイナーチェンジでターボモデルが追加された。搭載されたMA10ET型はリッターターボ初のシーケンシャルインジェクションを採用し、最高出力85ps/最大トルク12.0kgmのパワースペックを発生。710(ATは730)kgのボディを軽快に走らせた。
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マーチターボは走りを重視する若年層にウケた。だがモータースポーツでは987ccの排気量は1.7のターボ係数が掛けられるため1678ccとみなされ、2Lクラスとなってしまい、ライバルに対して苦戦するのは明らかだった。そこで日産は1988年8月に、ターボ係数を掛けても排気量が1.6Lクラスに収まる(1581ccとみなされる)ようボアを2mm縮小して排気量を930ccとしたラリー専用車「マーチ R」を発売する。
驚かされたのは、新開発のMA09ERT型エンジンは日本初となるターボとスーパーチャージャー(以下S/C)のダブルチャージを採用していたことだ。最高出力は110psで車重が740kgだから、馬力荷重は6.7kg/ps。フロントにビスカスLSDを備え、超クロスレシオの5速MTを搭載する本格派だ。マーチ Rは期待にたがわず全日本ラリー選手権やダートトライアルなどで活躍する。しかし競技専用車両のため、ユーザーから市販型を望む声が上がったのは当然のことだった。
そうした声を受けて1989年1月に登場したのが「スーパーターボ」だ。マーチRと同仕様のエンジンはMA10をベースに排気量を下げ、S/Cとターボで過給する方式を採用。ルーツ式のASN-09A型S/Cは電磁クラッチにより約4000rpmで過給はHT10型ターボに切り替えられる。低回転域をS/Cが補完するため、ターボを大型化してもドライバビリティが低下しないよう制御できるのが複合過給機システムのメリットだ。ミッションにはマーチターボと同レシオの5速MTに加え、3速ATが用意されるのも市販仕様ならではだった。
サスペンションは形式こそマーチターボと同じだがハードセッティングされ、前後にスタビライザーを装着。ブレーキはフロントがベンチレーテッドディスクとなり、パッドもセミメタルにして過酷な制動に対応している。770kgの軽量ボディと110psの組み合わせだから加速は極めて力強いが、コーナーでは力でねじ伏せるようなテクニックが要求されるジャジャ馬だった。
日産 マーチ スーパーターボ(1989年)主要諸元
●全長×全幅×全高:3735×1590×1395mm
●ホイールベース:2300mm
●重量:770kg
●エンジン型式・種類:MA09ERT型・直4 SOHCターボ+S/C
●排気量:930cc
●最高出力:110ps/6400rpm
●最大トルク:13.3kgm/4800rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/65R13
●価格:130万8000円
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