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MotoGPライダー中上貴晶が語る日本グランプリへの想い。「ケガを言い訳にしたくない。昨年の悔しさを晴らすため最後まで走り抜く」

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MotoGPライダー中上貴晶が語る日本グランプリへの想い。「ケガを言い訳にしたくない。昨年の悔しさを晴らすため最後まで走り抜く」

2019年シーズンは中上選手にとってMotoGP参戦2年目となる。最高峰クラスにステップアップを果たした昨シーズンは、それまで参戦してきたMoto2クラスとの大きな違いに戸惑うことも多かったと言う。

「MotoGPクラスに昇格し、ライダーとしてのステイタスも変わりましたし、メディア対応などやらなければいけないことが増えて、レースウィークの過ごし方が劇的に変わったんです。正直、昨年はその違いにずっとあたふたしていましたね。2年目となる今年は、その中でいかにレースに集中するか、やり方がわかってきたので、どっしりと構えられるようになりました。気持ちの面での変化がいちばん大きかったと思います」

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シャシーもエンジンもワンメイクのMoto2マシンに対して、各メーカーが威信をかけ、最新技術を競うMotoGPマシンは、その性能もキャラクターもまったく異なるという。

「メーカー同士が技術を競い合って作り上げるマシンなので、初めて乗った時は単純に『世の中にこんなに速いバイクがあるのか!』と驚きました。しかもそんな怪物マシンを1/1000秒でも速く走れるように操らなくてはいけないわけですから、プレッシャーはすごいものがありました。ホンダのワークスマシン、RC213Vは今年さらにエンジンパフォーマンスが向上していて、トップスピードは355km/hを記録したんですよ」

2019年シーズン第5戦のイタリアGPではMotoGPクラスでの自身最高位となる5位入賞を果たした。写真・本田技研工業しかしサテライトチームである「LCRホンダ IDEMITSU」に所属する中上選手が今シーズン乗るのは、ワークスチームに対して1年“型落ち”の'18年モデルだ。最新の'19年型に乗るワークスライダーに対して、ディスアドバンテージを感じることはあるのだろうか。

「正直、マシンの差は大きいです。チームメイトのカル・クラッチロー選手は19年モデルに乗っていて、彼の走行データを見ても、数値的な差は明らか。というのも今年の僕のマシンは、昨年クラッチロー選手が乗っていた18年型をそのまま使っているんですね。『シーズン中のアップデートはない』という契約なので、レースごとに新たなパーツが投入され、常に進化している19年型ワークスマシンとの差は、シリーズ後半になるにつれて開くばかりなんです。だからこそ、今シーズンは前半戦勝負だと考えていました」

5位入賞!そしてアクシデント中上選手の言う通り、今シーズンの開幕戦から、その走りは去年とは明らかに違っていた。初戦からシングルフィニッシュを連発し、得意とするムジェロ・サーキットで開催された第6戦のイタリアGPでは5位入賞と、MotoGPクラスにおけるベストリザルトを更新したのだ

「次は表彰台!」と期待された中上選手をアクシデントが襲ったのは第8戦アッセンGPだった。第8コーナーで転倒したV・ロッシ選手に巻き込まれる形でクラッシュ。約150km/hのスピードでクラッシュパッドに激突し、左足首と右肩を負傷してしまう。

「骨折していなかったのが不幸中の幸いでした。アッセンの翌週はドイツGPと連戦だったので治療より、次のレースを優先させたんです。ドイツでは激しい痛みに絶えながらなんとか完走することができました。その後はサマーブレイクで1カ月空いたこともあり、足首はよくなりましたが、問題は右肩でした。走行中、肩に力を入れると関節が外れそうになるという状態で……。痛みと、また肩が外れるのではないかという恐怖から、自分の思い描く走りがまったく出来なくなってしまいました。フリープラクティスから決勝まで、全セッションで肩にテーピングをし、痛み止めを飲んで騙し騙しレースを続けたのですが、やはりパフォーマンスの低下は明らかでした。それはドイツGP以降のレースリザルトが物語っていると思います」

タイGP終了時点で中上選手は74ポイントを獲得し、ランキングは12位につけている。写真・本田技研工業結果が評価に直結するライダーにとって、本来のパフォーマンスを発揮できない状況がいかに苦しいか、想像に難くない。しかも中上選手は、走るからには言い訳をしたくないと、自身のケガの状態をチームをはじめ誰にも話さずにいたという。

「もっと頑張りたかったし、だんだんよくなるんじゃないかという期待もあった」という気持ちとは裏腹に肩の具合がよくなる気配はなく、第15戦のタイGP前についにチームにすべてを打ち明けた。その結果、日本GPを今シーズンの最終戦とし、その後すぐに肩の手術をすることを決めた。

日本グランプリはどうしても走りたかった「サーキットによっては完走さえ危うい状況になってしまって、自分でも限界だと思いました。ドクターには『今すぐ手術した方がいい』と強く言われていたのですけど、日本GPまではどうしても走りたかったんです」

日本グランプリ後、日本で手術を受けたあとはリハビリに集中し、来年2月に行われるマシンテストでの復帰を予定している。

「日本GP以降の3戦を欠場するというニュースが先に伝わってしまい、ファンの方には心配をかけてしまいましたが、来シーズンもLCRホンダからMotoGPに参戦することが決定しました。残念ながら、今シーズンは日本GPが最後のレースになってしまいますが、そのぶんレースにかける思いは強いです。肩の状態を別にすれば自分自身の調子は良いですし、軽々しいことは言えませんが、少なくとも6位、7位は狙えると思います。成績を残せなかった昨年の悔しさを晴らすためにも、日本のファンのみなさんの期待に応えるためにも、しっかりと走り抜きたいです」

走りだけでなく、精神的にも大きく成長した中上選手が、果たして日本グランプリでどんな走りを見せてくれるのか、楽しみにしつつ大きな声援を送りたいと思う。

写真・本田技研工業中上貴晶/千葉県出身、26歳。4歳のときにポケバイに乗り始め、ミニバイク、ロードレースとステップアップ。2006年、14歳で全日本ロードレース選手権 GP125クラスで前線優勝し最年少チャンピオンとなる。2008年よりMotoGP世界選手権GP125クラス、2012年よりMoto2クラスにレギュラー参戦。2018年に最高峰のMotoGPクラスにステップアップし、「LCR HONDA IDEMITSU」より日本人唯一のMotoGPライダーとして参戦中。文・斉藤春子 写真・柏田芳敬

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