チェリーはクルマをよく理解している
ここまで中国の自動車産業が成長した理由について打越氏は、海外から優秀な人材を積極的に採用し、さまざまなことを学ぼうとしている姿勢を挙げた。現在のように市場が大きくなり、技術的に進歩している今も、その姿勢は変わらないそうだ。
【画像】7月21日に開所した『EMT R&Dセンター』で、打越晋CMOに単独インタビュー! 全11枚
もちろん、巨大な市場があるからこそ開発スピードを上げることができる、という背景も付け加えていた。
チェリーは中国の民間系自動車メーカーの中ではキャリアの長いほうであり、輸出については長年にわたり同国でトップを維持している。
打越氏は、「電動化や自動運転が進んでもクルマはクルマだし、自分もクルマが好きだからこそ、クルマをよく理解しているチェリーのような会社と一緒に仕事ができることは安心感がある」と語っていた。
EVについては、打越氏は日産在籍時代に初代リーフから関わっており、当時は航続距離が短いなど、さまざまな課題があったが、日本へ戻って2代目を社用車として使いながら、普段使いに合っていると思ったそうだ。
軽自動車ユーザーの多くは地方に
そしてマーケティングについては、従来のこの業界のやり方から、少し変えていこうと考えているという。
「軽自動車のお客様は地方に多くいらっしゃいますので、地方のテレビ局やラジオ局とタイアップし、お客様と双方向のコミュニケーションが取れる番組やイベントなどを展開していく予定です。そうした場所で地道にブランドやクルマを知っていただき、そこでのご意見を開発へフィードバックしていくような取り組みを進めていきます」
たしかにこれまでのクルマのマーケティングは『都市型SUV』のように、都市に向けたものが多かった。しかし日本を代表する大都市である東京は、群を抜いてクルマの保有率が低い場所でもあり、真にクルマを欲しているのは地方である。現状をしっかり見据えたうえでの話は、とても説得力があった。
すでに35社ほどと進行中
さらにEMTは、システムも新しくしていくとのこと。クルマ自体にOTA(オンラインでのソフトウェア更新)を組み込むだけでなく、販売現場で使う顧客管理やディーラー管理のシステムにAIやDXを導入していく。
具体的には、成約などの成功事例をデータに蓄積し、別の販売員が商談するときにアドバイスを提示できるようにしていく。これによって商談の質を高めていける仕組みを構想しているとのことだ。
ディーラー網の構築やスタッフの確保については、まずオートバックスのどのぐらいの店舗で販売を行うか、販売する場合はどのような出店形態をとるか、多様なパターンを模索しているという。
その一方で、すでに他車を扱っているディーラーの経営者にも声がけをしている。現在は35社ほどと『次に向けて検討を進めましょう』という段階に入っているそうだ。
スタッフの確保については、店舗の形態や大きさに合わせて「このぐらいの人数をお願いします」と具体的な提示を始めているという。採用自体は簡単ではないとしつつ、未経験であっても前述の販売支援ツールを用いてしっかりとトレーニングしていくので、幅広い人材を採用してもらうようにお願いしているそうだ。
『チェリーが作ったクルマ』ではない
個人的に気になっていたのは、前編冒頭に書いたように、先月の事業・ブランド発表会では、チェリーやオートバックスといった有名企業が関わっているにもかかわらず、これらの会社をあまり前面に出していなかったことだ。
日本のマーケットは超という文字をつけても差し支えないほど保守的なので、認知度のある名前を出した方が信頼につながるように思えた。
この点については、オートバックスの店舗は全国に約600あり、ここでサービスが受けられるということは、日本の中堅自動車メーカー並みのサービスネットワークをいきなり構築できることになるので、そのメリットは明確に示していきたいとしつつ、次のように答えた。
「『オートバックスが作ったクルマ』や『チェリーが作ったクルマ』という表現は、事実とは異なります。我々としては、あくまでEMTという会社がエムタというブランドを立ち上げ、自らクルマを開発しているという軸を、ブレずにお客様へ丁寧にコミュニケーションしていきたいと考えています」
打越氏によれば、これまでは自動車メーカーとインポーターというふたつの選択肢しか存在しなかったので、「EMTはどちらに入るのか」と当てはめて捉えようとする人が多いとのこと。ここでチェリーの名前が前面に出すぎてしまうと、既存の輸入車と同じ構造と解釈されてしまうリスクもある。
EMTはどちらでもない。新しいビジネスモデルに挑戦し、これまでにない価値を提供していくことをミッションとしている。
険しい道のりになるかもしれないが、その姿勢は貫いていきたいとのことだった。
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万博特需も大手宅配業との提携も悪い方に起爆剤になった。
さてどうする?