チューナーとしての活躍からBMW公認の完成車メーカーとなったアルピナが手掛けたSUV。他のアルピナモデル同様、“アルピナマジック”とも称されるチューニングが施され、快適で速い、グランドツーリング性能を重視した1台に仕立てられている。
SUVをつくることは必然の流れ
今どき珍しいぐらいのジキルとハイドぶり。MHEV化してもRS6アバントはRS6アバントのまま!
その歴史においてスーパーリムジン&ツーリングをつくり続けてきたアルピナが初めて手掛けたSUVは国内では2014年に発売されたX3ベースのXD3だった。世界的にみてもSUVは単なるブームではなく、いまやセダンやステーションワゴンを押しのけ、もっとも人気のカテゴリーに成長したことに鑑みれば、アルピナであってもSUVをつくることは必然の流れだったと言えるだろう。
案の定XD3はヒット作となるのだが、だからといってアルピナ全体の生産台数が増やされるわけではない。ハンドメイドにこだわり、年間約1700台という規模を維持し続けている。ただ、SUVの割合が高まりつつあることはたしかだ。2019年には、現行型X3(G01)をベースとした新型アルピナXD3が登場し、さらにSUVクーペのアルピナXD4も追加された。そして、2021年には、アルピナ初の大型SUV、XB7が登場している。
アンダーステイトメントであることにこだわったスタイル
あらためてXD3に試乗する機会を得た。アルピナブルーメタリックのボディに、シルバーのデコラインが組み合わされた定番カラーのモデルだった。フロントのリップスポイラーの中央に配されたALPINAの文字と、リヤエプロンに組み込まれた2組のツインエキゾーストテールパイプが、只者ではないことをさり気なく主張している。
足元にはオプションの22インチサイズの、アルピナクラシックホイールを装着していた。フロント255/35ZR22、リア295/30ZR22と前後サイズが大きく異なるのは、アルピナの伝統的なシャシーチューニングの1つの手法で、グランドツーリングカーとしての直進性を重視し、安定性を高めたハンドリングを実現するものだ。
22インチでこの乗り心地を実現していることは素直にすごいと思う。ただし、荒れた路面や目地段差ではさすがに硬さを感じる場面もある。22インチのルックスは捨てがたいが、もしアルピナらしいジェントルな乗り味を求めるならば、標準の20インチサイズを選んだほうがいいかもしれない。
インテリアは、アルピナ定番のウッドパネルと上質なレザーを組み合わせたもの。LED式のフルカラーデジタルメーターパネルは、アルピナ専用の青い文字盤を採用する。そしてハイライトは、手触りのいいレザーにブルーとグリーンのステッチが施された手仕上げのステアリングホイールだ。BMWのMモデルが極太ステアリングを採用するのに対して、アルピナは細身で、かつステッチが手に干渉しないようにとあえて装飾的なクロスステッチを廃している。またシフトパドルのような大げさなものは装備しない。スポークの裏に配された小さなボタンでシフト操作を行う。アンダーステイトメントであることに、徹底したこだわりをみせる。
他モデル同様の“洗練された”走り
パワートレインは、BMWのX3 M40dをベースとした3リッター直6ディーゼルターボに独自のチューニングを施したもの。最高出力333ps、最大トルクは1750rpmという低回転域から700Nmを発揮する。発進時は多少のノイズは気になるものの動き出してしまえば、ディーゼルであることを忘れてしまうほどのきめ細かさだ。またスロットルに対するエンジンの反応もうまくチューニングされており、大トルクにありがちな過敏さのようなものはない。
ほんのわずかに右足に力をこめるだけで、気がつけばするすると速度があがっていく。アルピナといえば、BMW Mモデルと比較されることが多いが、アルピナは快適かつ速い、グランドツーリング性能を重視したもので、より洗練されているという結論はどのモデルであっても変わらない。
ちなみにクーペボディのXD4では、3リッター直6ディーゼルをなんと4基のターボチャージャーで過給し、最高出力388ps、最大トルクは770Nmに到達している。
さらに、今年上陸予定の2021年モデルのXD3では、ベースモデルのマイナーチェンジに合わせてマイルドハイブリッドを初採用。3リッター直6ディーゼルをツインターボで過給し、最高出力355ps、最大トルクは730Nmを発揮するというから、そちらも楽しみだ。
文・藤野太一 写真・デレック槇島 編集・iconic
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みんなのコメント
その上の5・6・7のシリーズ化に踏み込むとは思えないから、ALPINAの奮起に期待したい。