ついに、日産が動いた
日産は3月25日、神奈川県内にある日産の開発拠点で中期経営計画「The Arc」を発表した。
まさに、満を持してという感じだ。近年の企業としての日産を振り返ると、まずは長きに渡り続いたゴーン体制からの完全脱却が必須だった。
内田誠氏が新たに経営最高責任者(CEO)に就任して、V字回復というより、日産を作り替えるというイメージで打ち出したのが「Nissan Next」だった。それまで新車導入が大幅に遅れていたが、2020年度から2023年度まで、A~Zの頭文字を持つ新型として「アリア」から「フェアレディZ」まで新世代モデルをグローバルで導入してきた。
日本市場においても、ユーザーや販売店が「日産は大きく変ってきた」というイメージが定着したといえよう。
「Nissan Next」を進める中で、次世代戦略を打ち出すという噂が広がった。これが、中期経営計画になるのではないかという見方が、報道関係者の間であった。
しかし、発表されたのは長期的な企業の方向性を示す「Nissan Ambition 2030」だった。これは、いつまでに何をどのように、といった具体的な新型モデルを示すことはなく、イメージコンセプトモデルを中心とした、これからの日産がありたい姿を提示した。
その後、内田CEOは度々「近いうち、具体的な事業計画を示す」と公言してきており、それが今回実現したと言える。
新たなるアライアンスの地固め
よくよく考えてみれば「Nissan Next」が2023年度までとしているのだから、2024年度~2026年度の3年度計画を示す「The Arc」の発表は年度末ギリギリというタイミングだ。
内田体制となった初の中期経営計画である「The Arc」の大きな目標は、グローバルでの販売台数拡大だ。2026年度までに2023年度比で100万台増えるという勢力的な数字で、あわせて営業利益率6%以上とした。
「Nissan Next」では、それまで北米市場などで定常化してきた、台数欲しさに行う事実上の大幅な値引きを止め、市場の動向を精査しながら、販売店に対する販売奨励金を適正化した。これにより営業利益率は向上してきた。
「The Arc」においては、台数の大幅拡大と利益率確保を両立させる。
そのためには、やはりユーザーと販売店にとって魅力的な新型モデルを仕向地の市場動向に合わせて積極的に投入することが必須だ。「The Arc」では2026年度までに合計30モデルを投入し、そのうち16モデルが電動車となる。
電動車以外のICE(内燃機関車)については乗用車ラインナップ60%を刷新する。さらに、日産の真骨頂であるEVについても、EV普及での最大のネックであるコスト削減に着手する。
今後導入する次世代EVでは従来比でコストを30%削減し、2030年度までにEVのコストをICEと同等にすることを目指す。
パートナーとの新しい関係性
EVのコスト削減では「日産独自のファミリー開発」を行うと説明した。
ここでいうファミリー開発とは、複数のEVでの共通開発を進めることと、パートナー企業との連携を意味する。
技術的には、モーターとインバータなどEVパワートレインの一体化、次世代モジュラー生産、そして全固体電池を含めた各種の革新的なバッテリーの開発を推し進める。
欧州や東南アジアでは、これまで通りルノー日産三菱アライアンスを活用。また、日米市場については先に発表があったホンダとの連携を模索する。また、販売が減速している中国については、東風汽車などパートナーとの生産能力を最適化する。
今回の「The Arc」発表の前、日産に関する話題といえば、ボジティブな面ではホンダとの事業連携について協議の公表だ。内田CEOの「次世代に向けて、待ったなし」という言葉が印象的だった。
一方、ネガティブな面では、公正取引委員会から下請法違反に関する勧告を受けた。これについては、日産で発生した違反行為の内容を日本自動車工業会に提示し、自動車業界全体で自動車メーカーと自動車部品メーカーなどのサプライヤーとの、より健全な取引き関係を築くためのガイドラインやシステムの共有化を進めるとしている。
日産が歩んできた道を振り返ってみれば「Nissan Next」という初期改革がひと段落し、これから「シン日産」に向けた改革が本番を迎える。
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みんなのコメント
ゴーン社長時代のレベルまで販売台数を増やします。一台あたりの利益率も増やします。その両方を達成するために製造コストを大幅に削減します。
ということで正しいかな?下請けが今以上に買い叩かれ、ディーラーに無茶な販売ノルマが課される未来しか見えない。