ルノー グランカングーが人気だ。撮影車両と同じカラーの「クルール」150台は瞬く間に完売し、その後に追加された第2弾の特別カラーもすでに完売。実際に乗った人の話を聞けば、「いいんだよ」と口を揃える。だが、何がどういいのかをあえて聞くことはしなかった。その答えは自分自身で確かめたかったから。話題がひと段落したタイミングで、じっくりと長期間付き合ってみることにした。
手放したはずなのに忘れられなかったカングー
実は自分も現行カングー(ディーゼル)を2023年の国内導入直後に購入し、約2年間所有していた。当初はアウトドアや家族とのレジャーで活躍する姿を思い描いていたものの、仕事や子育てに追われる日々のなかで、広大な空間を持て余すことが増え、悩んだ末に手放した。
ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
それでも、今なおカングー特有のほんわかとしたキャラクターや、しなやかな乗り味を思い出しては「手放さなければよかった」と後悔する瞬間がある。もっとも、仕事柄、日々さまざまな最新モデルに触れる機会があるから、「きっと、またもっといいクルマに出会えるはずだ」と自分に言い聞かせてきた。
そんななかで出会ったのが、グランカングーだった。
標準のカングーですら持て余していた我が家にとって、さらに大きなグランカングーは必要ないとも思える。しかしカングーを手放してから1年半が経ち、子どもたちは成長、また両親や友人を迎えて出かける機会も増えおり、「やっぱり1台ミニバン的なクルマがあると便利だな」と感じ始めていたのも事実だった。そんな思いを胸に、グランカングーのハンドルを握った。
待望のロングボディは家族のための新しい選択肢か?
遡れば、2023年10月のカングージャンボリーで初披露されたロングホイールベース版のグランカングー。このクラスの輸入MPV市場においては、すでにシトロエン ベルランゴやプジョー リフター、フィアット ドブロがロングボディ仕様を展開しており、3列シートモデルへの需要は着実に高まっている。そうした流れのなかで、グランカングーはやや遅れての登場だった。だからこそ期待値も高く、登場と同時に即完売という結果につながったのだろう【現在、第3弾の「グリ アーバン(グレー)」を販売中】。
あらためてその仕様を説明すれば、ボディサイズは標準カングー比で全長が420mm、ホイールベースが390mm延長されている。トヨタ アルファードと比較すると、全長は85mm短く、全幅は10mm広い。そう聞けば、このフレンチミニバンの存在感もイメージしやすいだろう。
さらにスライドドアも新設計され、リアドアの開口幅は830mmと標準車比で180mm拡大。日常の乗り降りはもちろん、チャイルドシートの着脱や高齢者の乗降にも恩恵をもたらしてくれる。
ボディサイズ拡大に伴って車両重量も増しているが、パワートレーンは1.3L直列4気筒ガソリンターボ+7速DCTの組み合わせで変わらない。駆動方式はFFのみだが、滑りやすい路面で駆動輪の電子制御を行う「エクステンデッドグリップ」とミシュラン製オールシーズンタイヤを組み合わせることで、アウトドアユースにも配慮されている。
人と荷物を載せてこそわかる「魔法の足」の真価
走り始めてすぐに気づいたのは、ボディの剛性感と足まわりの良さだった。
もともとカングーは、粘り強くしなやかなサスペンションに定評がある。その点はグランカングーでも健在で、ロングホイールベース化による安定感の向上やボディ補強の効果もあってか、むしろさらに魅力を増しているように感じられた。
正直なところグランカングーに試乗するまでは、車両重量が増加しているため1.3Lターボでは力不足に感じるのではないかと思っていた。しかし、この絶妙なパワー感がむしろ心地よい。必要に応じて回転を上げれば十分な加速を見せるし、普段の交通の流れのなかでパワー不足を感じる場面はなかった。今回の試乗では大人4名+子ども2名が最大乗車人数だったが、この条件なら不満はない。ただし、大人7名乗車や荷物満載の状態では、さすがに物足りないかもしれない。
それ以上に印象的だったのは、人や荷物を積んだときにこそ、このクルマの真価を発揮することだ。
乗員や積載量が増えるほど、足まわりのしなやかさが際立つ。電子制御ダンパーに頼ることなく、つるしのサスペンションだけでこの乗り味を実現しているのだから、大げさではなく「魔法の足」と呼びたくなる。これこそ、カングーファミリーならではの魅力である。
ホイールベースが延長されているにもかかわらず、ハンドリングに鈍さを感じない点も見逃せない。このサイズのクルマでありながら、コーナーで不安を覚えることはなく、ワインディングロードも意外なほど軽快に駆け抜ける。
もっとも、同乗する家族や友人のことを考えれば、そんな走り方をする必要はないだろう。ゆったりと景色を眺めながら走るようなシチュエーションが、このクルマにはよく似合う。
とくに高速道路を100~120km/h巡航し続けるようなシーンで、その真価がさらに際立つ。どっしりとした安定感と穏やかな乗り味によって、ロングドライブは実に快適だ。追い越し加速ではエンジン回転数が上がり、それなりに賑やかになるものの、そもそもそんな走り方をしたい気持ちにさせないのも、グランカングーらしいところだろう。
走りの質感や、カングーならではの温かみのある個性は、国産ミニバンではなかなか味わえないものだ。
日常を少し豊かにするグランカングーという存在
一方で、商用車ベースであることを感じさせる、カングーファミリーに共通する課題もある。たとえば、ダブルバックドアの構造上仕方のないことではあるが、ルームミラーにセンターピラーが映り込んで後方視界は決して良好とはいえないこと。走行中・後退中の確認作業はより慎重になる。ただし今の時代、バックカメラとデジタルインナーミラーを装着すれば解決できるはずで、ここは大きな問題になっていない。
そしてもうひとつ、後席用エアコン吹き出し口はセンターコンソール後端のみで、真夏の3列目に乗るとややツラい思いをするかもしれない。実際、以前カングーを所有していた際には2列目シートに座る子どもたちに向けて扇風機を用意したほど。こうした快適装備の充実度は、乗用車ベースの国産ミニバンに軍配が上がる。
それでもグランカングーでしか味わえない価値が確かにあるからこそ、ファンの多さにも納得させられる。
これまで何度かカングージャンボリーの取材をし、会場に集まるオーナーたちを見ても思ったが、このクルマを生活のなかに取り入れることで日常が少し豊かになる・・・そんな気がする。家族との時間がもっと楽しくなる。そんな未来を想像させてくれる。それは決して、大げさな話ではないだろう。
なお、7名乗車を前提としないのであれば、広大なラゲッジスペースを生み出すためにシートを取り外しておくことも可能だ。作業自体は簡単、ただし1脚あたり20kgを超える重量があるため、腰に不安を抱える人にはなかなかの重労働だろう。
もっとも、グランカングーを積極的に使い倒そうという人なら、きっと心身ともに健康でアクティブなはず・・・だと信じたい。
205/60R16サイズのオールシーズンタイヤを標準装着し、ぬかるみや積雪路など滑りやすい路面で駆動輪を電子制御してグリップしやすくする「エクステンデッドグリップ」を備えるなど、アウトドアへの備えも万全だ。一方で、オンロード性能を重視するなら、サマータイヤへの交換によって快適性や静粛性をさらに高める余地もあるだろう。
グランカングーは、ただの「大きなカングー」ではない。カングーらしさをそのままに、家族の成長やライフスタイルの変化を受け止める懐の深さを手に入れた、新しい選択肢なのである。
ルノー グランカングー クルール 主要諸元
●全長×全幅×全高:4910×1860×1810mm
●ホイールベース:3100mm
●車両重量:1690kg
●エンジン:1.3L直4ターボ
●最高出力:96kW(131ps)/5000rpm
●最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1600rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:7速DCT
●燃料・タンク容量:プレミアム・54L
●最小回転半径:5.6m
●WLTCモード燃費:14.7km/L
●タイヤサイズ:205/60R16
●乗車定員:7名
●車両本体価格:469万円(グリアーバンは472万円)
[ アルバム : ルノーグランカングー はオリジナルサイトでご覧ください ]
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