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すべてのF2ドライバーにF1のチャンスはある。F2パドック事情とコンディション維持のノウハウ【宮田莉朋“三刀流“コラムLAP 7】

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すべてのF2ドライバーにF1のチャンスはある。F2パドック事情とコンディション維持のノウハウ【宮田莉朋“三刀流“コラムLAP 7】

 2023年にスーパーGT、スーパーフォーミュラでダブルタイトルを獲得したTOYOTA GAZOO Racing(TGR)の宮田莉朋選手。2024年は海外に拠点を移してFIA F2、ELMS(ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ)に参戦しつつ、WEC(FIA世界耐久選手権)にテスト・リザーブドライバーとして帯同します。

 第7回目となる今回のコラムでは、今季前半戦を振り返り、FIA F2のパドック事情、日々のコンディション維持のノウハウなど、莉朋選手が感じたことを徒然とお届けします。

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 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 みなさん、こんにちは。宮田莉朋です。8月に入り、2024年シーズンの主戦場となるFIA F2とELMSはともに後半戦に入りました。今回はまず、7月までの今季前半戦を振り返りたいと思います。

 ほとんどのサーキットが初めてでしたし、初めて訪れる国というのも少なくはありませんでした。また、世界での戦いは自分が思っていた以上に、簡単なことではありませんでした。レースが終わるたびに、『もっといい結果を残したい』という気持ちを抱いたまま週末を終える日々です。

 FIA F2はサマーブレイク前の第10戦スパ・フランコルシャン終了時点でドライバーズランキングで22人中18位。順位結果だけを見れば「なんだ、宮田もこんな感じか」というふうに思われてしまうかもしれません。ただ、ロダン・モータースポーツのエンジニアやスタッフ陣は僕の状況をしっかりと理解して、支えてくれています。おかげで、レースウイーク中は自分の仕事に集中する環境を整えてもらっているので、チームにはいつも感謝しています。

 前半戦は想像以上の困難もありました。ただ、『世界のレースに挑みたい』という想いは、国内レースを戦っていたころから抱いていました。そう考えてみると、厳しい戦いが続くなかではありますけど、夢のような時間を過ごせているという実感も出てきますね。

 FIA F2も残すは4戦/8レースとなり、最終戦ヤス・マリーナ(アブダビ)以外の3コースは初めてのコースとなります。ヨーロッパでキャリアを重ねてきたドライバーたちと、初めてのコースで、45分間のフリー走行を経験しただけで戦うため依然として難しいレースとなりそうです。ただ、これまでと変わらずベストを尽くして、残る4戦/8レースでも自分の今後や来シーズンに繋がる走りができたらと思います。

 ELMSに関しては、僕がFIA F2参戦のために第3戦イモラ4時間を欠場したこともあり、僕がシリーズチャンピオンになるということは現実的に難しい状況です。そのため、チームタイトル獲得を目指すことを目標に、残る3戦全戦で優勝を狙って頑張りたいです。

 開幕戦は優勝できましたが、第2戦以降はノーポイントが続いているので、次戦となる第4戦スパ・フランコルシャン4時間では波に乗ることができるように、クール・レーシングのみんな、そしてチームメイトのロレンツォ・フルクサ選手、マルテ・ヤコブセン選手とともに頑張ります。

 ル・マン24時間を終えてからは、おもにFIA F2の連戦が続きましたが、その合間にはテスト・リザーブドライバーを務めているTGR WECチームのお仕事で、WEC第5戦『サンパウロ6時間』に向けたシミュレータードライブを担当しました。インテルラゴス・サーキットは自宅のシミュレーターでもドライブ経験はありますが、TGR-EにあるWEC用のシミュレーターで経験し、奥が深いコースだと感じました。

 コーナーのひとつひとつのR(半径)が長い上に、左、右、左というふうにコーナーが連続します。そのため走行ラインも限られ、攻め際が難しいコースだなという印象です。いつかは実際にレースを戦ってみたいですね。

 そんなWEC第5戦では、8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組)が今季初優勝を飾りました。今季は優勝できそうでできないというレースが続いていたこともあり、8号車の優勝は僕も嬉しいです。

 WECも残すは3戦と、こちらも終盤が近づいていますがTGRが挽回して、シリーズタイトルを獲得できるような流れになればと、心から願っております。

■FIA F2パドック事情。すべてのドライバーにF1へのチャンスはある

 WECといえばELMSでチームメイトのヤコブセン選手が来季WECハイパーカークラスに参戦するプジョーのレギュラードライバーに決まりました。彼も僕と同じくハイパーカークラスを目指していたので、僕も素直に嬉しいです。これでELMSにも、もっと注目が集まればなお嬉しいですね!

 また、FIA F2ではオリバー・ベアマン選手(プレマ・レーシング/フェラーリ育成)のF1デビュー決定発表を筆頭に、何名かのFIA F2ドライバーのF1昇格の噂やそれに関する記事を見かけます。彼らがドライバーとして速いからこそ、そういったチャンスが生まれたと思うと同時に、FIA F2まで来ると各ドライバーの技量にそこまで極端な差はないとも感じていたりもします。

 そのなかで、F1に上がれるか上がれないかの差がどこで生まれるのか。まずは今のFIA F2でしっかりとしたリザルトは残すのは当然として、世界のトップアスリートとして相応しい言動や人間性や魅力があった上で、運やタイミングに恵まれた人たちがF1へのチャンスを掴んでいるのだと、彼らと戦い、彼らと同じパドックにいるとそう感じます。

 逆に言えば、FIA F2に参戦するすべてのドライバーにF1へのチャンスはあると感じます。F1チームの育成プログラムに所属することも大事なことではありますけど、育成プログラムのドライバーではないからといって、F1へ行けないというわけではないとも感じました。

 F1直下のFIA F2では、他のどのカテゴリーにもない、F1を目指したかなり熱く激しい戦いがコースの外でも繰り広げられています。ただ、バチバチの戦いばかりではなく、横の繋がりやコミュニケーションもしっかりとあります。

 たとえば、FIA F2ドライバーが参加した旧型F1マシンのテストなどは、メディアに報じられているテスト情報だけではなく、実際にはもっと頻繁に行われていると聞きます。そういう情報はFIA F2に参戦しているからこそ知ることができたりしますし、個人的には、F1をテストしているのはかなり羨ましいです。

 ちなみに、チームメイトのゼイン・マローニ選手(ザウバー育成)以外だと、FIA F2の現場で特に仲良くしてくれているのはクッシュ・マイニ選手(インビクタ・レーシング/アルピーヌ育成)です。開幕戦サクヒールの土曜日にマイニ選手から声をかけてくれたことがきっかけですね。挨拶はいろいろなドライバーと交わしますけど、会話に発展するのはマイニ選手が多いです。ただ、ドライバー同士が言葉をかわしていると、そこに他のドライバーもぞろぞろやってきて、いつの間にか数人の輪になっている感じで話しています。

■日々のコンディション維持のノウハウ

 さて、しばらくは連戦が続いていたこともあったためか、食事のこだわり、睡眠、トレーニングといった日々の『コンディション維持のノウハウ』を教えてくださいと、リクエストをいただきました。ただ、僕の食生活は日本にいたころとあまり変わっていなかったりします。

 僕は日本にいたころから自分で料理をしていたので、自分では栄養面で偏りのない食事はできていると感じます。ただ、今年からは食生活に関しては平日もレースウイークと同じようにしようと心がけていますね。というのも、日本にいたころは普段は朝食を食べずに、昼食と夕食だけで済ませていたのですけど、レースウイークの際には朝食も含めて1日に3回食べるという生活でした。

 ただ、ヨーロッパに来てからは普段から朝食もしっかり食べようと思い、今は1日3食を心がけています。昼食に関しては野菜、肉類などのタンパク質に加えて、パスタやパンなどの炭水化物も取り入れています。夕食は基本的には炭水化物は摂らず、タンパク質と野菜、ヨーグルトを摂るようにしています。それでも、メニュー内容は日本にいたころとあまり変わっていません。

 睡眠に関してはここ最近はヨーロッパ内でのレースが続いているため違和感なく過ごすことができています。ただ、一番苦手だなと感じたのは、ドイツからイギリスとか、中途半端に時差が1~2時間あるところですね。睡眠を含めた実生活に地味に効いてくる感じです。逆に、大きく時差がある国の方が、楽に適応して過ごすことができたりしました。

 日々のトレーニングでは首に加えて、今は腕にも重点を置いています。というのもFIA F2マシンにはパワーステアリングがありません。日本ではスーパーフォーミュラをはじめ、4~5年はパワーステアリングがあるクルマに乗っていました。そこからパワーステアリングがないフォーミュラカーに変わると、当初はパワーステアリングがないことが違和感だとすら感じていたりしました。

 当然、パワーステアリングがないことによる疲労はあります。そのため、疲労した部分をしっかりと鍛えるようなトレーニングに切り替えて取り組んでいます。

 それに関連して、レースウイーク中では走行セッション前にテニスボールを使った反射神経のウォームアップを行っています。国際映像には映らないのですけど、実はFIA F2ドライバーの多くが同様のウォームアップを行っていますね。僕もそうですが、FIA F2ドライバーの多くはフィジオが帯同しているので、フィジオと一緒にウォームアップをしている姿はよく見かけます。僕はクルマに乗るギリギリのタイミングでやって焦ったりするのは嫌なので、クルマに乗る1時間前にやるようにルーティン化しています。

■サマーブレイクには久々の帰国の予定&SF坪井選手へのメッセージ

 さて、このコラムが掲載される頃はサマーブレイク中です。僕には1週間弱しかないサマーブレイクですが、オフシーズン以来、久しぶりに日本に帰国する予定です。

 そして、8月といえばもう来シーズンの準備をしなければいけない時期でもあります。帰国した際には、お世話になっている方々に自分の近況と、自分がやりたいこと、そして感謝を直接お伝えしたいと考えています。

 サマーブレイク、夏休みといえば休日という感覚の方が多いかとは思いますが、8月はレーシングドライバーにとって、次のシーズンを左右するすごく大事な時期だと僕は考えています。1週間弱しかないありませんが、この間にやるべきことをやり、サマーブレイク明けの後半戦にしっかりと臨めるように準備を進めたいと思います。

 最後になりましたが、去年のスーパーGTのチームメイトで、今年、僕のスーパーフォーミュラ(SF)のマシンを乗り継いでもらった坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM’S)、スーパーフォーミュラ第4戦富士の優勝おめでとうございます。

 外から見ているだけですが、今年から変わった共通ダンパーがSFの新しい面白さを生み出しているなと感じますね。昨年までよりも考える要素が減ったことで、ダンパーの目指すべきところが各チーム同じ方向になったのかもしれません。それでもしっかりとタイム差が出るのが、スーパーフォーミュラの奥深い部分ですね。

 坪井選手はSFキャリアでは4年ぶりの優勝で、本当に嬉しいことだと思いますし、昨年まで僕が乗っていたクルマなので、僕もなおさら嬉しいです(笑)。それではまた次回のコラムで!

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みんなのコメント

4件
  • jjb********
    この記事を読んで思ったがF2メンバーは全員年下でフォーミュラマイレージは1番経験がある宮田が初めてのコースとか他はヨーロッパの経験があるとか言い訳ばかりしてるのは日本のトップドライバーとして問題があると思う。
    自身満々で海外に行ってF2惨敗して日本に帰って来ても他のドライバーは認めないだろう。
    ホンダ育成、トヨタ育成のドライバーが低年齢から海外で活躍出来る様な環境をメーカーが道標して欲しいです。
  • kxy********
    残念だけど宮田のF1への道は消えてなくなったな。
    F2での成績が悪過ぎてどうしようもない。
    角田の様な適応力が無く、またチームメイト対決も惨敗。
    来年はWECに乗るか、フォーミュラに乗りたければSFに戻るか
    インディカーに乗るならシボレーエンジン搭載チームを探すしかないな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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