トヨタのヤリスは自販連の「乗用車ブランド通称名別順位」で今年2月トップに立ち、これで8カ月連続の1位。軽自動車を含めたランキングでも6カ月連続の首位となった。新たなベストセラーとなっているヤリス。その売れている理由はどこにあるのか?
ヤリス、ヤリスクロス、さらにGRヤリスとラインナップを広げ、パワートレーンもガソリン車あり、ハイブリッド車ありと充実しているが、ヤリスシリーズに死角はないのか? それほど魅力を持つクルマなのか?
現代の名車は中古でも輝くのか!? プロが選んだ「ベスト20」2020年版の中古車情報最前線
モータージャーナリストの岡本幸一郎氏が徹底的に分析します!
文/岡本幸一郎 写真/ベストカー編集部、日産
【画像ギャラリー】驚異の売れ行き!! 新たなベストセラー、トヨタ ヤリスを分析する!!
■ヤリスの販売台数は3モデルの合計
販売台数はシリーズ3モデルの合計となるが、それを置いてもすでに定番になりつつあるといってもよいだろう
自販連による「乗用車ブランド通称名別順位」において、2020年に首位になったことがあるのは、ヤリス、ライズ、カローラの3つで、それぞれ7回、3回、2回、月販首位を獲得している。
ただし、年間の販売台数では、ヤリス15万1780台、ライズ12万6040台、カローラ11万7370台となっている。
しかし、ヤリスはヤリスクロスとGRヤリスとの3モデルの合計、カローラもカローラスポーツとカローラツーリングと旧カローラフィールダーとの4モデルの合計であり、単独で2020年に年間でもっとも売れたのはライズだ。
しかも姉妹車のロッキーを加えると、その差は実質的により大きなものとなる。
そのライズも依然として売れゆきは上々ではあるが、発売から1年あまりが経過して、やや勢いに陰りが見られはじめたのに対し、旬を迎えたのがヤリスシリーズといえる状況となっている。
本稿を執筆している時点で、2020年7月から2021年1月まで7カ月連続して「乗用車ブランド通称名別順位」(※軽自動車は含まない)で首位に君臨しており、この先も当面続きそうな勢いすら感じさせる。
ご参考まで、ヤリスは日本だけでなく欧州でも、2020年モデル別販売台数ランキングで、1位VWゴルフ、2位ルノー ルーテシア(現地名「クリオ」)、3位プジョー208、4位オペル コルサ、5位シュコダ オクタヴィアに次ぐ6位に名を連ねるほどの人気を博している。
■売れゆきはヤリスクロスがヤリスを上回る
シリーズ別にみると、ヤリスクロスがヤリスを上回る売れ行きを見せている
ところで、ヤリスというのはもともと海外名だったことはご存知のことだろう。
現行型で車名を変更したのは、TNGAプラットフォームへの刷新、国内全チャンネル併売化、WRCの日本開催など、クルマ自体とそれを取り巻く環境が大きく変わるなかで、「新しいスタートを切る」という想いを込めて、新たにヤリスを名乗るはこびとなったという経緯がある。
ヤリスのこれまでをざっと振り返ると、2月に標準のハッチバックが発売され、当初はネッツ店のみでの取り扱いだったところ、5月より全販売店で取り扱いが始まり、その後は8月にヤリスクロス、9月にGRヤリスのデリバリーが始まった。
2020年の年間販売の内訳は、ヤリスのガソリンが約6万1840台、同ハイブリッド が約5万3460台、ヤリスクロスのガソリンが約1万2710台、同ハイブリッドが約2万100台、GRヤリス が約3670台である。
ヤリスクロスが発売されてほどなく売れゆきでヤリスを上回り、最新の2021年1月の販売の内訳は、ヤリスが約8180台、ヤリスクロスが約9350台、GRヤリスが約980台となった。
人気グレードは、ヤリスはハイブリッドがZグレード、ガソリンがGグレードで、ヤリスクロスはハイブリッド、ガソリンともZグレードとなる。GRヤリスはいわずもがな、別格的な位置づけのRZのHigh Performance だ。
販売比率がヤリスはガソリンが高く、ヤリスクロスはハイブリッドが高いあたり、それぞれ求められるのが価格の安さか付加価値の高さかという違いがうかがいしれて興味深い。
購入者について、ヤリスのようなコンパクトカーはなおのこと、女性の家族が主に使用しているケースが多そうで実態は違ったものになりそうだが、ひとまずデータとしては、年代は50~60代が50%以上を占め、性別は男性が60%以上に達しているという。
■デザインや走りの質感アップが魅力
室内はさほど広いわけではないが、コンパクトさは使い勝手のよさにもつながる
そんなヤリスの人気のヒケツは、まずはこの斬新なデザインに違いない。価格やサイズはもちろん、小さいながらも存在感があり埋没することのない容姿には、積極的に選びたくなる力がある。前身である3代目ヴィッツがいまひとつパッとしなかったのとは大違い。この路線変更は大当たりだったように思う。
室内や荷室はそれほど広くないが、広さを求めるユーザーにはヤリスクロスのような別の選択肢を用意できるのも体力のあるトヨタならでは。だからこそヤリスではより思い切ったことができて、それがまた功を奏したわけだ。
さらには実際に走らせても、わかりやすい魅力がある。
THSは既存のものに比べてアクセルレスポンスが高められていて、瞬発力があり乗っていて楽しい。そのハイブリッドだけでなくガソリン車ともども、ビックリするほど燃費がよいことも強みだ。そのあたりが多々報じられたり実際に乗った人の口コミ等で伝播するなどして、よいイメージがますます高まっている。
加えてTNGAの採用により走りの質が高まったのも一目瞭然。また、アイドリングストップ機構を廃したのもコストをはじめいろいろな面で非常に見識だと思う。
それらのよさが、5月からトヨタの全販売店で取り扱われるようになったことで、より多くのユーザーがヤリスに触れる機会が増えたのも好都合だった。
■ライバルは多いがトヨタならではの強みがある
モデル末期にもかかわらず7万台以上を売り上げたノートは、昨年11月に新型となったため強力なライバルになり得る
かたや、周囲の競合車を見わたすと、かつてはもっと強敵だったはずのフィットにいまひとつ勢いがない。同時期に発売されたが、2020年の販売台数は9万8210台と伸び悩んだ。新鮮味の薄れた同門の強敵アクアも5万9548台、マイナーチェンジのあったスイフトも2万8108台にとどまった。
逆に、モデル末期でも7万2205台を販売したノートは、これから強敵になる可能性がある。
軽自動車にも競合する車種はあるだろうが、ヤリスを選ぶ人は軽自動車には抵抗を感じる層だろうから、そこは分けて考えてよいかと思う。
一方のヤリスクロスは、同じシリーズであることに違和感を覚えるほど外見の雰囲気が異なるが、インテリアや機構な共通性は高い。装備面でも、広く確保された荷室や電動テールゲート、運転席パワーシート、3分割可倒式リアシートなど、このクラスとしては初となるものを含め充実しているのも強みだ。
こちらの競合車は、同門のライズ/ロッキーがまだまだ侮れず、2020年に急減速したものの、まもなく新型になるヴェゼルも強敵になるのは間違いない。
趣味性の高いGRヤリスも、より多くの人に興味を持ってもらえるような取り組みを行い、販売拡大に取り組んでいる
GRヤリスについては、この類いのクルマは興味を持った人に行きわたると販売が急激に落ち込むことが多いが、トヨタではより多くの人に興味を持ってもらえるよう、「ちょこっとモビリタ×GRヤリス」のような新しい取り組みも行なっており、今後も新しい施策を考えていくという。
「ちょこっとモビリタ×GRヤリス」(リンク先)https://mobilitas.gazoo.com/posts/8911025 https://www.toyota.co.jp/mobilitas/index.html#news
■気になる点はあるが、そこは今後の改良に期待
直進安定性やフロア振動など、走りに関して気になる部分もないではないが、瞬発力と低燃費は大きな魅力だ
クルマ自体に気になる点もないわけではない。例えば走りの面で、直進安定性や乗り心地やフロア振動など細かいところでは多々ある。ヤリスのADASは交差点の右左折は大丈夫だが、ACCが渋滞対応していないのも惜しい。
かといって、それが購入するかどうかにはあまり関係なく、ユーザーもそれほど多くを望んでいるわけではなさそう。
価格とデザインとすでに持っているものだけで充分に魅力的で、それなりに期待にも応えていて、クルマとユーザーの関係がちょうど上手くはまっていてよい状況にあるように見える。あとはできるところから徐々に改良していけば当面は御の字だろう。
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