大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、今年、スクーデリア・フェラーリのチーム代表に就任し、シンガポールで自身にとって初のF1勝利を達成したフレデリック・バスールに焦点を当てた。
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【F1チーム代表の現場事情:ウイリアムズ】新人サージェントが潰れぬよう、全力で守り、育てるボウルズ
レッドブルの連勝が長く続いたが、ついにその流れがシンガポールでストップした。勝利を収めたフェラーリのフレデリック・バスール代表にとって、感動の瞬間だったに違いない。
フェラーリはこれまでF1で多数の優勝を挙げている。しかし、カルロス・サインツが緊迫したレース展開の末にトップでフィニッシュしたシンガポールGPは、バスール自身にとって初めての勝利だった。
この勝利にはチームのメンバーたち自身が驚いていた。だが、その前のイタリアから流れが良くなっていた。最も強いプレシャーがかかるホームのイタリアGPに、フェラーリはあえてアップグレードを入れる計画を立てた。フェラーリのマシンは、低中速コーナーを備えた低ダウンフォースのトラックで特に強さを発揮できることが分かっていた。チームは特別なモンツァ仕様を用意、このマシンにより、予選でサインツがポール、シャルル・ルクレールが3番手につけた。
モンツァでサインツは3位表彰台を獲得。フェラーリが、自分たちの強みを見つけ、特定のトラックに特化したマシンを開発することでチャンスをつかむために懸命に取り組み、実戦で良い結果を出したことを、バスールは非常に喜んでいた。
次のシンガポールは、コース特性が全く異なっているため、フェラーリは困難に直面する可能性があった。しかし実際には、サインツが勢いを維持し、良いセットアップを見つけ出して、すぐさまペースを発揮。週末は順調に進み、サインツは再びポールポジションを獲得した。
バスールがフェラーリに加入した際に、頻繁に質問されたのは、このチームにはプレッシャーの下で適切な意思決定を行う能力があるのか、ということだった。戦略にしても、セットアップにしても、フェラーリは近年、あまりにも多くのミスを犯しており、適切なタイミングで適切な判断を下す自信を持っていないように見えたからだ。
そういった意味で、バスールはシンガポールGPでの勝利を特に誇りに思っていることだろう。彼にとってのF1初勝利だったことに加えて、外部の批判的な見方を否定することができたからだ。フェラーリのチーム代表に就任して数カ月のバスールは、まだ人事に抜本的な変更を加えることはできていない。しかしここまでの間、フェラーリの仕事のやり方、構造、プロセスを時間をかけて分析し、それらを既存の人材によりフィットするよう進化させる努力をしてきた。
それが奏功し、戦略とドライバーのパフォーマンスにおいて、明らかな進歩が見られた。フェラーリは、ルクレールをスタートでジョージ・ラッセルの前に出すため、彼にソフトタイヤを履かせた。その戦略は完璧に機能した。
セーフティカー導入により、ルクレールは彼自身のミスでない要因によって後退したものの、フェラーリは冷静にサインツのレースに対応。サインツ自身もレースを完全にコントロールしていた。終盤にメルセデス勢がピットストップを行ったことで、サインツには大きなプレッシャーがかかったが、チームは冷静さを失うことなく戦い、今季初勝利を飾った。
シンガポールで、今シーズン初めて、レッドブル以外のチームに、現実的に勝利を狙えるチャンスが訪れた。そのチャンスをフェラーリがつかんだのだ。目標を達成できたことにより、チーム内で、バスールと彼のやり方に対する信頼が高まったはずだ。
バスールは、勝利の喜びに長く浸ることなく、次戦日本GPに向けて、チームのトップとしての仕事に取り組んだ。一部の前任者たちよりも、代表としてオープンで誠実な姿勢を示す彼は、メディアやファンと関わることに積極的だ。日本GP直前には、新宿で開催されたファンイベントにも出席した。
優勝した直後とあって、フェラーリのプロモーションには最適な時期ではあったが、バスールは、それだけでなく、F1の人気をできる限り高めることも重要であると考えている。当然のことながら、ファンが増えて、より多くの注目が集まっている状況でフェラーリが優勝できれば、それが一番いいからだ。
日本GPのウイークエンドでは、フェラーリはペース面で多少苦戦を強いられた。それでもチャンスを最大限に生かして、コンストラクターズ選手権2位のメルセデスより多くのポイントをつかみ、ポイント差を縮めることに成功した。
2023年のコンストラクターズタイトルは、日本GPでレッドブルが獲得した。しかしシーズン残りにおいて、フェラーリとメルセデスの2位争いはますます激しくなっていくだろう。
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