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硬ければいい? 何がどう変わる?? 車体剛性が高いとクルマの何がどう良くなるのか?

掲載 更新 23
硬ければいい? 何がどう変わる?? 車体剛性が高いとクルマの何がどう良くなるのか?

 新型車が登場した際、メーカーによる広報資料に「車体剛性が30%アップした」と書かれていることがしばしばある。「3割も向上」と聞くと、それはいいクルマになったのだろう、と感じてしまうが、実は、それほど効いていないこともしばしばある。

 多くの人が読み飛ばしてるであろう「車体剛性」という言葉。なぜ、車体剛性が高いとクルマはよくなるのか。車体剛性が向上したのにクルマに効いていない理由とは!? 自動車メーカーでクルマの運動性能エンジニアをしていた筆者が解説していく。

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文:吉川賢一
写真:NISSAN、LEXUS、TOYOTA、HONDA、RENAULT、SUBARU

【画像ギャラリー】車体の剛性感がハンパなかった最近のクルマ達

コーナリング中の車体には「横曲げ」と「ねじり」の複雑な入力が

 車体剛性は、クルマのコーナリング性能に大きく関係してくる。クルマは、ステアリングホイールを操作すると、ステアリングコラムを通じてステアリングラックのギアを摺動し、フロントタイヤの向きを変え、スリップアングルを付けて、コーナリングフォースを発生させ、進行方向を変えている。

 また、旋回運動はリアタイヤも重要で、フロントタイヤがコーナリングフォースを発生してからわずかに遅れて、リアタイヤにもスリップアングルが付いてコーナリングフォースが発生し、定常旋回へと移る。

 そのシーンを車体上側から見下ろすと、旋回外側に向けて、車体はわずかに「くの字」型に曲がる。遠心力で外側へと膨らみたいボディと、前輪と後輪で発生したコーナリングフォースとが、釣り合うような状態となるのだ。

 この「くの字」変形が大きくなると、フロントの反応遅れや、リアの追従性が悪化することになる。そのため、コーナリング中の車体には、「横曲げ変形」を低減する構造が求められる。

スバル新型レヴォーグのフルインナーフレーム構造。太いフロントのサイドメンバー(黄色)は、高い横曲げ剛性を確保しているものと考えられる

 また、コーナリング中は、ロール(真正面から見たときのクルマの傾き)が生じることで、車体全体が捩じられるような力も働く。右旋回をイメージすると、前後の左輪(外側)は接地荷重が増加し、右輪(内側)は接地荷重が減少するのだが、その際、前左輪のサスがついている車体取付点(マクファーソン・ストラット式ならば車体側のストラットタワー頂点)を押し上げるような力となる。

 また後左輪も、サス(リンク部品やスプリング、ショックアブソーバー)が取りつく車体取付点に、突き上げるような荷重がかかる。

 こうして1つのコーナーの走行を考えるだけでも、「横曲げ」と「ねじり」の複雑な入力が、大きさとタイミングを変えながら車体に襲い掛かっているのだ。

「硬ければいい」というものでもない

 走行中のクルマには、ステアリングホイールを操作したときだけでなく、高速で直進走行しているときや急ブレーキを踏んだとき、突起物を乗り越したときなども、様々な入力がある。またエンジンのように、クルマ内部で発生する振動もある。

 これらの入力や振動は、サスペンションやエンジンマウントの対策だけではカバーができず、車体構造で振動を「いなす」(具体的には共振周波数をずらす)ような工夫が必要となる。車体で「いなす」ことによって、音や振動を小さくすることができ、乗り心地性能を向上させることができるのだ。

新型ヴェゼルの車体及びサスペンション。フロントストラット、リアビーム式とはいえ、車体には様々な経路を通じた入力がある

数値よりも「どこにどんな対策を施したか」が重要

 車体剛性がアップした、と聞くと、素晴らしい対策が施されているようにも思えるが、実は「剛性向上の割にはほとんど効いてない」ってことや、「もっと効率的なやりようがあったんじゃないのか?」と思う例もしばしばある。

 先日発表されたレクサスの新型NXでは、ダッシュパネルの周辺を補強してステアリングの周辺剛性を上げており、これは操縦性向上と、振動対策が目的だと考えられる。また、リアの開口部周りに車体補強が施されているが、この部分はキャビンの振動に大きく影響する部位であり、音振性能と乗り心地性能の対策と考えられる。

 これらの対策部位は、先代NXや、RAV4、ハリアーといった同カテゴリのSUVボディでの検討で得た知見をもとに、総合的に考慮して行われているはずだ。実際にどれだけ効果が出ているのか、試乗させていただくのが楽しみだ。

レクサス新型NXのボディ構造模式図。前型に対し、リアの開口部周りに車体補強を施している点と、ダッシュパネルの周辺を補強してステアリングの周辺剛性を上げている様子が読み取れる

 車体剛性は、車体の曲げ剛性や捩じり剛性は、車体の強さを示す「代用特性」に過ぎない。「捩じり剛性を〇パーセント向上」という数値よりも、何処にどのような対策を入れたのかが重要。数値は事実であっても、そっくりその分だけ性能向上したとは、信じない方がいいこともあるのだ。

【画像ギャラリー】車体の剛性感がハンパなかった最近のクルマ達

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みんなのコメント

23件
  • 車に限らず、メーカーの前に比べて(又は前年比)〇〇%Upってのは、信用しちゃいけない。
    都合のいいとこだけ取って〇〇%Upだから。
  • 硬ければいいってものではないでしょう。
    柔らかくして、衝撃を吸収する部分と、キャビンなどは硬くして、変形を抑え乗員の保護をする。
    硬さと柔らかさのバランスが、今の車の設計思想の主流だと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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