歴代の国産スポーツカーはヘッドライトの個性もハンパない
クルマのフロントデザインで重要なのが、ヘッドランプの形状です。
【画像】80年代に大流行! 眠たげな顔の国産スポーツカーを写真で見る(34枚)
1960年代、国産車黎明期のヘッドライトは、丸形2灯式か4灯式に規格が限定され、70年代にそれぞれ角形が登場しました。
そして、80年代には「格納式前照灯」が流行します。多くの場合「リトラクタブル式」と呼ばれるタイプでしたが、今回は異形格納式ヘッドライトで個性を主張した3台を紹介します。
●初代ホンダ「バラードスポーツCR-X」
1983年7月に風変わりなコンパクトスポーツがホンダからデビューしました。「バラードスポーツCR-X」です。
ベースとなったのは同年9月に登場する3代目シビックで、そのフルモデルチェンジに先駆けて世に送り出されたモデルです。
つまり、シビックのスポーツクーペなのですが、バラードの名が冠されたのは、当時好調とはいえなかった「バラード」そのもののイメージアップと、ホンダ第3のチャネル、ベルノ店へのテコ入れが目的だったようです。
その小さく引き締まったボディは、事実上2シーターと割り切ったもので、リアゲートを持ち、テールエンドを断ち切った形状の「ファストバック」ボディは、全長3675mm×全幅1625mm×全高1290mm、ホイールベース2200mm。車両重量も760kgから800kgに収まっていました。
デビューモデルで特徴的だったヘッドライトは、半目の開いたセミリトラクタブルタイプで、独特の表情で個性を主張していました。
搭載エンジンは気筒あたり3バルブのクロスフローヘッドを持ったCVCCの1.3リッターと1.5リッターで、1.5リッター版には電子制御燃料噴射PGM-FIが採用され、110馬力/13.8kgm(グロス)のパワー&トルクを発生。軽い車重の恩恵もあって、極めて軽快な運動性能を得ていました。
84年11月には、130馬力/15.5kgm(グロス)を発生する新開発の1.6リッターDOHC16バルブエンジンの「ZC型」を搭載した「Si」が追加され、パワフルなエンジンと軽快なハンドリングのFFスポーツとして、CR-Xの評価を決定づけることとなります。
ポップアップ式「ライズアップライト」を採用した3代目セリカ
●3代目トヨタ「セリカ」
異形(変形)格納式ヘッドランプを採用して独特の表情を持って個性を放っていたのは、1981年7月にフルモデルチェンジして3代目に生まれ変わった「セリカ」ではないでしょうか。
2代目から一転して直線基調の鋭いウェッジシェイプのボディは、国内向けに2ドア・ノッチバックと2ドア・リフトバックの2タイプを用意。
スラントノーズが特徴的なフロントマスクには、ランボルギーニ「ミウラ」やポルシェ「928」などにも採用された、日本車として初となる、点灯時にライトが前方に起き上がるタイプのポップアップ式ヘッドランプ「ライズアップライト」を採用しました。
ボディサイズは先代からわずかながら拡大され、全長4435mm×全幅1665mm×全高1310mm、ホイールベースは2500mmでした。
エンジンはすべて直列4気筒で、排気量は1.6リッター/1.8リッター/2リッターのバリエーションがあり、1.8リッター以外にはDOHCも設定。さらに1982年には、160馬力/21.0kgm(グロス)を発揮する、日本車初の「DOHCターボ」3T-GTEU型エンジンを搭載した「GT-T系」が追加されました。
1983年の改良では、個性的だったヘッドライトがごく普通のリトラクタブル式になり、ドラミラーが認可され、標準装備となりました。さらに1985年には前輪駆動(FF)となった4代目セリカにバトンタッチしたのです。
最後のFR車となった3代目「セリカ」ですが、同時に登場したセリカXXの影に隠れた存在となり、販売は芳しくなったものの、グループBのホモロゲーション用として「GT-TS」を200台販売。サファリラリーを3連覇するなど、モータースポーツで活躍しました。
●3代目日産「フェアレディZ」
国産スポーツカーのパイオニアともいえるS30型初代「フェアレディZ」のデビューは、1969年11月。まさに70年代のスポーツカーとしてデビューしました。
そして9年間で54万台を世界に送り出す大成功を収め、1978年に2代目にバトンを渡します。そして83年9月、ロングノーズ・ショートデッキというZ伝統のスタイリングを受け継ぎながら、空力特性を見直し、シェイプアップを果たした3代目Z31型が登場します。
3代目の開発にあたって、日産は第一級の欧州製スポーツカーに見劣りしないパフォーマンスを発揮するクルマの開発に力を注いだといわれます。
この3代目フェアレディZのエクステリアの特徴が、ヘッドライトです。通常の後軸回転式リトラクタブルランプではなく、ライトユニット自体が上下に垂直移動する構造で、消灯時にもレンズの一部が露出する「パラレルライズアップヘッドランプ」を採用したのです。
Zのスタイリング上の大きな特徴であるボディ前端を削った位置にヘッドランプを装備するための処理でしたが、格納時でもパッシングライトが使えるという実用上の意味合いもあったのです。
エンジンは伝統のL型を捨て、最新のV型6気筒を搭載します。
2リッターのVG20ET型、3リッターのVG30ET型ともに型式が示すとおりV6ターボエンジンでした。後に再び直列6気筒エンジン「RB20DET」搭載モデルが設定されますが、これもターボエンジンで、Z31型はターボ車という立ち位置を堅持しました。
なかでも「300ZX」搭載のVG30ET型V6エンジンは230馬力/34.0kgm(グロス)を発揮し、国産トップクラスのパワー&トルクを誇ったユニットでした。
※ ※ ※
紹介した3台は、異形格納式前照灯を採用した個性派スポーツカーですが、皮肉なことにモデルライフの途中でマイナーチェンジを実施し、ヘッドライトが普通の異形2灯式、あるいは普通のリトラクタブル式に変更されてしまいました。
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みんなのコメント
ここで言う「眠た目」は、デザインも夜の光量もどちらも大事って事。実際にポップアップしないと暗いし。その車に共通しているのは「他車と一緒じゃつまらない」
統一感なさすぎ。