■2ストロークのスポーツモデルが上位を独占!
ここ数年、コストパフォーマンスの良さから人気が高まっている原付二種モデル。国内市場の拡大に加え、世界市場を見据えた各メーカーの戦略もあって、シティコミューターとしてだけでなく、ツーリングやレジャーの相棒にもふさわしい魅力的なモデルが続々とラインナップされています。
ホンダ「NSR50」は当時の若者を狂わせた 峠や駐車場、ミニサーキットからキツイコーナーの全てが青春だった!!
とかく気軽さや使い勝手に目がいきがちな原付二種ですが、バイクの大きな魅力はなんといってもその加速力!
そこで今回は、とりわけ加速力と関係が深いパワーウェイトレシオ(重量/出力比)に着目し、歴代の原付二種モデルを徹底比較。ランキング形式にして、まとめてみました。
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調査対象は現行モデルをはじめ、1960年から1970年代に発売された過去モデルの中古車や、メーカーや大手バイク販売チェーンによって輸入された海外向けモデルの一部を含む、2022年5月現在、国内市場に流通する国内4メーカーのおよそ300車種。
2008年以前まではカタログ表記で主流となっていた乾燥重量で比較し、それ以降の国内メーカーが乾燥重量を公表しなくなったモデルについては独自の計算式(※)を用いて乾燥重量を想定し、参考値として比較しました。また、複数年にわたって生産されたモデルは、最新(終)型のデータを採用しています。
※タンク容量1L:0.75kg、エンジンオイル容量1L:0.9kgで計算。また、メーカーごと・車両タイプごとに独自の係数を設定し、エンジン及びオイル以外の重量を計算。エンジン及びオイル重量と合計し、車両(装備)重量から減算しています。
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予想通りランキングの上位は、シンプルで軽量に作れる2ストロークエンジンのスポーツモデルが独占。数値も4kg/ps台の半ばから、5kg/ps台前半をマークしています。
現行のスポーツモデル、ホンダ「CB125R」、スズキ「GSX-125S」が参考データで7kg/ps台なので、韋駄天ぶりがうかがえます。
14位と惜しくもトップ10には入らなかったものの、スクーターでトップのヤマハ「CZ125 トレーシィ」が記録した5.75kg/psは特筆するべきしょう。
逆にホンダ「NSR80」が6.58kg/psで18位など、イメージとは裏腹に意外に数字が伸びなかったバイクも存在しました。
なお、イタリアから輸入されていたベルガルダ ヤマハの初代「TDR125R」及び「TDR125」が3.67kg/ps及び3.79kg/ps、ホンダ イタリア インダストリアーレ「NSR125F」及び「NSR125F 雷電」の海外仕様が3.97kg/ps及び4.00kg/psという好数値をたたき出しましたが、年式や国による仕様のバラつきが大きいため、今回のランキングでは残念ながら番外としました。
■トップ10を遂に発表!
それでは、トップ10をランキング順に見ていきましょう。
●同率1位:パワーウェイトレシオ 4.36kg/ps
・ホンダ「MBX125F」(1983年)
水冷2ストローク124cc単気筒、最高出力:22ps/9000rpm、最大トルク:1.8kgf-m/8500rpm、乾燥重量:96kg、車両重量:109kg
・スズキ「RA125」(1984年から1990年)
水冷2ストローク124cc単気筒、最高出力:22ps/7500rpm、最大トルク:2.1kgf-m/7000rpm、乾燥重量:96kg、車両重量:110kg
ホンダMBX125FとスズキRA125の2台が4.36kg/psで、同率1位に輝きました。
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1983年に発売されたオンロードスポーツ MBX125Fは、軽量な車体に最高出力22psの124cc水冷2ストローク単気筒エンジンを搭載。自動的にトルクを調整する、ホンダが独自に開発した排気機構、ATAC(Auto controlled Torque Amplification Chamber)が装備され、中低速域での扱いやすさも意識されていました。 フロントタイヤには、コーナーでの旋回性向上に効果があるとされた16インチが採用(リアは18インチ)されています。
さらに、リンクを設けることによって高荷重、低荷重それぞれに適した特性を発揮。モノショックユニットを車体中央にレイアウトすることでマスの集中化に寄与するプロリンク式リアサスペンションを備え、1980年代半ばのホンダ車が多く採用していた前後ブーメラン型コムスターホイールも、特徴のひとつでした。 残念ながら発売当時、タイヤの選択肢が少なかったフロントの16インチが災いし、販売台数やレースへのエントリー台数ではフロント18インチ(1982年型から1984年型)を採用するRZ125に水をあけられましたが、パワーウェイトレシオは上回っています。
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RA125は、モトクロス世界選手権125ccクラスで9年連続タイトルを獲得したファクトリーマシン「RA」のレプリカともいえるオフロードマシン。
水冷パワーリードバルブを採用した新設計のパワーユニットは最高出力22psを発生させ、高張力鋼管を使用したセミダブルクレードル型フレームは、軽さと高剛性を両立していました。
角型のアルミ製スイングアームやフロントの油圧式ディスクブレーキ、偏平タイヤなど、当時の先進技術が採用され、高いパフォーマンスを誇った1台です。
●第2位:パワーウェイトレシオ 4.45kg/ps
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・ヤマハ「RZ125」(1982年から1986年)
水冷2ストローク123cc単気筒、最高出力:22ps/9500rpm、最大トルク:1.7kgf-m/9000rpm、乾燥重量:98kg、車両重量:111kg
1980年代前半から中盤にかけ、市販車をベースにした125ccクラスのレースにおいて、「RZのワンメイク」と称されるほどダントツのシェアを占めていたRZ125が、4.45kg/psで惜しくも第2位。
YEIS(YAMAHA Energy Induction System)及び電子進角式CDI点火を採用した水冷2サイクルピストンリードバルブ式エンジンは、リッター当たりで換算すると、160馬力以上という高出力を発揮。1982年に登場した際のプレスリリースでは“クラス最高のパワーウェイトレシオ”が高らかに謳われていました。
しかし、初期の「13W」型が20psで乾燥97kg、1983年から1984年に販売された2馬力アップの「33X」型が22psで乾燥98kg、最終仕様の「1GV」型も22psで乾燥98kgと、歴代モデルを通じ、サーキットや峠で覇を競った後発のライバルたちに及びませんでした。
なお、1GV型はWGPマシン「YZR500」譲りの排気タイミング制御デバイス、YPVS(YAMAHA Power Valve System)が採用され、全域において出力特性が向上。ハンドリングのヤマハを具現化する軽快なコーナリング性能も好評でした。
●第3位:パワーウェイトレシオ 4.55kg/ps
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・スズキ「RG125Γ」(1985年から1990年)
水冷2ストローク123cc単気筒、最高出力:22ps/8500rpm、最大トルク:1.9kgf-m/8000rpm、乾燥重量:100kg、車両重量:113kg
第3位は初代RG125Γ。排気効率を向上させるSAEC(Suzuki Automatic Exhaust Control)を装備した水冷2ストローク単気筒エンジンは、最高出力22psを発生し、クラス初の偏平チューブレスタイヤが標準で装備されていました。デビューした1985年型なら乾燥重量95kg、4.32kg/psでトップに立てただけに、翌年の年次改良での5kg増が悔やまれます。 1985年のスズキは、他にも乾燥重量179kgのGSX-R750、同じく156kgのRG500Γなど、他メーカー、ユーザーを驚愕させる軽量&ハイパワーのマシンをリリースしており、この年はスズキにとってまさしくヴィンテージイヤーだったといえるでしょう。
ちなみに1991年に登場した2代目は、倒立式フロントフォークや大径ディスクブレーキを前後輪に採用するなど、フレーム、足まわりを一新し、総合的なパフォーマンスは向上しましたが、乾燥で23kgの大幅な増量となっています。
●第4位:パワーウェイトレシオ 4.59kg/ps
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・カワサキ「KMX125」(1986年から1989年)
水冷2ストローク124cc単気筒、最高出力:22ps/9000rpm、最大トルク:1.7kgf-m/8500rpm、乾燥重量:101kg、車両重量:117kg
モトクロスレーサー「KX」の流れをくむカワサキのオフロードマシン、KMX125が第4位。
最高出力22psを発揮する水冷2ストローク124cc単気筒エンジンは、KIPS(Kawasaki Integrated Powervalve System)を採用することで中低速域でのトルク不足をカバー。
当時クラス初だった前後ディスクブレーキや、カワサキ独自のユニトラック式サスペンションをリアに装備するなど、時代をリードする革新的な設計でした。
マイナーチェンジ前の乾燥96kgなら同率で首位でしたが、ディスクカバーやハンドガードなどが追加され、5kgの重量増となったのが今回の比較では仇となったようです。
●第5位:パワーウェイトレシオ 4.73kg/ps
・カワサキ「KDX125SR」(1990年から1999年)
水冷2ストローク124cc単気筒、高出力:22ps/9500rpm、最大トルク:1.9kgf-m/8000rpm、乾燥重量:104kg、車両重量:117kg
41mm径の倒立式フロントフォークや角断面パイプのペリメターフレームを採用するなどの大きな進化を遂げ、KMX125の後継モデルとして1990年にデビューしたKDX125SRが続く第5位。
最高出力は22psとKMX125と変わりませんでしたが、ピストンリードバルブからクランクケースリードバルブに設計を変更。KIPSの熟成に加え、DCIS(Digital Controlled Ignition System)を装備することで、パワー特性が向上しています。 モトクロスレーサーに保安部品を追加しただけといえるような本格派で、KXのパーツが流用可能だったこともあり、モトクロスやエンデューロの125cc市販車クラスでの出走台数は、他車を圧倒しました。
●第6位:パワーウェイトレシオ 4.77kg/ps
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・ヤマハ「TZR125」(1987年から1999年)
水冷2ストローク124cc単気筒、最高出力:22ps/10000rpm、最大トルク:1.7kgf-m/8500rpm、乾燥重量:105kg、車両重量:121kg
●第7位:パワーウェイトレシオ 4.86kg/ps
・カワサキ「AR125」(1983年から1990年)
水冷2ストローク123cc単気筒、最高出力:22ps/9500rpm、最大トルク:1.7kgf-m/9000rpm、乾燥重量:107kg、車両重量:120kg
●第8位:パワーウェイトレシオ 5.00kg/ps
・ヤマハ「DT125R」(1991年から1999年)
水冷2ストローク124cc単気筒 最高出力:22ps/9,000rpm 最大トルク:1.9kgf-m/7,500rpm 乾燥重量:110kg 車両重量:123kg
●第9位:パワーウェイトレシオ 5.05kg/ps
・スズキ「TS125R」(1989年から1999年)
水冷2ストローク124cc単気筒、最高出力:22ps/9500rpm、最大トルク:1.9kgf-m/7500rpm、乾燥重量:111kg、車両重量:124kg
●第10位:パワーウェイトレシオ 5.23kg/ps
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・スズキ「WOLF125」(1991年から1998年)
水冷2ストローク124cc単気筒、最高出力:22ps/10000rpm、最大トルク:1.7kgf-m/9000rpm、乾燥重量:115kg、車両重量:132kg
※ ※ ※
排出ガス規制によって、軽量で高出力のマシンを作りやすい2ストロークエンジンがほぼ絶滅。規制をクリアするために、マフラーの構造が複雑化されて重くなり、小排気量でもABS(Anti-lock braking system)が徐々に標準化されるなど、今後これらのモデルを上回るデータのバイクが出てくる可能性はかなり低くなっています。
そんな今こそ、いにしえの原付二種に思いを馳せてみるのも一興でしょう。
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