1月に欧州では最も多くの台数を販売
text:Tom Morgan(トム・モーガン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
欧州はルノー製のコンパクトEVに夢中になっているようだ。2020年1月には、EVとして最も多くの台数を販売したモデルこそ、ルノー・ゾエ。
ボディの見た目もインテリアも、大きく手直しが施されただけでなく、パワートレインも改善。大容量のバッテリーが搭載されたおかげだろう。
そんなゾエが英国にも上陸した。52kWhという容量のリチウムイオン・バッテリーで、WLTP値383kmの航続距離を実現。先代から30%も長くなった。次のクルマをEVにするべきか悩んでいるユーザーにも大きな影響を与えると、ルノーは予測する。
ホンダeやミニ・エレクトリック、プジョーe-208、オペル・コルサ-eなど、矢継ぎ早に登場するライバルモデルにも強い競争力を示すことになる。航続距離で見れば、ゾエに迫れるのはe-208とコルサ-eだけだ。
といっても、現実世界では1度の充電で走れる距離は夏場でも320km程度。冬場なら260km程度まで落ちるだろう。
ルノーの場合、クルマの価格には7kWの家庭用充電器の設置費用も含まれている。初めてEVへ切り替えるユーザーにとっては、魅力的だと思う。50kWのDC急速充電器は、オプションとなる。
2020年版のゾエは、英国の大部分の道を安心して運転できる。前輪を駆動するモーターは先代の107psから133psへとパワーアップ。107ps版は、エントリーグレードへとシフトした。その結果、0-100km/h加速は2秒近く削っている。
従来どおり市街地に適した乗り心地
オペル・コルサ-eの方が加速は1秒ほど鋭いが、同クラスのコンパクトEVに並ぶ、スタートダッシュを獲得している。80km/hから110km/hくらいの中間加速時間も短縮しており、高速道路での運転に大きな違いをもたらしている。
ドライブモードは、D(ドライブ)とB(ブレーキ)との2種類。切り替えは従来的なシフトセレクターで行うのだが、スムーズで静かな電気モーターとの組み合わせが、少し不自然にも思えた。
Bモードでは、ワンペダル・ドライブが可能となるほど、充分に強い回生ブレーキが効くようになる。最大量で回生する場合の動作は、キアe-ニロより遥かにスムーズ。ただし、効きの強さをパドルスイッチなどで調整できる機能は備わらない。
30km/hくらいまで聞こえるサイエンス・フィクションのような高周波音は、EVへ乗り換えたことを実感する部分。クルマの近接を教えるものだが、ルノー・ゾエは特に音量が大きく感じられる。
町中を走る場面などでは、EVに乗っているという感情を高めてくれる。もし気に入らなければ、音を鳴らなくすることも可能だ。
乗り心地は、これまでのゾエと同様。市街地ではとても穏やかに運転ができるが、高速道路で橋桁の継ぎ目を通過した場面などでは、平穏を保てなくなる。路面の荒い郊外の道では、落ち着きがなくなってくる。
質感を高めたインテリアデザイン
クイックで軽量なステアリングホイールは、低速度域での操縦向き。速度を上げていっても、得られるフィードバックは殆どない。クリオ(ルーテシア)の方が、ドライビング体験はよりダイナミック。フォード・フィエスタの地位は揺るがない。
車内は、最近アップデートされた新しいクリオと、多くの部分を共有する。硬質なプラスティック製パネルは、ソフト加工された素材に置き換わった。エアコンのスイッチは、タッチモニターに集約されることなく、物理的なダイヤルスイッチで行える。
モニター式のデジタルメーターは、同クラスのライバルより高精細。ステレオの操作スイッチが、ステアリングコラムに付いていることは変わらない。
インフォテインメント用のタッチモニターは、縦型の9.0インチ。グラフィックはベーシックだが、インターフェイスは良く操作しやすい。
機能も豊富で、ウィジェットを用いて、メインメニューのカスタムも可能。頻繁に使う機能を、すぐにタップできるように編集できる。
アンドロイド・オートとアップル・カープレイも使えるようになった。試乗車のトップグレードには、スマートフォンのワイヤレス充電機能も搭載される。GTラインの場合、知覚品質に優れる人工皮革と、リサイクル樹脂のインテリアパネルを採用する。
新しいクリオ(ルーテシア)は、ステアリング・ポジションが見直されたが、ゾエは従来どおり。ステアリングホイールに対し高めの位置に座ることになる。防音処理も良くなり、質感が向上した車内のおかげで、居心地は遥かに良くなった。
都市から郊外へ足を伸ばしたくなる
リアシートは、子供なら充分な広さがあるが、大人には狭い。背の高い人の場合、頭上も足元空間も、少し窮屈に感じられるだろう。
欧州本土での人気を見る限り、ルノー・ゾエは英国でも高い支持を集めるだろう。従来どおり、クルマとしては短距離ドライブに向いているが、成熟度を増したことで、都市から離れた郊外へ足を伸ばしたくなる気持ちしてくれる。
ホンダeは、小気味いい走りとハイテクなインテリアを備えているが、航続距離は短い。ミニ・エレクトリックも走れる距離は同等。ミニらしい優れた運動性能を約束してくれるけれど。
いずれも価格は近似しているから、新しくなったゾエのインテリアが、ライバルと比べて秀でているとは感じられないかもしれない。それでもコンパクトEVとしての総合点で、現状ではルノー・ゾエ以上の選択肢はないといえる。
ルノー・ゾエ GTラインR135 Z.E.50のスペック
価格:2万8620ポンド(386万円・英国補助金適用後)
全長:4087mm
全幅:1730mm
全高:1562mm
最高速度:140km/h
0-100km/h加速:9.5秒
航続距離:383km
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:1502kg
パワートレイン:電気モーター
バッテリー:52kWh
最高出力:133ps/4200rpm
最大トルク:24.9kg-m/1500-2500rpm
ギアボックス:シングルスピード
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