望ましくないイメージで避けられてきたかつらが、近年レベルアップを果たして人気となっている。植毛よりも安全なこと、値段が手頃なこと、あらゆる髪型を叶える柔軟性がTikTok世代の心を掴むなか、社会での受け止められ方も変容してきた。
「髪を切ったばかりでね」と、タイラー・ウィリアムズは語りかける。彼はまっすぐカメラに向かって、刈りたてのフェードを見せつける。「ちょっと外に出かけて披露してくるよ。だって、古い格言にもあるだろう? 森の中で木が倒れたとしても、そこに誰もいなかったら、いったい誰がそのことを知るというのかってね」
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ナッシュビルのコンテンツ・クリエイターであるウィリアムズが発信するTikTok動画に80万以上のフォロワーがいるのも、このような軽口がウケているからだ。しかし、彼の自慢の髪は実はすべて彼のものというわけではない。ウィリアムズがつけているのはヘアシステムといい、頭皮やサイドのテーパーフェードにシームレスに溶け込む現代版の“かつら”といえるものだ。ほとんどの人は見てもわからないだろう。
「知っている人は知っていますが、知らない人にはわかりません。だから、動画の視聴者の多くは私がごく普通の髪型について話していると思っています」と、ウィリアムズは米版『GQ』に語った。実際には、33歳の彼は頭のてっぺんが禿げ上がっている。「散髪」の時期が来ると、ヘアスタイリストが地肌の頭に新しいシステムをテープで貼り付け、伸びたサイドをきれいにフェードアウトさせる。「私はこれを脱毛症に対する一般的な解決策だと考えています」と、ウィリアムズは言う。「不名誉なことに見られるのは嫌ですからね」
https://www.tiktok.com/@tylerstantonnn/video/6902542229479394566かつらの着用を公言する人々
コロナ禍にヘアシステムを取り入れたウィリアムズは、自身の頭髪について公に語ることはなかった。しかし、彼に腹を立てた元恋人があるとき彼の秘密を暴露すると、ウィリアムズは自らの告白動画で彼女を返り討ちにしてしまった。彼の動画はオンラインで圧倒的な支持を獲得したのである。
「ネット上でとても好意的に受け止められました。そう、誰もが自分に自信を持つ権利があるんです」と語る彼は、パンデミック後のSNSにおける「本物志向」の高まりを指摘する。「私がハゲたのは自分のせいではありません。だから、あきらめてスキンヘッドにする必要はないんです。できることがあったから、それを選んだのです」
彼は決してひとりではない。TikTok、Instagram、YouTubeを見ると、かつては恥ずかしいとされたかつらが今やブームとなっていることがわかるだろう。理髪師たちは舌を巻くようなビフォーアフター動画を共有し、以前は自意識過剰ぎみに恥じらっていた男性たちは、まるでおろしたての「エア ジョーダン」を自慢するように自身の新たなヘアシステムを誇示している。
業界の人々によれば、SNSでの勢いは単に投稿の閲覧数の増加に留まらず、現実世界での需要の高まりにもつながっているという。主要都市の理髪店では、ミレニアル世代やZ世代がオーダーメイドの髪形にセットしてもらおうと予約が急増している。
ロンドンのヘアスタイリスト、アダム・フレッチャーは、最初は副業としてヘアシステムの取り付けを行っていた。しかし依頼の急増に伴い、数年前に理髪店を売却して本格的に始めたという。「需要がありましたから。トルコで外科手術を受けるのはかなりリスクがあるので、禿頭の人はやりたがらない人が増えています」。そう語るフレッチャーは、ヘアシステムの予約は毎日立て続けに入っていると付け加えた。
フレッチャーによれば、クライアントの多くは、傷跡が残る可能性があり、しかも期待通りの結果が得られるとは限らない植毛手術に何万ドルも投じることに警戒心を抱いているという。「ヘアシステムは外科手術ではないので、事前に試すことができます。でも、ほとんどの人はお試しのヘアシステムをそのままにしていきます。即座に結果が得られますからね。3時間後には、彼らはふさふさの頭髪とともに帰っていくんです」
“かつらのルネサンス”が起きている背景には、不況の影響もあるのかもしれない。ヘルシンキに住む32歳の販売員、ユハ・セッパネンは植毛を迷っているが、費用がネックになっているという。「髪のない範囲が大きいので、複数回の植毛が必要になります。たぶん2、3回は通うことになるでしょう。かなりの出費です」。彼は数年前にセンター分けのヘアシステムに挑戦し、その結果に満足している。彼は不確実な植毛のギャンブル性よりも、ヘアシステムの柔軟性を選んだ。
「もし2回行った後でも薄かったら? もし失敗したら? 髪の生え際をV字にしたいのに、まっすぐすぎたり、高すぎたりしたら?」と、TikTokで自身の髪型についての動画を投稿するセッパネンは言う。「ヘアシステムを使えば、テープをちょっと下げて眉毛のほうに近づけるだけでいいんです」
数年前、ある男性をヘアシステムで変身させた様子をTikTokに投稿しバイラルとなったカルガリーのヘアスタイリスト、ダニ・ニーヴンには、同じマジックを叶えてほしいと懇願する男性たちからのDMが殺到した。彼女の理髪店は現在、ヘアシステムを求める顧客で定員に達している。一日に約5人の男性の相談に応じる彼女は、需要に応えるためにスタッフの訓練も行っている。
「ヘアシステムの人気がここ最近爆発的に伸びているのは、以前よりもずっと格好よく見えるようになってきたからです。それと、その変身ぶりをSNSで紹介する勇気ある男性たちによって、好印象が持たれるようになったのも大きいですね。また、ヘアシステムがいかにリアルで高品質であるかに気づいた男性たちも多いです」と、ニーヴンは言う。「以前であれば、“かつら”という単語を聞けば誰もがドナルド・トランプのような不自然なヘアピースを想像したでしょうから」
https://www.tiktok.com/@rebel_barber_xx/video/7151842914094681349進化した“ヘアシステム”
長年、ジョークのネタにされがちだったかつらも、近年は素材や技術の進歩のおかげでレベルアップしている。80年代の汗でびしょびしょになったモップのようなものとは違い、近年では極薄のレースやポリウレタンのベースが下地に使われ、頭皮に消えるように馴染んでしまう。より高級なものは、着用者の肌の質感、色、発毛パターンに合わせて本物の人毛を手作業で結んでいる。
「まるで自分自身の肌をつけているような感覚になります。まるで何もつけていないかのように、目ではわからなくなるんです」と、トロントを拠点とするTVパーソナリティでヘアスタイリスト、そして自らもヘアシステムを着用しているアーロン・オブライアンは言う。
快適さはもちろん、最新の接着剤は持続力も優れている。ヘアシステムをつけたまま、ワークアウトをしたり、シャワーを浴びたりはおろか、水泳をしても心配はいらない。「2~3週間はヘアシステムがずれたり、頭皮から外れたりすることなく着用できています」と、オブライアンは言う。これは、より強力で刺激の少ない接着剤やテープのおかげだと言う。
常にフレッシュな状態に保つため、ヘアシステムの着用者は通常、数週間ごとにサロンに通い、再装着、トリミング、地毛との入念なブレンドを行う。ヘアピースの交換は5カ月に一回程度だ。単価は300ドルから1000ドルで、品質によって異なる。「サブスクリプションサービスのようなものです」と、オブライアンは言う。
オブライアンは30代で2回の植毛を受けたが、求めていたほどふさふさした髪は得られなかった。加えて、手術後に処方されることの多い脱毛治療薬フィナステリドには、勃起不全などの好ましくない副作用があった。彼は4年前、ボリュームのあるポンパドールにスタイリングするためヘアシステムを取り入れた。
「やっと思い通りの髪が手に入ったと、とても興奮しました。公表についてはちょっと物怖じしましたし、2週間くらいは自意識過剰でしたけどね」と、オブライアンは振り返る。「でもその後は、ヘアシステムをつけているなんて知られても気にならないって感じになりました」
彼は自身が出演する朝の番組で秘密を公表することにした。フレッチャーとニーヴンはヘアシステムの着用を隠している顧客もいると話すが、オブライアンは堂々と明言することを提唱している。「男性たちは認めるべきだと思います。髪はアクセサリーのように扱うべきです。ジュエリーのように、あるいは女性がエクステンションをつけるようにね。見た目を向上させ、自信で満たしてくれるアクセサリーだというのは髪も同じなのですから」
ロサンゼルスを拠点に活動する俳優でヘアスタイリストのエレナ・マラヴェリアスも同意見だ。彼女は美容と身だしなみに関する社会通念のあり方を、男女間でより対等にしていくことを求めている。
「もし私がある男性と付き合っていて、イチャイチャしているときに彼の髪に手を入れて、彼がヘアシステムをつけていることがわかったとしても、私は気にしません。だって、私もエクステをつけていますし、化粧で自分を高めてもいますから。もし男性がそうしたいなら、何が問題だというのでしょう?」と、彼女は言う。「私はむしろ、自分に自信を持った男性とデートしたい。髪が抜けた自分の見た目が気に入らないからといって、不満を抱えているだけの男性よりもね」
確かにそうかもしれないが、ありのままの自分を受け入れるという考え方はどうだろうか。真の自分を受け入れること、自己愛を育むこと、その他セラピストが教えてくれることはどうだろう? 本当の自分とは、欠点も何もかも含めてあらゆる部分を受け入れ、自分に自信を持つことではないだろうか?
アイダホのコスメトロジスト、イシドロ・アルマラスにとって、ビスポークの髪をなびかせることは、いつでも好きな格好をする自由を手に入れたことを意味する。「ショートヘアにしたかと思えば、ガラッと変えてロングヘアにしたり。ボウルカットにしたこともあります。ブロンドにして前髪を短くしたことも、ソフトモヒカンみたいにしたことも。今はマレットにしているところかな」と、37歳のアルマラスは言う。「坊主にしたくなったら取ればいいだけ。どんな髪型だってできます」
いずれにしろ、人生はシミュレーションだ。せっかくだから楽しめばいい。新キャラを次々とアンロックできるのに、同じキャラクターで遊び続ける理由もない。「今の世界のあり方を考えると、本物の人なんていません」と、アルマラスはつぶやく。「みんなフェイクです。誰もが何かしら“作って”います。できることはたくさんあるし、それでいいんですよ。それでハッピーになれるならね」
From GQ.COM
By Alex Nino Gheciu
Translated and Adapted by Yuzuru Todayama
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