国産BEVが大幅進化し世界水準に追いついた
ここ数年、日本でのBEVの販売シェアは1~2%程度で横ばい状態だ。乗用車の主流になるのはまだ時間がかかるとしても、車種が増え、理解も進んだ。もう少し増えてもいいのではないだろうか。販売データを紐解くと、輸入車は豊富なラインアップを背景に堅調に伸びている一方、日本メーカーのBEVは、一時は拡大の兆しを見せながらも、消えていく車種もありむしろ落ち込んでいた。輸入車の増加を日本車の減少が相殺し、全体ではプラスマイナス・ゼロという状況にとどまっていたのだ。性能面も、高価な欧州車や先進的な半導体を使う中国や韓国のメーカーにやや遅れをとっていたというのが正直なところ。足もとの日本メーカーが魅力的なBEVを用意できていなかった以上、シェアが伸びないのも当然だ。
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だが、2026年は状況が異なる。トヨタとスバルが共同開発したbZ4Xとソルテラは、プラットフォームにまで手を入れる大規模な改良を施して性能を大幅に向上。日産リーフは15年にわたる経験と知見を注ぎ込み、意欲的なフルモデルチェンジを果たした。さらにスズキは世界戦略車であるビターラをBEV化したeビターラを投入。性能的にも世界トップクラスに肩を並べる水準に達し、ようやく明るい兆しが見えてきたのだ。
そこで今回は3台でショートトリップを行い、電費や急速充電性能を含めた実力を検証した。
初期の不振から心機一転で巻き返しを図るソルテラ
2022年に登場したソルテラはトヨタとの共同開発ということもあり、日本のBEV販売に弾みがつくだろうと期待された。しかし初期のリコールでつまずいたうえ、輸入車の進化が急速だったこともあり、電費や一充電走行距離は十分とは言えず、低温時の急速充電の受け入れ能力の課題が指摘されていた。そこで大幅な改良が施されたのだ。
改良前のFWD(前輪駆動)モデルが、電費128Wh/km、一充電走行距離559kmだったのに対して、改良後は113Wh/km、746kmへと大きく進化している。プラットフォーム改良の目的はバッテリー容量拡大で、71.4kWhが74.7kWh へ増加しているが、一充電走行距離の伸長への寄与は限定的だ。むしろ従来Si(シリコン)主体たった半導体を、SiC(シリコンカーバイト)へ換装したことでエネルギーロスを約40%削減するなど、パワートレイン自体の進化が大きく効いている。
今回の試乗車は4WD。改良前は前後80kWでシステム出力160kWだったのに対し、新型は前167kW/後88kWで252kWと大幅に向上。0-100km/h加速は1.8秒も縮めた5.1秒だ。
しかし、市街地を走り始めるとそのハイパフォーマンスをことさらに主張することはなく、エンジン車やハイブリッドカーから乗り換えても違和感のない自然な運転感覚を示す。静粛性も高く、全体的に洗練された印象だ。とはいえアクセルを深く踏み込めばスポーツカー並みの鋭い加速を見せてくれる。
シャーシ性能の進化も顕著だ。ボディ剛性の向上と、サスペンションおよび駆動制御の見直しによりストロークが滑らかで快適である一方、上下動が抑えられてフラットな乗り味が実現している。試乗車は20インチタイヤを装着していたため、わずかにバネ下の重さを感じる場面もあったが、標準の18インチタイヤならばもっとスッキリするだろう。コーナーでは接地感が明瞭で、ステアリング操作に対する正確性も高い。改良の効果は随所で実感できる。
これからの熟成が楽しみなスズキ初の量産BEV
スズキ初の量産BEVとなるeビターラは、ソルテラやリーフに比べると蓄積された経験が少ないことは不利と言える。ただしBセグメントのBEVとしては珍しく4WDを設定しているのは特徴的だ。今回の試乗車はFWDで、フロントモーターは最高出力128kW、0-100km/h加速は8.7秒(4WDは7.4秒)。ソルテラに比べると物足りなく思えるかもしれないが、実用上は十分な性能であり、実際の加速にも不満はない。モーター特有の低速トルクの厚みがあり、数値以上に頼もしい。
モーターはゼロ回転から最大トルクを発生できるメリットがあるが、そのままでは唐突で扱いにくく、駆動系への負担も大きい。そのため穏やかに制御しているのだが、eビターラはマージンが大きめに取られている。
市街地を普通に流しているときは気にならないものの、とっさに加速させようとしてアクセルを踏み込んだときにはワンテンポ遅れて加速が立ち上がる。スポーツモードではそれが顕著になって走りのリズムがとりにくい。結果としてECOモードのほうがトルクの繋がりがスムースに感じられた。それ以外の領域では素直な特性で、BEV初心者でも扱いやすい仕上がりだ。
低速域での乗り心地はやや硬めで往年のドイツ車を思わせるが、速度が上がるとしなやかになって快適に感じられる。ボディの上下動はやや大きく、もう少しダンピングを利かせたい場面もあるが、その方向に振ると突き上げが強くなりそうで、現状ではバランスを取った設定といえる。
ハンドリングは穏やかで、積極的に攻めるよりもリラックスしたドライブに向いている。リヤサスペンションにマルチリンクを採用していることもあり、スタビリティは高く安心感のある挙動だ。
中~長距離で使いやすいEVはどれだ⁉
3代目で全面的に刷新しプレミアムカー級の走りへ
3代目リーフは全面的な刷新を受けたモデルだ。一充電走行距離は最大702kmとCセグメントとしてトップクラスの性能を実現。それも半導体にSiCを使わずSiのみだという。パワートレインにバッテリー、空調システムまで統合したサーマルマネジメントが電費改善に大きく貢献している。
アクセル操作に対してレスポンス良く反応しながらも、押し出しが過剰にならないように絶妙に洗練された加速フィールだ。モーター、インバーター、減速機を一体とする高剛性化で振動低減も効いており、スタンダードな価格帯ながらプレミアムカーに近い質感となっている。
乗り心地も上質だ。路面から大きな入力があっても突き上げは丸く処理され、それでいて上下動が残らない適度なダンピングが得られている。同じプラットフォームを採用するアリアの乗り心地が硬めと言われた経験から学習した結果だろう。低重心ながら重たいBEVはピッチング制御が難しいが、ひとつの回答を示している。
BEV市場を賑わせてくれることに期待がかかる日本メーカーの3台は、少なくとも一充電走行距離をはじめとする、BEVとしての機能は満足度が高い。2026年は増額されたCEV補助金に背中を押されてBEV生活を始める、いいタイミングと言えるのだ。
EVの肝心要の電費&充電性能比較!
各車SOC90%以上で東京・神田を出発し、高速で南房総へ。この間は3台並走で電費を計測。移動距離は113km、エアコンは24℃で走行した。個別試乗ののち、帰路は木更津市内の50kW急速充電器で10分間充電を行った。
充電:eビターラがトップだがソルテラの進化に驚いた
50kWの急速充電器を用いて、それぞれ充電の受け入れ能力を試してみた。平均出力はeビターラ49.22kW、リーフ46.2kW、ソルテラ49kW。急速充電中はバッテリーなどの温度が上昇し、熱によるロスが発生するので出力はスペックの9割ほどに落ちることも少なくないが、今回の3台はどれも優秀。とくに49kW超えは素晴らしい。
ただし、今回は気温が15~17℃程度と涼しく、外部環境的にはかなり良好だった。バッテリーの適正温度は20~40℃程度で、その範囲にあれば内部抵抗が小さく、急速充電でもスムースに電気が流れていく。とくに低温時は受け入れにくい。eビターラは充電開始時のSOCが28%と低かったので受け入れやすかったのだろう。あるいは、日本メーカーのBEVとして初めてLFP(リン酸鉄)バッテリーを採用しており、三元系バッテリーに比べて熱耐性が高いので有利なのかもしれない。
リーフはほかの2台に比べてわずかに出力が低かったが、十分に高性能な部類と言える。ソルテラははっきりと進化を確認できて嬉しかった。というのも、以前に気温7℃のなか初期型ソルテラで90kWの急速充電器を使用して45kW程度しか出力が出ていないことがあった。低温時の充電受け入れ能力に課題があったのだが、新型はプレコンディショニング機能が搭載され、低温時でも充電受け入れを絞ることはなくなっている。こういった点が、BEVの実用における重要な進化なのだ。
電費:ソルテラの高効率が光るがリーフの空力が高速で奏功
eビターラは車検証に記載される車両重量が1790kgでWLTCモード電費7.63km/kWh、リーフは1960kgで7.3km/kWh、ソルテラは2030kgで7.41km/kWh。駆動方式や装着タイヤ、オプションなどで電費も異なり、それぞれもっとも良好な電費のモデルはeビターラ8.0km/kWh、リーフ8.47km/kWh、ソルテラ8.85km/kWhとなる。
ソルテラはもっとも重量級であるにもかかわらず電費は最高値であることからも、いかに高効率であるかがわかる。リーフはSiC半導体を使用せずにこの数値だから健闘。eビターラはベーシックなBEVとして標準的といったところだろう。
今回は高速道路が約8割、流れのいい郊外路が約2割、ごくわずかに市街地というコースを走った。実電費はeビターラが5.78km/kWhでWLTPモード達成率は75%、リーフが6.29km/kWhで86.1%、ソルテラが6.05km/kWhで81.6%だった。リーフが突出して達成率が高いのは高速主体のコースで優れた空力性能が効果を発揮したのだろう。ファストバックスタイルにすることでCd値0.26を達成。空気抵抗は速度の2乗で悪化していくので、高速域の電費改善はBEVにとって重要な項目なのだ。ソルテラは良好なモード電費に対して約8割の達成率で実用でも進化していた。eビターラはシティコミューター寄りのモデルだからコース的に少し不利だったかもしれないが、それを考えれば立派。
※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております
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みんなのコメント
150KW急速充電器でテストするべきでしょう。