2014年11月に逝去した自動車評論家、徳大寺有恒。ベストカーが今あるのも氏の活躍があってこそだが、ここでは2014年の本誌企画「俺と疾れ!!」をご紹介する。(本稿は『ベストカー』2014年4月10日号に掲載したものを再編集したものです/著作権上の観点から質問いただいた方の文面は非掲載とし、それに合わせて適宜修正しています)。
■アメリカの全盛時代
大きすぎるしいろいろ「雑」で……アメリカ車が日本で売れない理由
ハドソンイタリア…ハドソンがイタリアのカロッツェリア、トゥーリングとともに作ったモデル。駆動系とプラットフォームはハドソンジェットと共通だが、ボディは完全な別物だ。ハンドメイドで作られ、生産台数はわずかに26台でデトロイトでの価格は4800ドルとキャデラックよりも800ドルも高かった
アメリカが自動車全盛時代だったのは1950年代から1960年代だろう。この時代、全米の自動車工業はデトロイト中心で、GM、フォード、クライスラーのビッグスリーとアメリカンモーターズをはじめ、多くのブランドが共存していた。
現在ではなくなってしまったハドソンやパッカード、ナッシュ、スチュードベーカーという古いメーカーも存在していた。
ハドソンは我が家から遠くない田園調布に1台あって、東急線の踏切を通る時に何回かみかけたことがある。
通称「ステップダウン」と呼ばれたハドソンは、もともとデトロイトでハドソンデパートを創業したジョゼフ・ハドソンが興したものだ。
映画『カーズ』にも出てくるハドソンホーネットならご存じだろう。ハドソンはロングノーズスタイルが特徴で1950年代はその巨大なボディがある種の人気を得た。
ハドソンがイタリアのカロッツェリア、トゥーリングに作らせた「イタリア」はまさしくイタリアンボディのスペシャルカーで、ハドソンではあるが、なんともヨーロッパ車らしい風情のあるクルマだった。
スチュードベーカーはアメリカの自動車工業の草分け的な存在であり、1950年代は著名な工業デザイナー、ブルックス・スティーブンスの手による流麗なボディスタイルが特徴だった。
ナッシュも古いメーカーだが、このナッシュは政治家でもあった新しい経営者ジョージ・ロムニーを迎え、大胆な車種整理をやってのけた。GM、フォード、クライスラーのビッグスリーに対抗するには小型車しかないと考えたのだ。
これがAMC(アメリカンモーターズコーポレーション)の出発になる。AMCのクルマは、アメリカ初のサブコンパクトカー(小型車)メトロポリタンをはじめ、シンプルで扱いやすそうなサイズであったが、これもGMやフォードのV8攻勢の前に敗れざるを得なかった。
1950年代はアメリカの自動車工業の全盛というべき時代だが、前記の通り、ナッシュやパッカード、スチュードベーカーといった個性的なメーカーが存在した時代だった。
いっぽう、フォードはリンカーンがあり、マーキュリーがあった。GMはシヴォレー、ポンテアック、オールズモビル、ビュイック、キャデラック、GMCときら星のごとくブランドを持っていた。
1960年代で忘れてならないのは、フォードの展開した世界作戦だろう。当時フォードはデトロイトが本部で、その子会社のひとつがヨーロッパフォードだった。もともとフォードは戦前からイギリスやドイツで現地生産が行われていたが、1967年ヨーロッパフォードが設立されるまでイギリス、フランス、ドイツと各国に分かれていた。
1962年イギリスフォードが作ったコルチナが売れ、このコルチナをベースにしたロータスコルチナが作られ、モータースポーツの世界を席巻する。(次回に続く)
ロータスコルチナ…1963年何でもないセダンのコルチナにロータス製の最高出力106psを発生する4気筒1558ccDOHCエンジンを搭載したのがロータスコルチナ。ツーリングカーレースのほか、モンテカルロラリーなどでも活躍した
■小排気量エンジンの高級車は成立しないのか?
(「高級車というものはやはりエンジンが大事な気がする」という読者の方からの、日本車の場合、やはり4気筒・2Lエンジンでは高級車として成立しないのでしょうか? という質問に答えて)
* * *
自動車のエンジン、日本語では発動機といいますが、このエンジンというものは、気筒数が多ければ多いほど高級だと思われます。気筒数が多いとエンジンがスムーズに回転するからです。
もちろん、3発より4発、4発よりも6発のほうがスムーズに回るので高級なのです。ただし、これはガソリンエンジンにかぎります。ディーゼルエンジンでは違う要素が入ってきます。
一般論としては直4よりもV6ユニットのほうが高級なのは常識と言えるものです。
しかし、最近エンジンの技術が新しくなり、世界の流れはスムーズな4気筒へと変わりつつあります。
多くのメーカーがシンプルな方向へと向かっていくなかで、トヨタ、日産はどうするのでしょう? おそらく彼らも3気筒、4気筒で静かでスムーズなエンジンを作ろうと合理的にやっているところでしょう。
反対にスズキのように、V6のマルチユニットを持つクルマを安く作れるところが現れ、今後大きな存在になるかもしれません。
■リフトバック復活を!
カローラリフトバックは3代目カローラから追加されたハッチバックモデル。4代目のリフトバック1600GTは2T-GEU、1.6LDOHCエンジンを975kgのボディに搭載したスポーツモデルだった。カローラリフトバックというネーミングは5代目カローラで終了する
(最初に購入したクルマは4代目カローラのリフトバック・1600GTだったというリフトバック好きの読者の方からの、最近はリフトバックという言葉が死語になってしまい残念だ、どこかのメーカーがまたチャレンジしてくれないだろうか、という声に)
* * *
もともと「リフトバック」という言葉は一般的ではありませんが、トヨタが作った言葉だと思います。LBというふうに表記されたりしますが、ハッチバックというのが普通でしょう。
さて、私ならば5ドアハッチバックよりも、ワゴンを選ぶでしょう。荷物の積みおろしといった機能を含めてワゴンのほうが、便利だからです。ワゴンも乗用車ベースのもので、現行のラインアップからは外れてしまいましたが、昨年まで販売されていたアコードツアラーなどはいいクルマだと思いました。
日本では家族のかたちも変わって来ています。クルマというものはその家族のカタチに合わせて発展し、新しくなるものです。
■Aピラーが寝過ぎじゃないか
(最近のクルマは空力を重視するあまりAピラーが寝過ぎている=視界が悪くなり、運転がしにくくなっているのではないでしょうか? という読者の方からの疑問に答えて)
* * *
Aピラーはクルマのルームスペースを決定します。Aピラーを寝かせると外から見た時のルックスがよくなるかもしれませんが、室内のスペースを犠牲にしてしまいます。
ウィンドウ面積が小さいとクルマを軽くする効果がありますが、私は視界は大切だと思っています。私は最近のクルマで視界がよくなく、見づらいと思ったことはありませんが、シートをしっかりと上げてポジションを取ることで、視界は変わってきます。
確かに安全は最も大切ですが、安全過ぎても……ということもあるのです。こいつは程度の問題でしょう。
Aピラーが寝ていると、室内は狭くなるし、グラススペースが大きいとクルマが重くなるというふうに、クルマというものは、簡単にできないところが面白いのでしょう。
ベーシックな安全は国のほうでキチンと取られています。第一「クルマはどこまで安全ならいいのだ?」という議論は時々やらないといけません。
■サターンに乗っていた
サターンSC2クーペ…サターンは1997年に日本進出。「礼をつくす会社、礼をつくすクルマ」というキャッチコピーが印象的だった。エンジンは1.9Lの4気筒で124psを発生。ベースグレードの5MTは172万円と安かった。
(2000年頃に初期型のサターンSC2クーペに乗っていたという読者の方からの、そのサターンも日本から撤退してしまった、現在のアメリカ車はSUVやコンパクトカーばかり。アメリカ車が本格的に日本で売れるようになることは難しいのでしょうか? という質問に)
* * *
クルマを販売するということはたいへんな時間と人がいるんです。そして、日本でクルマを売ろうとしたら相当なお金がかかります。人材も必要です。ですからそう簡単にはいかないんです。一台のクルマを売るということは想像するよりずっと大きなエネルギーが必要なのです。
確かに、アメリカ車の小型セダンはありません。やはり日本でアメリカ車はあまり人気がないので、日本車と競合する小型セダンを販売することは難しいでしょう。
ただし、シヴォレーカマロやフォードマスタングといったアメリカンスポーツは今でも手に入りますね。これは日本車にはない魅力があると思います。
1999年マイナーチェンジモデルが導入され、126psにパワーアップするとともに、左側のみ観音開きとなる個性的な3ドアとなった。2001年に販売終了
■徳大寺有恒の「俺と疾れ!」リバイバル特集
投稿 最近のクルマはAピラーを寝かせ過ぎ? 小排気量エンジンの高級車は成立しないのか? 懐かしきアメ車全盛の時代【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。
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