毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
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しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はマツダ トリビュート(2000-2006)をご紹介します。
文/伊達軍曹、写真/MAZDA
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■ライトSUV初の3L V6エンジンを搭載し登場したマツダ トリビュート
マツダがフォード傘下だった2000年11月に、フォードとの共同開発により誕生した――米国の基準で言えば――コンパクトなSUV。
しかし、おそらくはSUVというものに対する日米両国民の「解釈と好みの違い」により日本ではパッとせず、2006年3月に販売終了となったモデル。
それが、マツダ トリビュートです。
マツダ トリビュートは、前述のとおり当時マツダの親会社であったフォードと共同開発されたSUV。
基幹部分を共用するモデルは、アメリカ市場では「フォード エスケープ」、ヨーロッパ市場では「フォード マーベリック」との車名で販売されました。
マツダ トリビュート。全長×全幅×全高は4394×1798×1760mm
トリビュートの車台はフォードとマツダが共同開発したもので、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアはマルチリンク式となる4輪独立懸架です。
当初の搭載エンジンはフォード製のV6 3Lおよび直4 2Lでしたが、2Lエンジンは2003年12月に、新開発のオールアルミ製2.3L直4「MZR」に変わっています。
駆動方式は多板クラッチを用いた「ロータリーブレードカップリング」を介して4輪を駆動する4WDのほか、2LにはFFも設定されていました。
外観デザインは比較的いかつい感じのクロカン風ですが、「乗用車ライクなインテリア」をテーマにデザインされたという室内のデザインは、思いのほか乗用車風というかミニバン風。
リアビュー。当時のマツダのデザインテーマ「コントラスト イン ハーモニー」を反映させ、ボンネットのキャラクターラインや力強い前後のフレアフェンダーなどにより、街中でも自然の中でも際立つ外観とした
ATはコラム式で、フロントシートはアメリカ車的に「肉厚な感じ」のビジュアルです。
荷室は最大床面幅125cmの奥行き92cmで、天井までの高さは97cm、容量は940Lと、ボディがそこそこ大きいだけあったなかなか大容量です。
またハッチゲートの「ガラスハッチだけを開閉できる」というのも、マツダ トリビュートの便利な点ではありました。
とはいえマツダ トリビュートの販売は日本ではまったく振るわず、2005年10月に国内での生産を終了し、翌2006年3月には販売のほうも終了となりました。
■フォードとの“相乗効果”が悪く出た? マツダ トリビュートの敗因
「あっという間」というほどではありませんが、それでも比較的短期間でマツダ トリビュートというSUVが国内では消滅してしまった理由。
それは、基本的には「さほど出来の良いSUVではなかったから」ということになります。
室内は広く便利で、その割には車両価格も低めでしたので、そういう意味では、決して悪い車ではないマツダ トリビュートではありました。
インパネ。SUVながらコラムシフトを採用(2006年に登場したアジア太平洋仕様車はフロアシフトとなった)。3L V6 4WD LXで224万8千円、2L直4 2WD LXで179万8千円と、安価な価格設定を実現していた
しかし当初の2Lエンジンはノイズや微振動が大きく、実用回転域でのパワーとトルクも今ひとつ。
そして硬めのサスペンションを採用したからでしょうか、走行中は路面ギャップでの突き上げもややキツく、後席の乗り心地も決して快適ではない――みたいな感じだったのです。
これは要するに「ひと昔前のアメ車の悪いところそのもの」であるため、下記のように言うこともできるでしょう。
「財務状況的に仕方なかったとはいえ、あの時期のマツダは、フォードなんかと手を組んだ(フォードが筆頭株主となり、社長もフォードから送られた)のがいけなかった」と。
……たしかにそういった部分もあるでしょう。しかし「フォードとの協業のすべてが悪かった」ということも、決してなかったはずです。
Bセグメントの「デミオ」では、マツダが基本設計を行ったそれのフォード版が「フィエスタ」の名で世界にデリバリーされましたし、ひとつ上のCセグメントでは、同じく当時フォード傘下だったボルボのチームが開発したプラットフォームが「マツダ アクセラ」として、あるいは「フォード フォーカス」として成功を収めています。
フォードとマツダの提携は、たしかにシナジー(相乗効果)も生んだのです。
しかし残念なことにトリビュートの場合は、車台もエンジンも明らかに「米フォード的」でした。
2008年に発売が開始された2代目(日本では未発売)。残念ながらこちらも長くは続かず、2011年に終売、トリビュートはその歴史に幕を降ろすことになる。一方でフォード エスケープは歴史を重ね続け現在は4代目を数える
筆者は米国人になったことがないので正確なところはわかりませんが、当時の米国人は、SUVに関しては「こういう感じ=雑でワイルドな感じ」を好んだのか、もしくは「SUVってのは要するに商用車みたいなものなので、こんな感じで十分でしょ?」ぐらいに思っていたのかもしれません。
まぁこれは推測にすぎませんし、今現在の米国人は、SUVにも「それなり以上のクオリティ」を求めているはずです。
しかし2000年11月という微妙な時期に誕生したマツダ トリビュートは、日本人の感覚からすると「ちょっとざんねんなSUV」でしかありませんでした。
■マツダ トリビュート主要諸元
・全長×全幅×全高:47395mm×1790mm×1750mm
・ホイールベース:2620mm
・車重:1400kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1988cc
・最高出力:129ps/5400rpm
・最大トルク:18.7kgm/4500rpm
・燃費:9.8km/L(10・15モード)
・価格:196万1000円(2000年式 LX Gパッケージ)
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みんなのコメント
それだけにCX-5がデビューした時は驚きでした。
フォードとの協業も一時的には無くてはならなかったのは否めませんが負の部分の方が多かったとしか思えませんね。