一台のクルマには、縁あってオーナーになった人との歴史や思い出があり、物語になるほどのエピソードが生まれることもある。
そんなクルマと人との関わりを、オーナーさんに直接取材して、リアルな生の声を紹介していきたいと思います。はたして、どんな生の声が聞けるのでしょうか?
キテレツな発想が仇となった!? 鳴り物入りで登場したあのクルマの不人気のワケ
購入した動機から、愛車に対するこだわりのポイント、年間の維持費、故障箇所、愛車の主治医まで、これからそのクルマを購入しようと思っている人にも役に立つ情報満載でお届けします。
文・写真/松村 透
【画像ギャラリー】フルノーマルこそ最高!21年前のチェイサーとは思えないオーナーさんのこだわりとは?
■憧れを現実にしたその日から今日までの21年間、まったくブレない思い
本当にクルマのすみずみまで、いつも以上に時間と手間をかけて洗車されたことが一目で分かるほど、実に美しく磨き上げられたチェイサーツアラーV。本当に21年前のクルマ? と思うほどでした。
猛暑日のなか「先日、汗だくになってワックスがけをしたのです。エンジンルームもきれいにしましたよ」とのこと。
憧れを現実にした21年前と同じか、それ以上に愛情と愛着を注ぎ込むオーナーさんを直撃しました。
オーナーのひでぼーさん。愛車である2000年式トヨタチェイサーツアラーVとは21年の付き合い
■プロフィール&愛車紹介
・HN:ひでぼーさん
・年齢:46歳
・職業:家族とチェイサーのために一生懸命働くサラリーマン
・所有しているクルマ:2000年式トヨタチェイサーツアラーV(JZX100型)
・購入時期:2000年
・所有年数:21年
・購入時の走行距離:21km
・現在の走行距離:167,000km
・購入時の金額:315万円
当時CMでオンエアされたキャッチコピーである「強い高級車に乗ろう」に魅了されたツアラーVオーナーは多いようだ。フルエアロもこの車にはよく似合う
■愛車であるチェイサーツアラーVを手に入れようと思ったきっかけを教えてください
後期型が発売されたとき、霧の中からスーパーホワイトIIのボディーカラーをまとったチェイサーが現れるCMを観てノックアウトされたことがきっかけです。
前期型チェイサーツアラーVのCMのキャッチコピーである「強い高級車に乗ろう」は、今でも強く印象に残っています。そのあとディーラーに行ってカタログもらい、これはもう買うしかないなと心に決めましたね。
新車の見積もり金額が約400万円。高額なのでまず貯金することからスタートしました。当時の職場の上司が「まぁ100万貯めてみろよ」とアドバイスされ、必死に貯金したら450万円くらいになりました。
とはいえ、今後のことを考えると貯めたお金をすべて使うのはどうかと思い、程度の良い中古車を手に入れようとあるトヨタディーラーに「程度の良い個体が入ったらカーセンサーに載せる前にすぐに連絡をください!」とお願いして縁があったのが現在の愛車です。未登録の新古車でしたが、新車で購入するよりだいぶ費用を抑えられました。
チェイサーツアラーVのプラモデルや各種カタログ、取材されたベストカーなど大切に保管されている。チェイサー愛が溢れ出ている
■愛車との濃いエピソードを教えてください
所有歴が20年を迎えたあたりから愛車の取材が増えたことです。
古いクルマに乗り続けるのは維持費がかかるといわれがちです。しかし実際には「そんなことはない!」ことを証明するため、新しいクルマを買わずに余分な出費を抑えたことで、当初30年で組んでいた自宅のローンも完済できました。ローンを組んで買うのは家だけと決めていたんです。
もしもこの21年間のあいだに何台もの新しいクルマを買っていたら……まだ家のローンを払っていたと思います。これもすべて妻の理解とチェイサーのおかげです。
この日のために、内外装やエンジンルームまで洗車してくださったひでぼーさん。ボディもタイヤもホイールもピカピカだ
■愛車に対するこだわりを教えてください
「フルノーマルで乗り続けること」です。
改造ありきで購入される方が多かった車種なので、購入当初(25歳の時)はオフ会に行ってもあまり見向きされませんでした。しかし最近は、オリジナルを残しているとのことで注目されるようになり嬉しいです。
当時、ツアラーVを買った人で、いまでも所有している方は知り合いだと1人だけですね。気持ちが壊れて手放したり、経済的な理由だったり、家族が増えたからとか…。
純正オプションだったエアロパーツが装着されているひでぼーさんのチェイサーツアラーV。現在となっては改造された個体が多い為、フルノーマルの愛車はオフ会でも羨望の的だ
■大まかな年間の維持費を教えてください
・自動車税:5万1700円(1年間)
・任意保険:3万6840円(1年間)
・ガソリン:18万円(月2回給油:年間走行距離約1万km)
・車検整備:14万円(メンテナンスパスポート:2年間のエンジンオイル、フィルター、定期整備含)
◎1年間の維持費:約34万円
ていねいに使い込まれた内装。シートのヨレもごくわずかだった。ステアリングやシフトノブといった革製品の状態も時代を感じない程美しい状態を維持している
■失礼ながら、これまで大小の故障はありましたか?
21年間に車検以外にかかった整備費用は100万円くらいです。この金額で好きなクルマに乗り続けられることを考えれば安いと思っています。
【故障後に修理したこと】
・OCV:エンジンストール
・コンプレッサー・コンデンサー故障:エアコン効かず
・ヒーターウォーターバルブ故障:ヒーターとクーラーの切り替え不可
・ラジエター:クーラント液漏れ
・VVT-iプーリー:エンジンオイル漏れ
・カムシャフトパッキン:エンジンオイル漏れ
・ディスチャージヘッドランプバルブ切れ:ライト不点灯
・ドアミラー:格納不可
20年選手でありながら、ヘッドセットの黄ばみも皆無! 定期的に磨いているのだとか。ひでぼーさんのチェイサー愛が細部まで行き届いている
【予防整備としてやったこと】
・ECU分解整備:ハンチング、エンジンストール予防(キャパシタ交換)
・TCU分解整備:PWR ECT、ETCS SNOW、TRC OFF制御不能予防(キャパシタ交換)
・オルタネーター:充電不良予防
・エンジンマウントインシュレーター:エンジン振動軽減
・スターター:エンジン始動不可予防
・フューエルフィルター:目詰まり防止
・エアフローセンサー清掃:ハンチング予防
・スロットルボディー清掃:ハンチング予防
・ISCV(アイドル・スピード・コントロール・バルブ)フィルター
・交換:ハンチング予防
【近々交換予定】
・イグニッションコイル交換
エンジンルームも20年選手とは思えないほど、すみずみまで手入れが行き届いている。予防整備のおかげもあり、コンディションは維持できているが、やはり細かなトラブルはついて回るそうだ
■純正部品の入手に苦労していますか?(欠品・製造廃止している部品などご存知でしたら教えてください)
外装部品はほぼ製造廃止です。ISCV(アイドル・スピード・コントロール・バルブ)やゴムホース類も欠品が目立ってきています。ECU、TCU(スロットル・コントロール・ユニット)、ハーネス類やフロントグリルのエンブレムも欠品です。トヨタ部品共販にないものはネットオークションで手に入れるしかないです。
伊藤かずえさんのポニーテールは振り向きませんでしたが、日産は振り向いてくれましたね。どうかトヨタさん、お願いです! 日本全国にはチェイサーのレストアプロジェクトを心待ちにしている熱心なオーナーさんがたくさんいます。この機会にいわせてください。ぜひレストアプロジェクト立ち上げのご検討を!
約17万kmを走破してきたひでぼーさんのチェイサーツアラーV。ここまで走破できたのもひでーぼーさんのチェイサー愛のおかげ
■愛車の主治医のどのようなお店ですか?(ディーラー or 専門店等)
購入当初からお世話になっているネッツ店です。主治医のメカニックさんが優先度に応じて的確なアドバイスをしてくれるんです。21年間、ベストな状態に保っていただき本当にありがとうございます!
TRD製のシフトノブを装備。ゲート式のシフトゲートはツアラー系のみに採用された。シフトゲート周りにも傷1つない完璧な状態だ
■これからも乗り続けるご予定ですか?
もちろん、免許返納するまで乗り続けます! トヨタとヤマハが作り出した文化遺産とも言える素晴らしいクルマですから。
貴重なクルマに初年度登録から13年超えているからというだけで重課税をかけるのはおかしいと思います。日本も海外のようにレストア文化を大切にすべきです。
取材中、大切に保管している純正グリルに交換していただいた。普段使っている純正スポーティーパッケージのグリルから交換するだけで印象が激変する
■未来のオーナーのために購入時のチェックポイントや愛車のウィークポイントを教えてください
初年度登録から20年以上が経過しているクルマなので、少なからず故障する箇所が出始めています。しっかりと定期的なメンテナンスの記録が残っていることが理想です。
これから中古で手に入れることを検討している方は、ワンオーナー車で極力ノーマルに近い物を探してみてください。オートマなら程度が良い個体が残っている可能性があります。
1JZ-GTEはとても頑丈なエンジンですが、12万kmを超えたあたりからコンピューターの不具合、オイル漏れやクーラントの漏れが生じてきます。このクルマを長きにわたって維持していくためには予防整備を怠らないことが非常に重要です。
中古車屋さんでは必ずエンジンを掛けさせてもらって、ハンチングしていないか、マフラーから白煙が出ていないか見てください。手に入れたら真っ先にECUとTCUのキャパシタを交換してください。
また、タイミングベルトとウォーターポンプ交換時にカムシャフトオイルシールも同時に交換してください。なぜなら、あとから交換すると工賃が余計にかかるからです。
私の個体は10万kmのタイミングベルト交換直後にカムシャフトオイルシールが切れてエンジンオイルが漏れました。OCV(オイル・コントロール・バルブ)も壊れると非常にやっかいです。手に入れようとしている、あるいは手に入れた個体が10万kmを超えている場合は交換することをお勧めします。
私の個体は原因を究明するまですごく時間かかりました。ディーラーのメカニックさんも大変だったと思います。他の部品は不調が出てからでも大丈夫です。
これまでの整備に関する明細だけでなく、関連部品も大切に保管している。ほぼ見た目が同じのイグニッションモデル製ミニカーは宝物だ
■あなたにとって愛車はどんな存在ですか?
家族です。良き相棒、かけがえのない存在です。
オートマでも凄く速いですよ! 通勤の足としても使っていますし、近所の買い物やホームセンターなどで売られているような大きな荷物も入るので使い勝手がいいです。愛猫もこのクルマに乗ってドライブするのが大好きです。
リアには愛猫ちゃん同乗のステッカーがさりげなく貼られている。唯一?のオリジナルポイントか
愛猫のこたろう(虎太郎)ちゃんもチェイサーツアラーVでのドライブが大好きとのこと。カワイイ!
■取材後記
憧れのクルマを手に入れた瞬間から少しずつ気持ちが冷めていき、2年に1度の車検やニューモデルがデビューするタイミングで買い換えるケースは珍しくありません。
しかし、ひでぼーさんは憧れを現実にしたその日から今日までの21年間、まったくブレることなくチェイサーツアラーVに想いを寄せ続けています。
この個体を手に入れる前に作成された見積もり書をはじめ、あらゆる書類をファイリング。壊れた箇所をすべてディーラー任せにせず、時にはハンダごてを使って直してしまうというひでぼーさん。
とうの昔に生産終了になったモデルに使われていた純正部品が再生産されるサービスが、ここ数年、ようやく日本の自動車メーカーでも行われるようになりました。
決して簡単なことではないことは承知のうえで、ひでぼーさんのような一途なオーナーさんのためにもツアラーシリーズをはじめとするさまざまなクルマの純正部品の再生産する機運が高まることを願ってやみません。
走り去る姿が実にサマになる。古さを感じさせないデザインが若い世代のクルマ好きにも人気の理由かもしれない
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