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ハンドメイドによる「アルミのイオタ」の生みの親が「6輪F1マシン製作」に掛ける想いとは[vol.3]

掲載 更新 21
ハンドメイドによる「アルミのイオタ」の生みの親が「6輪F1マシン製作」に掛ける想いとは[vol.3]

ある方を通じて「ランボルギーニ イオタのボディをアルミたたき出しで造っている人がいるよ。その工場に行ってみない?」とお声掛けいただいたのは一昨年6月のこと。

「ランボルギーニ イオタ?」「アルミを使ってボディをたたき出しで造っている??」

クルマ好きの旦那を持つのは……幸せか否か?

「イオタ」と「アルミを使い、ボディをたたき出しで造っている」。この2つのキーワードがすぐに頭のなかで結びつかないほど、私自身、現実味があるようには思えなかったことも事実。

その後、実際にお邪魔できることになり、茨城県水戸市にある巴自動車商会/カスタムビルド&レストア WATAHIKIにお邪魔したのが昨年の12月、そして今年の2月、そして今回は4月末に取材させていただきました。

▲綿引 雄司さんとハンドメイドで制作中のタイレルP34

●ハンドメイドによる「アルミのイオタ」の生みの親が「6輪F1マシン製作」に掛ける想いとは https://www.gaisha-oh.com/soken/watahiki-tyrrell-p34-ep1/

●ハンドメイドによる「アルミのイオタ」の生みの親が「6輪F1マシン製作」に掛ける想いとは[vol.2] https://www.gaisha-oh.com/soken/watahiki-tyrrell-p34-ep2/

前回[vol.2]の取材から2ヶ月半。6輪F1マシンことタイレルP34の進行状況を拝見すべく、ふたたび巴自動車商会/カスタムビルド&レストア WATAHIKIに行ってまいりました。

■前回から進んだ箇所について聞かせてください

足回りとシートカウル、サイドポンツーン、海外からAVONタイヤ、それも当時のタイレルと同サイズのものを入手できたことも大きく進展した点です。その他、ロールバーをボルトオンタイプに仕様変更するために分解・製作などです。



AVONタイヤはフロント4輪+リア2輪をワンセットにして日本の代理店を通じて購入しました。サイズはフロント4輪+リア2輪のワンセットで、フロントは8.5/16.0-10、リアは15.0/26.0-13です。フロントホイールは10インチのバイク用のものを、リアはF3000で使われていたものをそれぞれP34と同様につや消しブラックで塗装しました。



▲フルカウルを被せる前の状態

▲フルカウルを被せると、まさしくタイレルP34そのものの姿に!

■オリジナルのタイレルP34を意識しつつ、綿引さん独自の解釈も加わえているのですか?

そうなんです。いずれは1976年仕様のカウルも製作して、着せ替えのようなことも視野にいれています。自身の解釈によるオリジナルの要素を取り入れるか、できるだけ(前期・後期)ホンモノに近い形にしたほうがいいのかなど…試行錯誤しながら進めています。

▲アルミ製のフルカウルを被せるときは2人掛かりで行います

●シートカウル

タイレルP34がF1に参戦したのは1976~1977年の2年間です(その後はレギュレーションで禁止に)。1976年型はエンジンが露出しているカウルに対して、77年型にはフルカウルボディも存在します。私は後者(1977年型のフルカバードカウル仕様)を意識して製作しています。その理由として、フルカウルボディであればエンジンを覆うことができます。その結果、搭載するエンジンを気にする必要がなくなり、フォルムでタイレルP34を再現できると思ったからなんですね。シートカウルに関しては、製作途中で仕様変更を思いつき、1976年仕様のものを意識して造りました。

▲将来、1976年仕様のカウルを被せることも想定して製作されたシートカウル

●ヘルメット

ステッカー製作は外注しましたが、貼り付けとヘルメットの塗装は自分で行いました。ヘルメットは「ビルトウェル」というアメリカのバイク用のものが当時のフォルムにそっくりなので、こちらをチョイスしました。ゼッケン3番のロニー・ピーターソンのカラーリングを意識しつつ、今回のタイレルP34に合わせた色味にしました。資料を見れば色を調合して忠実に再現することも可能なんですが(オリジナルはソリッドペイントのようです)、今回はブルーメタリックに。2回目の調合でイメージどおりの色になりました。デカールを貼り、5~6層に分けてクリアを吹いて完成です(編集部注:YouTubeの動画ではアライのバイザーを加工したものも公開されています)。

動画はこちらです:https://www.youtube.com/watch?v=My9_3S3s9lQ

▲綿引さん自ら調合し、ペイントしたヘルメット。2回目の調合で納得のいく色合いになったそうです

■ここ数ヶ月で一気にYouTubeのチャンネル登録者数が増えたようですが・・・?

1回目の記事が公開された頃(昨年末)、チャンネル登録者数が1000人を越えたんですね。おかげさまでそれから順調に増えていまして、取材時の時点で4700人になりました(5月15日時点で7000人を突破!)。静止画を編集したものを公開していましたが、最近はタイレルP34の製作風景を撮影した動画をアップしています。おそらく、現在進行形で製作しているタイレルP34が観られるのは、世界でもここだけじゃないかと思います(笑)。



そのおかげか、少しずつ話題にもなっていようで、この数ヶ月で週刊新潮さんやベストカーさんでも取り上げていただきました。

▲事務所内は大人も子どももワクワクするアイテムが満載

■イメージで仕上げなければならない箇所もありそうです

立体的な部分は模型で、あとは本やネットなどの写真を見ながら再現しているのですが、微妙な曲線の再現などは静止画で見比べた方が確認がしやすいですね。動画でもあらゆる角度からチェックできますが、静止画の方が(オリジナルとの)違いを把握しやすいように思います。ある程度、組み上がってくると各部の寸法が決まってきます。と同時に、細かいところは現物がないぶん、イメージで仕上げる箇所もあります。いったん造ってみて、しっくりこないから再度製作…なんてことも珍しくありません。

▲作業場にはタイレルP34の模型が

■現在の完成度はどれくらいですか?

まだまだやりたいことがあるので、6月20日のサンブレフェスタでのお披露目の時点で60%くらいでしょうか。とはいえ、6月20日の時点で未完成というわけではなく、6月までには塗装も終わらせて、見た目もタイレルP34に見えるので安心してください。残りの40%については実走行できるようになったり、細かいところのアップデートという意味です。現在、10月頃に開催されるイベントにて走らせるつもりで進めていこうと思ってますが、まだ断言はできない状況です。「走らせること=危険を伴います」から、慎重に進めていくつもりです。

 

▲美しくカラーリングされたリアウイング&ヘルメット

■6月20日「サンブレフェスタ」のお披露目までに、残す作業はどのあたりですか?

全体の塗装、デカール、フロントのタイヤとステアリングとの接続、リアホイールの固定、ロールバーのメッキ加工、エンジン&デフの組み付け…などなどです。フロントサスが柔らかすぎるので、それを新調したい(すでに入手済み・デイトナ製ホンダグロム用フロントサス・250mm)製作風景はYouTubeで動画を公開していますので、そちらもぜひご覧ください。

 

▲光の角度により、アルミボディの凹凸が浮かび上がります。ハンドメイドならで生み出された形であることを改めて実感します

■お披露目に向けて意気込みをぜひ聞かせてください!

現存するタイレルP34は世界で7~8台らしいですね。なかなか現車を観られる機会がないと思いますし、当時を知る方はもちろんのこと、お子さんにも観て、実際にシートに座ってもらいたいです(展示中はコクピットに座れる予定とのこと!)。特にお子さんには「こういうものが実際に造れるんだよ」ということ知ってもらい、将来、「F1パイロットになってみたい」とか「こんなクルマ造りたい」など、何かのきっかけになってくれたら嬉しいです!

 

▲6月20日のサンブレフェスタでは、実際にコクピットに座れる予定なのだとか。綿引さんにもコクピットに座っていただきました

■取材後記

取材で訪れるたびに、ある程度は目が慣れてくるはずなのですが、このプロジェクトがその逆。タイレルP34を拝見させていただくたび、自分自身の心臓の鼓動が高まるのが分かります。理屈抜きで実車を観るだけでどきどきしてくるのが抑えられないのです。久しく忘れていた感覚、それはまるで、小さい頃に街でスーパーカーを観て大興奮したときのようなインパクトです。今回、綿引さんのご厚意で、一足先にタイレルP34のコクピットに座らせていただきました。恥ずかしながら、フォーミュラカーの運転席に座るのは人生初。乗用車では味わうことのできない視界の低さ、そしてドライビングポジション…。

 

6月20日のサンブレフェスタでも、同じ体験をすることができます。今回、取材させていただいたタイレルP34の現車が観られるだけでなく、コクピットに座ることができる予定なのです!お子さんにこの景色を観ていただき、ハンドメイドで生み出されたタイレルP34の質感を味わっていただきたいです。綿引さんがおっしゃるように、将来、このタイレルP34に触れたことがきっかけで、F1パイロットや、カーデザイナー、エンジニアなどが誕生することを節に願うばかりです。

 

▲綿引さんのご厚意で、筆者もタイレルP34のコクピットへ。まさに至福の体験でした

■タイレルP34をお披露目する『サンブレフェスタ』イベント情報

・開催日時:2021年6月20日(日)9:00~15:30/*雨天の場合は27日に順延

・開催場所:道の駅おおた(https://www.michinoeki-ota.com)

・住所:〒370-0421 群馬県太田市粕川町701-1

・アクセス:国道17号(上武道路) 道の駅おおた交差点東側(旧粕川交差点)

・google map:https://goo.gl/maps/727WPi5YfhYm7VMn6

・お問い合わせ先:道の駅おおた 総合案内(TEL.0276-56-9350)

 

▲当時のタイレルP34と同サイズのAVON製スリックタイヤ。リアからの眺めも迫力満点

■巴自動車商会/カスタムビルド&レストア WATAHIKI 店舗情報

住所:〒310-0912 茨城県水戸市見川3-528-2

TEL:TEL/FAX 029-243-0133

URL:http://cbr-watahiki.com

お問い合わせ:http://www.cbr-watahiki.com/mail.html

 

▲巴自動車商会/カスタムビルド&レストア WATAHIKIの外観

▲工場にはレストア中のランボルギーニ ウラッコをはじめ、貴重な名車の作業が進められています

▲愛犬の「ディノ」。人懐っこい性格のワンちゃんで、この子に会えるのも取材の楽しみのひとつです

■綿引さんのYouTubeチャンネル"cbrwatahiki"

「アルミのイオタ」および「タイレル P34」の製作風景も紹介されています

https://www.youtube.com/user/cbrwatahiki/featured

 

フェルッチョランボルギーニムゼオ Facebookページにて、綿引さんとご自身が製作された「アルミのイオタ」が紹介されています。

https://www.facebook.com/MuseoFerruccioLamborghini/posts/2424992091078410

 

[ライター・撮影/松村透]

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みんなのコメント

21件
  • タイレルって言ってくれたのが嬉しいよ。
    最近じゃティレルって言うじゃない?
    タイレルでいーんだよ。
  • こういうヒト好きだなあ。他人からは何の儲けにもならないバカらしいことを一生懸命やってる常識外れな人間。常識的な人間ばかりだったらつまんない。

    おそらくこうやってマスコミに取り上げられなけれ埋もれたままで周りのヒトたちも冷ややかに見てたりバカにしてたりしてね。今ある企業の創業者物語を読んでみるとかなりのものはこういう馬鹿にされていた者たちが始めたこと。そのことは歴史が証明している。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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