インテリアで好印象なパナメーラ M5が僅かに広い
ポルシェ・パナメーラ・ターボE-ハイブリッドの、アンビエントライトは控えめ。化粧トリムの隙間からほんのり灯り、柔らかい反射光が上質な空間を演出する。読者は、BMW M5のインタラクションバーとどちらがお好みだろう。
【画像】車重2.4t前後のHV高速サルーン BMW M5とポルシェ・パナメーラ M5ツーリングも 全107枚
空間の広さは、パナメーラの方が僅かに劣る。着座位置は低いものの、ルーフラインが後方へ弧を描き、全幅が僅かに狭いことが関係している。
M5 ツーリングとパナメーラ・スポーツツーリスモとの比較なら、前者が実用性で差をつけていたかもしれない。だが2024年のアップデートで、スポーツツーリスモは廃盤となった。
サルーンで比較すると、テールゲートが大きく開くパナメーラの方が、荷室へのアクセス性は優れる。後席のゆとりでは及ばなくても、荷物は明らかに積みやすい。
内装の質感で好印象なのはパナメーラ。調和の取れた高級感が漂う。フロントシートはM5より小ぶりだが、ソファーのように座り心地が良い。車載機能の操作性は明瞭。エアスプリングの高さ調整も、運転支援システムのオン/オフも、シンプルに実行できる。
M5は機能数が多い。Mモードの他に、パワートレイン、ダンピング、ステアリング、トランスミッション、前後のトルク配分、スタビリティ・コントロールなど、それぞれのパラメータを調整できる。
時間をかけて研究するのも、面白いかもしれない。筆者のように、悩むことになるかもしれない。
暴力性すら滲ませる低域からの加速
駐車場での確認は終えて、ワインディングへ足を進めよう。起伏が大きく、カーブが連続する区間は、大型・高速なサルーンにとってホームとはいえない。しかしどちらも、狭い車線内を安定して導け、眼を見張るような運転体験を味わわせてくれる。
M5はシステム総合で728psもあるが、馬力以上に、駆動用モーターが叶える瞬間的なトルクの方が影響力は大きい。爆発的なダッシュ力を得るのに、シフトダウンを何度か繰り返し、V8エンジンを引っ張る必要はない。
左手でパドルを軽くクリックし、右足へ力を込めるだけ。M5には、駆動用モーター用に2速ATが実装されており、ドライブトレインへ伝わるトルクを増大できる。低域からの加速時は、暴力性すら滲ませる。
もっとも、パナメーラ・ターボE-ハイブリッドとの違いは、アスリートのモーリス・グリーン氏が、リンフォード・クリスティ氏より僅かに早いダッシュを決めた程度の差、ではある。どちらも、大パワーを秘め迅速だ。
これ以上の破壊力を必要とするドライバー向けに、隠しコマンドも用意されている。M5では、シフトダウン用のパドルを長く引くとブースト・モードが発動。パナメーラでは、ステアリングホイール上のドライブセレクター・ボタンで起動できる。
V8ツインターボエンジンと駆動用モーターが、完全な臨戦態勢になる。その加速力に背徳感がまったくない、というのは嘘になるだろう。
巨大な野獣かネイティブな流暢さか
2台を追い込んでも、充電が完全に切れることはない様子。駆動用バッテリーが、ただの重しになる状況へは、公道の限り殆ど陥らないはず。動力性能が甚大で、相当に積極的に運転しても、全力を引き出せる時間は数%程度だけだからだろう。
どこまでもレスポンシブ。心の底からエキサイティング、ではないとしても。
対して、乗り心地と操縦性では明らかな違いがある。重さや大きさだけでなく、シャシーの特性がそれを生んでいる。
M5には、巨大な野獣といった印象が滲む。ホイールベースやトレッドの大きさだけでなく、操縦系のフィードバックには重厚感のようなものが漂う。稀に、扱いにくく感じることもあるほど。
しかし、敏捷性とバランスの高さには胸が打たれる。気分次第で、カーブではグリップもドリフトも自在。この身のこなしを生んでいるものの1つが、強固なアンチロールバー。故に、荒れた路面では滑らかさに影響が現れる。ワダチへの反応も小さくない。
パナメーラ・ターボE-ハイブリッドは、全体の統制が高く、遥かに車重を我が物にしている。アクティブ・アンチロールバーとエアスプリング、後輪操舵システムが備える能力の幅と、技術的な経験がモノをいっているのだろう。
穏やかな乗り心地が相乗し、よりスムーズにコーナーへ侵入し脱出できる。気張らず、自身を持って直感的にラインを選べる。鋭い身のこなしには、ネイティブな流暢さがある。
どれだけ重さを手懐けられるかが鍵
筆者は、実際に走り比べるまでは、新しいM5の方が有利なのではないかと予想していた。グレートブリテン島南西部、ロンザの渓谷に広がる傷んだワインディングを、見事に処理するのではないかと。
ところが、懐の深い能力で驚かせたのは、パナメーラ・ターボE-ハイブリッドだった。総合728psを持ってしても、ドライバーズカーとしては、秀抜のライバルを相手にやや苦戦したといっていいだろう。
M5の方が、僅かに体格が良いことは事実。だとしても、ビッグ・スーパーサルーンの能力を追求した時、その重さをどれだけ手懐けられるのかが重要な鍵になるようだ。
プラグインHVのスーパーサルーン 2台のスペック
ポルシェ・パナメーラ・ターボE-ハイブリッド(英国仕様)
英国価格:14万5400ポンド(約2835万円)
全長:5052mm
全幅:1937mm
全高:1423mm
最高速度:315km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:58.8-83.3km/L
CO2排出量:26-38g/km
車両重量:2360kg
パワートレイン:V型8気筒3996cc ツインターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:21.8kWh
最高出力:680ps/5500-6800rpm(システム総合)
最大トルク:94.6kg-m/1600-4900rpm(システム総合)
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(四輪駆動)
BMW M5(英国仕様)
英国価格:11万1405ポンド(約2172万円)
全長:5095mm
全幅:1970mm
全高:1510mm
最高速度:305km/h(Mドライバーズ・パッケージ)
0-100km/h加速:3.5秒
燃費:58.8-62.5km/L
CO2排出量:38g/km
車両重量:2435kg
パワートレイン:V型8気筒4395cc ツインターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:18.6kWh
最高出力:728ps/5600-6500rpm(システム総合)
最大トルク:101.8kg-m/1800-5400rpm(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
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