海運業界の危機と回復の軌跡
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、多くの産業に深刻な影響を及ぼし、海運業界も例外ではなかった。物流の要として機能するこの業界は、国際貿易の縮小や労働力不足、船舶運航の遅延など、さまざまな課題に直面したが、一方で回復に向けた取り組みや新たな機会も生まれた。
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海上輸送は、貿易量の99.6%、国内貨物輸送の4割超を占め、国民生活や経済活動を支える重要な経済インフラだ。しかし、2020年初頭に新型コロナウイルスのパンデミックが始まると、多くの国がロックダウンを実施し、国際貿易の流れが一時的に停止した。
コンテナ輸送や原油輸送など幅広い分野で貨物量が激減し、海運業界の収益も大きく落ち込んだ。その後、パンデミックが長期化する中で貿易量は徐々に回復し、業界は新たな課題と向き合うことになった。
新型コロナが海運業界に与えた影響
パンデミック初期、世界各国で人の移動が制限され、世界経済が停滞したことで生産や消費が減少し、貿易量が大幅に縮小した。港湾では検疫措置や労働者不足の影響で船舶の入出港が遅れ、貨物の積み下ろしにも支障が生じた。その結果、港湾の混雑や輸送遅延が業界全体に波及した。その後、いわゆる「巣ごもり需要」の増加や北米西岸をはじめとする主要港での滞船が影響し、世界的に海上コンテナ輸送の需給がひっ迫。輸送遅延や輸送スペースの不足といった問題が発生した。
クルーズ業界も大きな打撃を受けた。クルーズ船内で感染者が発生する事例が相次ぎ、多くの国が入港を拒否。国内でも横浜や長崎に停泊したクルーズ船での感染拡大が大きな話題となった。その影響でクルーズ会社は運航を停止し、業界全体で数十億ドル規模の損失を計上。外航旅客船の定期航路事業では、日韓航路の旅客輸送が1年以上休止され、邦船社のクルーズ事業も緊急事態宣言の発出時には運航を中止。国際クルーズに至っては、事業者が運休に追い込まれた。
船員交代の問題も深刻化した。パンデミックによる国際的な移動制限で多くの船員が乗り換えできず、下船も本国への帰還もできない状況に陥った。ピーク時には約40万人の船員が契約期間を大幅に超えて勤務。この問題は労働環境を悪化させ、船員のメンタルヘルスや安全にも大きな影響を及ぼした。
コンテナ不足と運賃高騰も深刻な問題となった。世界のコンテナ生産の98%を担う中国では、米中貿易摩擦に加え、パンデミックの影響で生産量が落ち込んだ。しかし、中国は他国に先駆けて経済活動を再開し、それにともない輸送量が増加。さらに、北米や欧州では「巣ごもり需要」の拡大により輸送量が急増したことで、世界的なコンテナ不足が発生した。港湾では荷役作業員の不足も影響し、入港後の作業が遅延。コンテナが積み下ろし先で滞留し、世界的な供給不足がさらに深刻化した。その結果、輸送コストが急上昇し、コンテナ運賃は過去最高水準に達した。
造船業界も厳しい状況に追い込まれた。船の建造には長い工期が必要なため、造船所では通常2年程度の手持ち工事量を確保している。しかし、海外展示会の中止などで新規商談が滞り、手持ち工事量は1年程度まで落ち込んだ。操業を維持するため、赤字案件であっても受注せざるを得ない状況に追い込まれた。
現状と回復への取り組み
国際貿易は、2020年に新型コロナウイルスのパンデミックによる影響で停滞した。しかし、2021年には経済や社会活動の制限が緩和され、パンデミックやロックダウンの反動もあり、貿易額は前年比26.2%増の21兆7500億ドルを超え、過去最高を記録した。2022年にはロシアのウクライナ侵攻も影響し、さらに貿易額が上昇。2023年にはインフレと高金利の影響で一時的に前年比マイナスとなったものの、依然として20兆ドルを超える高水準を維持した。
2024年はその反動で再び世界貿易が回復すると見込まれる。貿易額の上昇は顕著だが、貿易量の伸び率は低く、エネルギーや食料価格の高騰が全体の貿易額を押し上げた要因と考えられる。世界情勢の影響を受けやすい業界ではあるが、価格高騰の要因として最も大きかったのは、新型コロナウイルスのパンデミックによる影響だろう。
新型コロナウイルスのパンデミックを契機に、海運業界ではデジタル化や自動化の導入が進んだ。インフラや物流分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として、検疫を集約する可能性のある港湾にライブカメラを設置し、リモートかつリアルタイムで船舶周辺の情報を収集できるようになった。これにより、関係者の感染リスクを軽減する取り組みが加速している。
クルーズ船業界は、新型コロナウイルスの蔓延によって深刻な打撃を受けたが、欧州ではいち早く国際クルーズが再開し、日本でも2023年3月から本格的な運航が始まった。郵船クルーズはクルーズ市場の回復を見越し、2021年に新たな客船の造船契約を締結。2025年夏に就航予定の「飛鳥III」は、日本初のLNG燃料クルーズ船として2025年1月18日に進水した。商船三井クルーズも2023年に新たな客船を購入し、2024年12月に就航。さらに、2022年には2隻の新造船建造を決定するなど、業界には明るいニュースが続いている。
ポストコロナの新戦略
新型コロナウイルス感染症は海運業界に深刻な影響を与えたが、同時に業界が抱える課題を浮き彫りにし、変革の必要性を再認識させる契機となった。
持続可能な物流システムの構築や労働環境の改善が求められる中、海運業界がどのように対応していくかが、今後の国際貿易の行方を左右する。
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