ようやく収まってきたコロナウィルスですが、その影響は自動車メディア界にも大きな影を落としています。何しろ、発表会や試乗会といったイベントはほとんど行われることなく、新車に試乗する機会もかなり減ってしまいました。
そうしたなか、ベストカーWeb編集部から「新しいランクル乗りました? 乗ってないなら乗りませんか?」というオーダー。ホイホイ尻尾を振って編集部にやってきたのです。
なぜ天下のトヨタが? 元営業マンだけが知る不正車検の実態と原因
文/諸星陽一
写真/諸星陽一、TOYOTA
【画像ギャラリー】高性能で乗り心地もバツグン! 新型ランクル300を画像でチェック
■存在感ハンパない!! ランクル300を試乗してみた
東京都文京区にあるベストカー編集部1階の駐車スペースに入っていくと、ドドーンと鎮座しておりました新型ランクル300、それもGR仕様です。この存在感はハンパないですね。編集部の駐車場の枠のなかに……入りきれていません。完全にはみ出しております。
編集部の駐車場の枠のなかに入りきれていない..
無理をすれば枠内(枠線の外側までを含むなら)に入りそうですが、そうしたら今度は降りられませんね。それもそのはず、全幅は1990mm、全長は4965mmにもなります。全長こそセンチュリーには及びませんが、全幅はセンチュリーを60mmもオーバー、全高はもちろん圧倒的に高く1925mmにもなります。
全幅は1990mm、全長は4965mm。全高1925mm
さっそくキーを受け取ったところ、「諸星さんの指紋は登録されていないので、スマートキーをイグニッションスイッチに近づけながらスイッチオンして下さい」とのこと。なんとランクルのイグニッションスイッチは指紋登録でセキュリティアップをしているのです。
ドアの開閉そのものはスマートキーのボタンで可能なので、ドアを開けて運転席に乗り込むと……またまたビックリ!
助手席にはハンドルをロックするための無骨な用品&ホイールをロックするための海賊の鈎手のような用品が搭載されている(編集部注/トヨタ自動車より、盗難防止として用心のため広報車全車に積んでいるそうです。もちろんこんな措置は初めて)。
この2つ、もちろん盗難防止のための用品ですが、指紋認証システムに加えてこんなハードウエアで自衛しなければいけないほどランクルは盗難対象なのだということを思い知らされる。そういえば、知り合いのカメラマンも2名ほどランクルを盗まれていることを思い出しました。
さて、ドアを閉めてシートポジションを合わせ、スマートキーをイグニッションスイッチに近づけてボタンをプッシュする。何の問題もなく、3.3L、309馬力、700Nm(!)のエンジンが始動する。駐車場を出て一般道で首都高入り口を目指す。
指紋認証スタートスイッチ
都内の一般道ではその大きさが際立つが、ヒップポイントの高さと見切りのよさで運転しづらさは一切ない。何よりもその運転しやすさを生み出しているのがボンネットの形状だ。
センター部分を大きく凹ませた独特な形状のボンネットが、目印になって見切りが非常にいい。そういえば初代レンジローバーはボンネットの左右を上側に盛り上げるような造形として見切りを向上していたなあ、と、はるか昔に乗った英国製クロカンの王様のことを思い出したりもする。同じクロカン、そしてトップエンドモデルにはどこか同じを感じるのだろう。
■ACC低速も驚くほど高性能
それにしてもこのランクル、周囲の目がすごい。20~30年前はちょっと新しめのクルマに乗っていると好奇の目にされされるのは当たり前だったが、今の時代は「ド」のつく新型車に乗っていてもそれほどの注目を浴びることはない。
ところがこのランクル、周囲のドライバーはもちろん歩道を歩いている歩行者からの注目度もかなりの高さ。とくに輸入のSUVに乗っている人はかなり気になるようで、メルセデス・ベンツGクラスのドライバーには何度もガン見されました。
ドライバーはもちろん、歩行者からもかなり注目されるランクル300
首都高に乗っていきなり渋滞だったのですが、普段の行いがいい私は別ルートを使って無事に……と思いきや、その先はやっぱり大渋滞。まずはACCの低速での使い勝手をチェックすることになりました。
これがなかなかの高性能で、完全停止から30km/hまでを繰り返す渋滞路をしっかりとアシストしてくれます。完全停止時にすぐに先行車が走り出せばランクルも再発進してくれますが、電動パーキングブレーキが作動したような状態からはステアリングのスイッチをプッシュするか、アクセルペダルを踏み込む操作が必要です。
条件がよかったのか? なんかのか? よくわからないのですが、比較的長い時間ステアリングから手を離していてもACCは作動状態のままでした。しかし、10回に1回くらいはすぐに「ステアリングを持って下さい」というようなアラートが出ることもあり、確実に長い時間手放しが平気ということではないようです。
道路がクリアになってからのACCの性能もよく、速度の調整の仕方やレーンキープともに非常に上手。これだけの重量物を見事にコントロールする性能には感心です。
700Nmというトルクは、ひと言でいえば「ハンパない」なのですが、高速道路巡航中からの追い抜き加速ではこのトルクがじつに気持ちのいいフィールを生み出します。ACC走行中にゆっくりめで走っているトラックに追いついたときなどに、車線変更を行えば何のストレスもなくスーッと追い越します。
ACCを使わずに車線変更からのアクセルオンはかなりの迫力。2.5トンの巨体を揺るがせながらのフル加速は、想像を超えるものと言っても過言ではありません。
■200をはるかに超える乗り心地の向上
そしてビックリするくらいに乗り心地がいいのです。ランクルの足まわりは80で前後コイルに、100でフロント独立になっています。100以降はとくに乗り心地が向上しているのですが、この300は先代の200をはるかに超える乗り心地のよさで、リヤが固定式のトレーリングリンク式サスであることを感じさせません。
その乗り心地のよさを支えるひとつの大きな要因が18インチタイヤにあるといえるでしょう。ランクルの標準タイプのタイヤは18インチで、GRスポーツの名が付くモデルだと20インチにしそうなものですが、ZXは20インチにしながらもGRスポーツは18インチにとどめています。見た目よりも真の走りを求めた感があって、非常に好感が持てます。
標準タイプのタイヤは18インチ。見た目よりも真の走りを求めた感があって、非常に好感が持てる
また、コーナリングについても非常に素直でいい印象。首都高のコーナーや高速道路のランプウェイ、ちょっとしたワインディングなどを走りましたが、どこも重量をものともしないしっかりしたフィーリングでした。
もちろん、2.5トンもあるのでコーナーではどっしりした動きになりがちですが、それでも普通にそれなりのペースで走れてしまうのにはビックリです。
郊外の狭い道路ではさすがに持て余すときもありましたが、よほど大きく、よほど押し出しが強く感じるのでしょう。狭い道ではこちらが寄せているにもかかわらず、対向車が待ってくれるのです。アルファードにも2回譲ってもらってしまいました。
総走行距離156kmを走り、燃費は8.6km/h。WLTCモード燃費が9.7km/hなので、合計約2時間の渋滞と途中でDPFの再生があったことを考えれば合格点といえるでしょう。
ランクル300 内装
さてやっと表題の件。「果たしてこの新しいランクルは日本に必要か?」と言われれば、「間違いなく必要だ」と言えます。
今回はオンロードでの試乗しか行えていませんが、その高いクロスカントリー性能は言うまでもありません。たとえば高速道路会社や電力会社の保守点検用車両としては絶対的なマルチパーパス性能を持つクルマが必要ですし、警察車両や自衛隊車両、また北海道で自然を相手にしている人達などランクルが必要な人々は、日本にもたくさんいます。
視野を世界に広げれば、その輪はさらに広がります。
トヨタのような総合自動車メーカーだからこそ作れるクルマですし、作らなくてはならないクルマなのです。
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