オフロードマシン ゴー・ライド6月号発売【楽しく身につく堀田式テールスライド】
オフロードマシン専門誌『ゴー・ライド』連載企画『令和の世に放つ 愛と青春のオフロードマシン』より、バイクが熱かった時代にラインナップされた懐かしのオフロードマシンを、”迷車ソムリエ”ことムッシュ濱矢が振り返る。本記事では、長く乗られてきた、長く愛され続けてきた機種をピックアップし、ムッシュが独断と偏見で紹介する。
●文:ゴー・ライド編集部(濱矢文夫)
オフロード版「星を継ぐもの」
新しいものが続々と登場して購買意欲を刺激する。経済の観点に立つと、まっとうな話だけれど、そうはイカのキ◯タマで、それだけじゃない場合もある。過去からビッグリフォームせず、いいところを受け継ぎながら長らく継続して存在してきたもの。必要な機能が備わっていて、使用目的に不満がないのなら、がらりと大きく変更する必要がない。
わかりやすい例がホンダのスーパーカブ。商用車としてだけではなく、シティコミューターとして考え抜かれたスタイルや機能は1958年の誕生から変わっていない。キッコーマンの卓上醤油瓶のデザインは、ヤマハ発動機最初のモデル・YA-1のデザインを手掛け、その後ヤマハ車の多くに関わってきたGKグループの創始者・榮久庵憲司氏が手がけたもの。細い首が指で持ちやすく、末広がりの下面は置いて安定している。
そんなモデルを集めてみた。「継続は力なり」という有名な慣用句があって、それは続けていればいい結果につながるという意味だけど、考えによっては力があるから継続できたということじゃないかな。
ヤマハ セロー250ファイナルエディション
ヤマハPW50
ホンダCRF50F
カワサキKX65
ホンダXR650L
変わる必要がない。選抜した車種の中でもっとも変わったのがセローで、225と250では共通部品はない(たぶん)。だけど、セローをセローたらしめている部分は失うことなく引き継いでいるのである。だから変わっているのにある意味で変わっていない。
もっともらしいことを書いて、適当に理由づけしていると思うだろう。──うん、それは正解だ。ただ、冷蔵庫や掃除機などの白物家電と違って、同じ工業製品でもモーターサイクルはユーザーの思い入れが強く、文化と呼べる領域にも入っている。変わらないことがさまざまなストーリーを生んで、エモーショナルな思い出となって、この趣味の発展に深く関わっているのは確か。最後にもっともらしくまとめたな、と思うだろう──うん、それも正解だ。
ヤマハ セロー250ファイナルエディション:特別ではないが、多くの人が足りる素晴らしさ
友人が河川敷の草むらで彼女とイチャイチャしている間にキックレバーだけを盗まれたという実話の考察をやろうと思ったけれど、怒られそうだから少しマジメに書くと、セローの魅力は”足りていること”だろう。特別な性能はないが、街でも山でも不満なく走破。これは225から250になっても不変だ。ハンドルが大きく切れて、シートが低く、極低回転から扱いやすいエンジン。次が登場するとしても、そこはハズさないだろう。
―― 【YAMAHA SEROW250 FINAL EDITION】■全長2100 全幅805 全高1160(各mm) 車重133kg ■空冷4ストローク単気筒 249cc 20ps/7500rpm 2.1kg-m/6000rpm 変速機5段 始動セルフ ■タイヤサイズF=2.75-21 45P R=120/80-18M/C 62P ●価格:58万8500円
ヤマハPW50:世界中の初体験を作ってきた
42年前に誕生して、モトクロスやエンデューロだけでなくモトGPなどオンロードの選手の中にも、PW50が最初のバイクだったというライダーは多い。両手ブレーキ/オートマチック/転んでも手を挟まないシャフトドライブという基本はずっと変わらない。見た目は’84モデルから空冷だけど、小さく前にならえをしたようなシュラウドがついたくらいかな。これぞライダーのゆりかご。墓場のほうが近くなった人でも最初のバイクは印象深く覚えているものだ。いろんな人の『はじめて物語』、クルクルバビンチョ、パペッピポ、ヒヤヒヤドキッチョの モーグタン! なバイク。
―― 【YAMAHA PW50】■全長1245 全幅610 全高705(各mm) 車重41kg ■空冷2ストローク単気筒 49cc 変速オート 始動キック ■タイヤサイズF=2.50-10 4PR R=2.50-10 4PR ●価格:22万円
ホンダCRF50F:憧れのトップレーサー気分で乗れる
前後10インチホイールはヤマハPW50と一緒だけど、オートマチックじゃなく、3速のギヤチェンジが必要。でも自動遠心クラッチだからクラッチレバー操作はいらない。両手ブレーキじゃなくリヤは右足フットブレーキ。体重25kg以下を推奨するPWに対し体重40kg以下と、ちょっと本格派でPWよりお兄さんやお姉さん用。脂肪の胴巻きをしたお父さんが、ちょっと乗ってみようとしちゃダメってことね。’90年代初頭に出たZ50Rの後継モデル。レーサーCRFの血糖…じゃなかった血統を感じさせるデザインがキモだ。2ストQR50が消えたのは残念。
―― 【HONDA CRF50F】■全長1302 全幅581 全高774(各mm) 車重50kg ■空冷4ストローク単気筒 49.5cc 変速機3段 始動キック ■タイヤサイズF=2.50-10 33J R=2.50-10 33J ●価格:19万8000円
カワサキKX65:細かく成長に合わせられる出世魚
「ブリがブリっと屁をこきました、タイがタイへん臭いといいました」の出世魚ブリにたとえると、ヤマハPW50がモジャコで、CRF50Fがワカシ、このKX65はイナダってところ。ちなみにKX112がハマチで、フルサイズでブリになってスクラブをしながら低空でブリっと屁をこく。’80年代から世紀末までKX60があって、その2ストエンジンをボア拡大で64.7ccにしたもの。上にKX80から進化したKX85もあってどっちを選ぶか。ホイールが14/12インチのKX65か、19/16のKX85か。帯に短しタスキに長しだからKX112にしちゃえ、なんて悩む。
―― 【KAWASAKI KX65】■全長1590 全幅760 全高955(各mm) 車重60kg ■水冷2ストローク単気筒 64cc 変速機6段 始動キック ■タイヤサイズF=60/100-14 30M R=80/100-12 41M ●価格:31万3500円
ホンダXR650L:キック始動にロマンを感じるのは坊やだ
’80年代から’90年代にかけて青春だった人にとって、アリスの谷村新司をマネて「You’re King of Off-road」といいたくなるXR600R。バハカリフォルニア半島を疾走するレーサーに憧れたもんさ。そのXR600Rの精神とDNAを受け継いだ車両、北米ではまだカタログモデルで新車が買える。XR600Rのバルブを放射状にレイアウトしたRFVCの空冷単気筒をベースに、排気量を上げてストリートリーガルに仕立て上げたのがXR650L。なんたってXR600Rはキック始動だったのに、こちとらセル始動である。矢のように去ったCRF450Lだって北米では現役。
―― 【HONDA XR650L】■全長2190 全幅855 全高1245(各mm) 車重157kg ■空冷4ストローク単気筒 644cc 変速機5段 始動セルフ ■タイヤサイズF=3.00-21 R=4.60-18 ●価格:91万円(6999ドル)
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